2013年2月19日火曜日
米国が日中戦争に参戦しない4つの理由.兵頭正俊.
http://m-hyodo.com/usa/#more-368
投稿日:2013年2月18日
2月12日に北朝鮮が地下核実験を行った。
他方、尖閣では一触即発の偶発戦争の危機が続いている。
東アジアに世界の注目が集まっている。
そこでわたしたちは判断を誤らないために、ここで再確認をしておきたい。
かりに日中が戦端を開いても米国は参戦しないということだ。
このことをわたしたちは、今後の判断を誤らないために、明確に認識しておくべきだ。
米国は、我が国の尖閣への実効支配は認めている。しかし領有権は認めていないのである。
日本が尖閣を実効支配しているゆえに、米国は安保条約によって条約上の義務を守る、といっているにすぎない。
しかし日本の領有権は認めていないので、日中が開戦したときに、米国は日中のいずれかを支援する特定の立場をとらない。
このことは、中国側も明確に掴んでいるようだ。
2012年9月14日の『産経ニュース』が、「人民解放軍将校10人 「第3段階」突入も辞さず」と題して、次のように述べている。
「中国軍縮協会理事の徐光裕少将は「日本は軍事衝突が起これば米国が助けてくれると思っているが、それは願いにすぎない」と一蹴。「米国の日本を守る意欲は低い。米国も中国と正面からぶつかる危険は冒せない」とした」
(引用終わり)
この種の情報は、単なる願望ではなく、中国は、米国との直接の接触によって、これらの手がかりを得ているのだと思われる。
そういえば、最近でも、ケリー新国務長官が最近中国と行った電話会談について、記者から、中国艦船の射撃管制用レーダーの照射問題を取り上げたかについて訊かれた報道官は、調べてみる、と返答しただけだった。
おそらく話題にも上らなかったのである。もしそういうことなら、こういうところから、中国は米国の本気度を探っているのだと思われる。
1 米国の軍事的参加は米国の自殺行為
1点目に米国参戦がない理由として、米中両国とも安全保障理事国であって、核兵器保有の大国だということが挙げられる。
米国のアイゼンハワー大統領は「核戦争は、敵を倒すことと、自殺することが一組になった戦争」と語ったが、言い得て妙である。
平和ぼけしたわが国では、誠に気楽に尖閣をめぐる米国の参戦が語られている。しかし考えてもみよ。米国が払うことになる犠牲の巨大さに較べて、尖閣はあまりにも得るものが小さすぎるのだ。
決定的なのは中国が米国債の世界一の購入国であり、米中にとって尖閣が現実的に領有している領土でないことだ。
わたしにはわが国の米国の参戦をあてこんだ強硬派は、誠にお目出たき人々に思えてならない。それはほとんど無菌状態で、純粋培養された世界認識である。
その軍事的な強大さからいって、両国の軍事的衝突には強力な自制が加わることは間違いない。
これはひとり米国のみではない。キューバ危機の際の旧ソ連も、核保有国の自制が働いた。
あまりにも強大であるゆえに、逆に核保有大国同士の核戦争には、ブレーキがかかるのである。
失うものが大きすぎるのだ。
ただ、わたしは米国抜きの日中間では軍事衝突が起きる可能性は強いと見ている。それは、日本が非核国であり、尖閣の実効支配者であるからだ。
さらに、これが1番大きな理由になるが、中国人民解放軍の対日強硬派というのが、政権の統制が及ぶ軍の上層部ではないということである。
対日強硬派は、軍の内部では傍流である。
例えば、次のような、羅援少将の発言は、中国人民解放軍の内部では極めて少数派の、発言だといわれている。
2012年7月2日に、香港のフェニックスTV(鳳凰衛視)に出演した、中国人民解放軍の羅援少将は、
1 釣魚島を中国の行政区「釣魚町」にする。
2 領海を法律で制定する。
3 釣魚島で軍事演習を実施する。
4 国家海洋警備隊を設置する。
5 釣魚島近海の開発事業を行う。
6 世界に向けて、領有を宣言する。
と語った。
もし、尖閣沖で偶発的軍事衝突が起きるとすれば、このような一部の跳ね返りによって起こされるということであろう。
私たちが最も警戒しなければならないのは、このような跳ね返りによる無謀な衝突が、国家間の大々的な戦争に発展する展開である。
わが国の安倍晋三を、その軽挙妄動に走らせないために、私たちは戦わねばならないのである。
http://www.youtube.com/watch?v=V6QJwpfmbXg
2 国連の敵国条項の活用で阻止される
米国が日中戦争に参戦しない理由の3番目に、中国が国連の敵国条項を活用し始めたということがある。
習近平や楊外相が、日本を批判するときに、しきりに「軍国主義」とか「反ファシスト戦争」という言葉を使い始めた。
つまり、中国は、日本の尖閣国有化は中国領土に関する日本の侵略行為であるといっているのだ。
この主張は、国連憲章の「敵国条項」に直接に結びつき、米国の参戦を阻止する強力な武器になる。
国連憲章にはまだ「敵国条項」が残っているのである。
辟易するような悪文(悪訳)であるが、滅多にお目にかかれない条項なので、この機会に目を通しておきたい。
第53条
「 1.安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極または地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。
もっとも、本条二に定める敵国のいずれかに対する措置で、第百七条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。
2.本条一で用いる敵国という語は、第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される」
第107条
「この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない」
(引用終わり)
以上の悪文(悪訳)を一度読んだだけで意味を理解された人は少ないだろう。
国連憲章第53条第2項でいうところの「第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国」とは、日本とドイツのことである。
国連憲章の「敵国条項」は、日本とドイツが、戦後において他国の侵略を行うなど、国際秩序を乱す行為を行ったときは、国連憲章第53条の規定にもかかわらず、その該当国の政府は独自の判断にしたがって、安全保障理事会にはかることなく、軍事的制裁を行うことができるということを規定している。
もし、中国がこの敵国条項を使うと宣言して日本に対して軍事行動に出た場合、米国は動けなくなるのだ。
昨年(2012年12月12日)の『産経ニュース』が、「日米安保は無効? 国連の「敵国条項」かざす中国の危険」と題して、京都大学の中西輝政の見解を紹介している。
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