2013年1月30日水曜日
【 軍国日本の系譜 : 古い火種に再び火をつける日本の首相 】シュピーゲル紙(ドイツ)1月17日.
http://kobajun.chips.jp/?p=8287
*独特の価値観による、日本統治を目指す.*
日本の元、そして現在の首相である安倍晋三は、日本をかつての偉大な国へと立ち直らせる決意です。
しかし日本経済の再生以上に彼の心を占めているのは、隣国に対してより強硬な態度で臨もうという決意です。
新たに選出された首相はその就任の前に、日本の南西部、山口県にある先祖の墓に参りました。
彼は線香に火をつけ、胸の前で両手を合わせました。
そして彼は周囲に居た支持者に対し、先祖に何を約束したのかについて語りました。
「今回私は、すべてをやり遂げる覚悟です。」
昨年12月の末に行った厳粛な誓いの中で、かつて首相だった時に果たそうとして惨めな失敗に終わったひとつの取り組みについて、今回再び行うかどうか明言しませんでした。
そう、初めて首相に就任した2007年9月、かれは健康を損なったことを理由に辞任しました。
しかし58歳になったこの政治家は辞任後、彼の政治的基盤である父親、そして祖父の遺志をしっかりと受け継いでいたのです。
2012年12月16日、安倍首相は自らが総裁を務める日本の保守勢力、自由民主党が衆議院で過半数を取る戦いに勝利しました。
自民党は3年前に政権の座を追われたばかりでした。
そして今、安倍首相は高齢化が進み、政治経済面においても不安定なかつての経済大国を建て直そうとしています。
とりわけ彼が強く願うもの、それは彼が最も嫌う『戦後体制』に終止符を打つことです。
この問題に触れるとき、安倍首相は日本が第二次世界大戦に敗北した後、すべてはアメリカによって押し付けられたものだという言い方をします。
彼が嫌悪するもの、それは平和憲法、戦後の民主的教育、そして安倍首相の理解とはまったく無縁の歴史認識です。
1948年の戦争犯罪を裁く東京裁判の際に、判決分にも明記された安倍氏が嫌う歴史に対する解釈は、戦前の日本とドイツを二度と出現させるべきではない侵略者と表現しています。
今や日本を代表する立場の彼は、日本を『かつての美しい国』へ押し戻そうとしています。この表現は彼がこの国の将来の展望について述べた著作の中でも使われています。
安倍首相は彼自身が尊敬する祖父岸信介(1896-1987)が実際にそれを行い、父親である阿部慎太郎外務相(1924-1991)もその復活を望んだ、独特の価値観による日本の統治を目指しています。
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岸信介は、ヒトラー政権におけるアルベルト・シュペーア(軍需大臣)そのものでした。
彼は1930年代に中国から奪った満州の占領政策を積極的に推し進め、第二次世界大戦中は連合国に対して日本の軍事力の整備を行いました。
1945年に日本の降伏後戦争犯罪人として逮捕されましたが、早くも1957年には首相として政治の表舞台に戻ってきました。
そして中国との国交修復への取り組みを徹底的に押さえつけました。
折から反共ムードが高まっていたアメリカの反共産主義運動の協力者として名を売り、日本における政治的地歩を固めて行ったのです。
▽ 敵だけでなく、味方も困惑するその強硬姿勢
安倍首相の誕生により、日本の過去の系譜が再びよみがえろうとしています。
靖国神社は第二次世界大戦で犠牲となった日本軍人だけでなく、主な戦争犯罪人とされた人間も同じく神として祀られていますが、安倍政権の閣僚は19名中14名までが、参拝の遺志を明らかにしています。
「日本の多くの人々が、日本が戦争犯罪を犯したとは考えていません。戦犯とされた人々についても、戦争の犠牲者だと考えています。」
島村健一氏がこう語りました。
この社会学者は特に広島に原爆が投下されて以降、日本人は自らが戦争犯罪を犯したと考えるより、戦争中の苦しい時代を耐え抜いた民族であると考えるようになったのだと語りました。
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新首相はかつて日本が占領国に対して行った、謝罪の取り消しにすら踏みこもうとしています。
