2012年12月12日水曜日
4号機プールで起こる可能性のあるジルコニウム火災.
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東電の「震度6強までは耐えられる」という話は、やはり鵜呑みにしてはいけない
東電は3日、4号機の使用済み燃料プールから燃料を取り出す作業を平成26年末までに完了する、と発表しました。
また、燃料取り出し作業の開始を来年12月からの予定を1ヶ月前倒しにして11月から開始すると発表。
これは、3.11の地震で、燃料プールの底部(外側)にクラック(ひび割れ)が入ってしまい、去年5月から去年7月にかけて応急的に補強工事をやったことからです。
補強はしたものの、東電は公式の場で、「震度6強以上の地震」が起こった場合は、「倒壊するのではないか」という記者の質問に明確に回答していないし、「耐えられる」とも言っていません。
この、「震度6強まで」は絶えられるという話は、あくまで地盤が健全であるという前提の話であって、そもそも東電は4号機建屋が不等沈下している事実を認めないのですから、「震度6強まで耐えられる」と胸を張っても大した意味があるとは思えません。
だから、確実なことは「震度6強では、もたない(震度5強でも分らない)」--私たちは、このように考えておかなければならない、ということです。
これは非常に大事なことです。
アーニー・ガンダーセン氏は、東電が言うように大型のドライ・キャスクではなく、まず小型のドライ・キャスクをプールに沈めて、未使用の燃料集合体や、崩壊熱が少なくなっている燃料集合体から、どんどん取り出すべきだと主張していました。
取り出し作業は、このようになります。
東電のスケジュール前倒しの記者発表は、ガンダーセン氏、京都大学原子炉実験所の小出裕章氏、そして、村田光平氏。その他、多くの世界的核専門家の提案どおりとなりました。
こんなにまでしなければ動かない東電、そして政治家たち。彼らはいったい何者か。
彼らは放射能の灰が降り注いでも、マイクだけは離さないでしょう。日本の政治家とは、とてもひょうきんで滑稽な人々です。
プールに収められている1533本の燃料集合体(全部で1535本のうち、2本を試験的に取り出したので、現在は1533本)を少しでも早く、そして少しでもたくさん取り出すことが、破局を小さくすることになります。
今は、本当に時間との勝負です。
ジルコニウム被覆管の破壊→メルトダウンまでの道筋
さて、ここからは使用済み燃料プールが爆発したかのように燃え上がる「放射能火災」についてです。
一般に「ジルコニウム火災」と言っています。
まずは、燃料ペレット、ジルコニウム被覆管、燃料棒、燃料集合体の関係です。
①燃料ペレット(ウラン燃料)。
直径約1cm、高さ約1cm。ワインのコルク栓より小さい。
燃料ペレットは、少しでも温度が上がると(670 ℃で結晶構造が変化して膨張してしまう)変形してしまうので、ウラン酸化物を粉末状にした上で成型し、磁器のように焼き固めてられてある。
こうすることによって、溶け出す温度が2700~2800 ℃まで高められ、簡単にはメルトダウンしなくなる。
②厚さ2mm、直径1cm強、長さ4mのジルコニウム被覆管。
この管の中に①の燃料ペレットを何百個もポトポト落として入れたものを「燃料棒」という。
原子炉で使われている燃料棒とは、なんとビリヤードのキュー(玉突きの棒)より細いのです。
③大きさの目安。
④このように燃料棒を正方形の束にしたものが「燃料集合体」。
イメージとしては、こんな形で原子炉圧力容器の中に納められている(水で浸されている)。
7月に、使用済み燃料プールから試験的に取り出した未使用の燃料は、この束になった燃料集合体の状態のもの。
福島第一原発は沸騰水型原子炉(BWR)で、核暴走しないように制御しながら、そろりそろりと必要な温度まで高めながら運転する仕組み。
運転中の圧力容器内の温度は300℃程度で、ここから生まれた高圧の水蒸気が配管を通ってタービン建屋に送られてタービンを回転させて電気を作る。
