2013年2月5日火曜日
【双葉町】正論より安定した生活の確立を求めた町民たち~深かった井戸川町長と町民の溝.
http://ameblo.jp/rain37/entry-11462900257.html
井戸川克隆前町長に対する不信任議決、そして町長による議会解散を受けて3日に投開票が実施された双葉町議会選挙。福島県郡山市の町役場支所に設けられた投票所で、一票を投じた町民たちに井戸川前町長への思いを聴いた。「井戸川町長の主張は正しい、でもね…」と町民たちは口々に言う。丸2年が経とうとしているのに先が見えないままの避難生活に、いら立ちは募るばかり。正論を通そうとした前町長。目の前の生活安定を望んだ町民。両者の溝はあまりにも深かった
【きれい事では何も進まない】
「町長の言っていることと、われわれ避難者との間に、考え方の相違があるんだよ」
郡山市内の民間借り上げ住宅に暮らす男性(62)は、ストーブに手をかざしながら話した。
5人で暮らしていた家族は、いわき市も含め3カ所に分かれての生活を余儀なくされている。あと何年、こんな生活を続けなければならないのか。ふるさとに帰れるなどとは思っていない。でも、何の見通しも立たないのも不安だ。バラバラになってしまった家族や地域の人々が、元のように一緒に生活できる空間を早く作って欲しいと訴える。
「82歳と85歳になる両親はいつも『いつ帰れるの?』って聞くよ。現実は帰れないさ。そんなことは分かっている。でもさ、30年とか50年とかこのままで、後はその時に考えましょうなんて言われてもね…。30年後って俺は92歳になっちゃうよ。それまでの生活はどうすんのよ」
58歳の女性は、やはり郡山市内の民間借り上げ住宅に85歳の母親と二人暮らし。原発事故のせいで転々とし、現在の住まいが7カ所目。大震災まで、福島第一原発の電気工事を請け負っている会社で事務員をしていた。未曽有の揺れで、手を6針縫う大けがをしたという。
「あれだけ汚れたところには帰れないでしょ?だからきちんとまとめて、先が見えるようにしてほしいのよ。世の中、きれい事では何も進まない。じゃあ実際、何が出来てるの?何が進んだの?」
前町長の理念には共感する部分も少なくない。でも、先の見えない不安定な避難生活にも辟易している。顔見知りのお年寄りも、日焼けした顔がすっかり、青白くなってしまったという。自身もあと2年で定年。将来の不安が募るばかり。
「引くところは引いて、議会とも仲良くやって、住民を引っ張って欲しかったですよ。東電や国とも精力的に交渉して、とるもの(賠償金)もとってきてもらわないとね。それなのに、上でごちゃごちゃやってては、どうしようもないでしょ」
そして、吐き捨てるように言った。
「定年後は、ある意味自由だからどこにでも行かれるよ。でもね、お金は誰が出すの?原発事故さえ無ければ双葉町で暮らしていられたんだから」
郡山市内に設けられた投票所では、午後5時まで
避難している町民が一票を投じた。町民の選択は
約3時間かけて車で埼玉県加須市に運ばれた。町
長選挙は3月10日に実施される=郡山市朝日
【避難先が0.9μSVのダブルパンチ】
5000万円を投じて建設した保育園。美しいステンドグラスが自慢だった園舎は、開園一周年を待たずして廃墟と化した。須賀川市内で避難生活を送る女性園長は「会議に出席しないなど、普通、社会では許されないですよね。叩かれてもきちんと会議に出て、持論を主張するべきだったと思いますよ。おかげで何も進んでいないじゃないですか」と井戸川前町長の言動を批判した。
将来の帰還に向けて進めようとする国の姿勢には大きく首をかしげる。「だいたい、汚染された廃棄物をよその県に持って行くなんて、そんな失礼な話は無いですよ。もう、双葉町には帰れないんだから、町の中に貯蔵するしかないんです。そのうえで、〝仮〟ではなく〝永久の〟町を作って町政を進めて欲しいですよ」と話す。
その園長が「歌の先生」と慕う女性は、猪苗代町での避難生活を経て二本松市の岳温泉に居を構えた。「井戸川さん?あの人は町民のためなんか考えていないよ。人の話を聴かないで、何でも独善で進めてしまう。辞めるタイミングも悪いしね。もっと早く辞めていれば、こんな選挙もしなくて済んだのに」と手厳しい。郡山市大槻町に住む女性は、5人の孫を含む12人家族を切り盛りする。一度、同町内に部屋を借りたが、手狭なため、少し離れた現在の部屋を借り直した。前町長へは言葉すくなだったが、家族が多いだけになおさら、一日も早く安定した生活空間の確保を望んでいる。
「放射線量なんて、高いのは福島市や郡山市ぐらいだと思っていた」と苦笑する保育園長は、避難にあたって両市を避けて須賀川市を選んだ。しかし、玄関先で線量計をかざすと0.9μSV。中通りの深刻な汚染を目の当たりにし、愕然としたという。ふるさとを追われ、ようやく落ち着いた先も被曝の危険性が低くない放射線量。だからこそ、町民たちは一日も早い「新双葉町」を、放射線量の引く土地で作り上げることを望んでいるのだ。
【届かなかった前町長の想い】
30代の女性は、3歳と5歳の二児の母。放射線量の低い土地を求め、現在は石川郡で夫と4人で避難生活を送っている。
「私はツイッターなどで井戸川さんの想いを知ることができたけれど、多くの町民、特に年配者には伝わっていないと思う。町のホームページに掲載されたメッセージも、最後になってようやく出てきたという感じ。忙しそうにしているけれど、結局、何をしているのかが分からなかったですね」
日頃からわが子の被曝回避を意識しているだけに、井戸川前町長が年間被曝線量1ミリシーベルトにこだわる姿勢など、支持できる部分は多かったという。
「でも、あまりにも手法が悪かったですね。ワンマンで人の話を聴かないし…。懇談会の場で、もっと情報発信するよう伝えたんですけどね。忙しいから無理だと言われてしまいました。現実問題としては、もう町には帰れないだろうし中間貯蔵施設の建設もやむを得ないと思います。だからこそ、双葉郡の他の町と協調性を持って住民を統率してほしかったのですが…。残念です」
町議選に一票を投じたものの、当選議員の中から町長選に立候補する者が出ることは分かっている。井戸川前町長の理念には賛同していただけに、新しい町長への不安は大きい。
「果たして、本当に住民のためになるようなリーダーが選ばれるのかどうか…。そこが気がかりです」
別の50代の女性も、前町長を支持していた一人。
「一生懸命に頑張っていたと思いますよ。東京の大学に進学した息子も言っていました。『被曝の問題にしても、井戸川町長はきちんとしたことを言っている』って。あまりに正しいことを言い過ぎて、干されてしまったのではないですか?」
◆町によると、双葉町民は1月8日現在、福島県内に3704人、県外には3250人が避難している。福島県内の避難先としてはいわき市が最も多く約38%。次いで郡山市約20%、福島市約12%、白河市約7.3%の順。町選管によると、新しく選出された町議の中から町長選挙への立候補者が出た場合、今回の落選者が法定得票数を上回っているため繰り上げ当選となる。その場合の補選は夏の参院選と同時に実施される見通し。なお、25歳以上であれば、双葉町民でなくても町長選挙に立候補することができる。
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