2013年2月19日火曜日

隕石の落の地・チェリャビンスクのそばにあった放射性廃棄物貯蔵タンク保管場所(大貫 康雄)核兵器用のプルトニウム製造工場が稼働を開始以来、核関連施設で大小幾つもの核事故を引き起こし多くの人達が被曝している。 2月15日、ロシアのチェリャビンスク市一帯に隕石が落下し、衝撃波などで多くの建物が壊れ、1200人以上が負傷した。市から北西に70kmの所には旧ソ連時代からの核施設が広がっているが、今回核施設への被害はななかったようだ。 この核施設は過去に大きな核事故を引き起こし、今は大量の放射性廃棄物が保管されている場所だけに、大気圏への突入条件が変わっていればさらに惨事になった恐れがある、と考えてしまう。 杞憂であれば結構だが、今回の事故は、原発を始め核施設は隕石など超音速の落下物体による被害を防ぐ手立てはないことを改めて自覚する機会にしたい。 今回の隕石落下で、チェリャビンスク一帯では強烈な光の後、爆発音と強い衝撃波に襲われ4700棟の建物の壁や窓ガラスが壊されるなどの被害を受け、けがをした人は1200人以上になっている。隕石の落下で多くのけが人が出たのは歴史上初めてと言われる。 BBCによるとロシアの科学者は、今回の隕石、大気圏突入前は重量10t、秒速30kmで飛行、高度3万から5万m上空で爆発したとみている。 一方NASA・アメリカ航空宇宙局は、大気圏突入前は直径17m、重量1万t、秒速18 km(音速の13 倍)で大気圏に突入。この時、500キロトンのエネルギー(広島に投下された原爆が12~15キロトン)を放出したとみている。 今回の隕石は、アラスカ上空から非常に低い角度で大気圏に突入し爆発、幾つかに分裂し東北東から西シベリアのチェリャビンスク市の西南西先まで飛行し落下した。チェリャビンスク市から西に70km、チェバルクリ湖では凍結した湖面に直径8mの穴が空き、岸辺に直径6mのクレーター状の穴が見つかったという。このほかチェリャビンスク市の西数10 kmに渡って隕石の破片が散乱しているとみられる。 このチェバルクリ湖から北にわずか50 km前後、チェリャビンスク市の西北西に70kmほどの地域「マヤーク」は冷戦時代、「チェリャビンスク65」と郵便番号で呼ばれ、プルトニウム核兵器製造のための核施設が幾つもあった。 マヤークでの核惨事は日本では「ウラルの核惨事」の名でも知られる。核兵器用のプルトニウム製造工場が194年に稼働を開始以来、核関連施設で大小幾つもの核事故を引き起こしている。 ●1957年9月27日にマヤーク内キシュチムでの再処理施設で放射性廃液貯蔵タンクの冷却系統が故障したため化学爆発がタンク内の起き大量の放射能が周辺環境を汚染した。この事故で森林・河川が汚染され3万4000人が被曝したといわれる。 ●当時は、再処理施設でプルトニウムを分離後の高レベル放射性廃液を処理する技術が開発されておらず、中レベル以上の高レベル放射性廃液を周辺の川や湖に捨てられ一帯が汚染されるままになっていた。これらの川を飲料水源とした人や、魚やキノコを食べていた人たち12万4000人が被曝し、多くの人が避難を余儀なくされた。57年の事故後防御工事が進められ59年以降、放射性廃液を垂れ流す量は減ったが、完全な防御措置から程遠いものだった。 ●67年春には放射性廃液の貯め池とされていたカラチャイ湖が干上がり、湖底に沈澱していた放射性物質が乾燥して風に飛ばされて飛散。広い地域が汚染され4万1500人が被曝している。 マヤークの核兵器関連施設では45年間、他にも幾つもの事故が起きたが、いずれも秘密裏にされ、57年のキシュチムでの事故を76年にソ連の生物学者ジョレス・メドヴェージェフが科学雑誌で発表して初めて世界に明らかにされた。 一連の核事故で被曝した人たちは一部を除いて避難措置も受けず、事故の深刻さを知らされないまま被曝したため、幾つもの障害が出ている。 マヤークでは現在、核兵器製造時の放射性廃液やフランスの原発から出る放射性廃棄物も含め大量の放射性廃棄物が貯蔵タンクに入れられただけで建物が作られることなく野外に保管されている(フランスの放射性廃棄物保管を引き受ける事業は90年代にエリツィン大統領時代、外貨稼ぎの一つとして始めている)。 マヤークから10kmの所には人口8万人余りのオジョルスク市がある。今回、隕石が衝撃波を伴ってこの放射性廃棄物タンクの保管場所に落下していたら大惨事になった可能性がある。隕石の飛行速度と距離を考えたら、数十kmの違いなど誤差の範囲でしかない。 アメリカやヨーロッパでは大きな隕石や小惑星が地球との衝突防止の研究と技術開発を加速させると報道されている。小惑星イトカワに観測機器を軟着陸させた日本の技術も注目されているが、技術開発が何時になるか見通しは立っていない。 今、世界には各地に原発や核施設が点在しているが、こうした隕石や小惑星が大気圏を突き破って原発など核施設に落下する場合、施設を防御する手立てはない、ということを改めて自覚したい。 http://news-log.jp/archives/6751

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