1993年、少なくとも200,000人のアジア人女性を従軍慰安婦として働かせるために誘拐したことを、日本政府は公式に謝罪しました。
これに対し安倍首相は、日本軍が本当に従軍慰安婦に売春行為を強制したのかどうか疑いを持っていることを、公式の場で明らかにしています。
韓国や中国だけではなく近隣諸国の多くが、新首相が日本の歴史認識に修正を加えようとしていることを、疑いの目で見ています。
そして日本の最大の同盟国であり、日米安保条約に基づきともに日本を守る立場にあるアメリカは、安倍内閣の大日本帝国的素養を持った閣僚たちが、東アジア地区における緊張状態を悪化させることを恐れています。
昨年の秋に発生した東シナ海の尖閣諸島の領有権にまつわる紛争により、すでに状況は緊張しきっています。
1月8日火曜日には、4隻の中国艦艇が13時間の間、日本の主権領海内を航行したことについて中国政府に抗議するよう、中国大使に命じました。
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この海域ではほぼ毎日、中国の巡視艇と日本の海上保安庁の警備艇が、危険な操船や示威行動を行っています。
昨年12月には、中国の偵察機が日本の領空を侵犯する事件が起きました。
こうした挑発の繰り返しにより、中国当局は日本人に警戒感を抱かせてしまいました。
安倍首相に対する日本国民の最大の期待は、病んでいる日本の経済を健全なものに出来るのではないかというものです。
しかし一方では、2010年に日本を抜いて世界第2の経済大国となった中国を恐れる気持ちは日本国民も共有しており、日本の有権者は国家主義者であるこの政治家に2度目のチャンスを与えることに決めました。
現在安倍首相は、国防費の大幅な増額を実現しようとしています。
昨年11月に中国が航空ショーで8機の無人航空機の一般公開を行ったのを受け、直ちに安倍首相はアメリカからの無人偵察機の購入の検討に入りました。
一方、安倍首相は現実に対応するための柔軟さも持っています。
数日前、安倍首相は韓国の新大統領のもとに、尖閣諸島とは別に領土問題が存在する竹島問題をこれ以上こじらせるつもりが無いことを伝えるために、特使を派遣しました。
韓国が実効支配する独島諸島の日本側の呼称が竹島です。
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衆議院議員選挙期間中、自民党は「竹島の日」を制定する計画を発表し、日韓関係を緊張させました。
しかしここしばらくの間は、安倍首相はより危険なライバルである中国との対決のため、手一杯の状況が続くことになるでしょう。
http://www.spiegel.de/international/world/new-nationalist-government-of-japan-stokes-tensions-with-china-a-877691.html#ref=rss
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第二次大戦後の日本とドイツの違いは何でしょうか?
ドイツはニュルンベルグ裁判の後、ドイツ人自身の手でナチス・ドイツにまつわる事歴を徹底解明しました。
ナチスは非合法化され、そして今、長年の宿敵であったフランスと完全な国交修復を果たし、互いの文化を尊重しつつともにEUの中核として重責を担っています。
これに比し日本は、ドイツと比べその点が不充分だったと思います。
今日各国との間で『歴史認識』について問題となっている事件も、当時証言できる人々が多数生存している段階で、現在のASEAN諸国の研究者を交えることにより中立性を確保した上で、客観的立場で詳細な検証を行うべきだったと思います。
当時現場に居て「事実について」証言できる人の生存が限られてしまった今では、互いの水掛け論を決着させられるはずがありません。
その『水掛け論』に国を代表すべき立場の政治家が、自ら勇んで加わるのではなく、全部は無理でも大多数が納得できる客観的史実を明らかにするために、何とか公平な立場での研究事業を立ち上げよう、その方の努力をしていただきたいものです。
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