原発とは、かくも見事なローテクなのです。蒸気機関と同じ。
問題は、石炭の代わりにウランの粉末を焼き固めた燃料ペレットを使用するということ。これが、今の科学と技術では人間が自由自在に制御できないことがカタストロフィーを引き起こしてしまうのです。
では、どのようにしてメルトダウンしたのか。再度、復習です。
3.11の大地震が起こって1時間半後に、アメリカの衛星が1、2、3号機の原子炉圧力容器の温度が1500度を超えているのをキャッチしていました。
また、その数時間後には、米軍の無人偵察機「グローバルホーク」が福島第一原発上空を飛行して、高感度撮影を行っていました。
その写真は、おそらく東電と政府には公開されていたと思われますが、軍事上の機密という理由でマスコミには公開されていません。
ジルコニウム被覆管は、常温では手で触っても問題ないのですが、1000℃近くになると急激に酸化の暴走が始まります。
圧力容器内の冷却が止まると、制御棒を差し込んでも燃料ペレットは崩壊熱を出し続けます。
一般の物質であれば、どんどん冷めていきますが、核燃料は一度臨界に達すると自分で発熱しますから、熱の逃げ場のない圧力容器内では熱が累積されていく一方で、その結果、高温になりジルコニウム被覆管を溶かします。
アメリカの衛星が、地震後1時間半後に、1、2、3号機の原子炉圧力容器の温度が1500度を超えているのをキャッチしたときは、すでにジルコニウム被覆管に裂け目などができて、それが見る見る広がり、ジルコニウムと水分が反応して大量の水素が圧力容器内に発生していたことになります。
そして、圧力容器から格納容器、そして、その外側の原子炉建屋に漏れ出して水素爆発を起こしたのです。
一方、燃料ペレットの融点は2800℃程度ですから、猛烈な熱を出しながらも個体の形をとどめながら、ポトポトと圧力容器の底に落ち始めていたのです。
圧力容器の下に落ちた燃料ペレットの粒粒は、数箇所に固まって自分でどんどん発熱していきます。
すると、圧力容器の底に小さな穴を開け始めます。
圧力容器の材料は鉄。
鉄が溶け出す温度は1500℃ちょっとですから、とうとう圧力容器の底を突きぬけ、さらに燃料の温度はぐんぐん上昇しながら格納容器も溶かし、とうとう下のコンクリートの土台まで突き抜けました。
おそらく、この段階では、ところどころにチェルノブイリ原発事故のときにできた小さな像の足が、できていたでしょう。
その塊のまま、コンクリートの土台まで溶かして、今は地下深く潜っています。
今後の可能性としては、地下水と接触して小爆発を起こす可能性があること。
そこまで至らなくても、地下水は確実に汚染されている。
問題は、メルトスルーした核燃料が、どんな形をしているのか、ということ。
一塊になっているのであれば、熱はそれほど下がっていないので、まだまだ下へ落ちるでしょう。
燃料が、ばらばらに分散しているのであれば、そこそこ冷えているでしょうから、すでに止まっているか、じきに止まるでしょう。
危機意識が完全に欠如していることが露呈された東電
使用済み燃料プールの核燃料が暴走するのは、こうしたプロセスとは違っています。
問題は、プール内に沈められているラックという燃料集合体の収納ケースの間隔です。
地上にある使用済み燃料を冷却している共用プールもすで満杯状態で、新たに使用済み燃料を受け入れることができないため、電力会社は原子炉建屋の使用済み燃料プールの中に置いたままにして原子炉を動かしてきたのです。
その間も、使用済みの核燃料がどんどん出てくるので、このラックの燃料集合体を差し込む穴の間隔を狭めて、ぎゅうぎゅ詰めに入れています。
この「間隔を狭める作業」をリ・ラックといって、日本の多くの原子炉建屋内の使用済み燃料プールで行われています。
これだけ燃料集合体同士の間隔が狭いと、地震や予期せぬ爆発などでラックが壊れた場合、燃料集合体同士が接触してしまいます。
柏崎刈羽原発: 燃料棒どうしが接触
(NHK 12月12日 17時)
…使用済み燃料の部品が変形し、核燃料が詰まった燃料棒どうしが接触しているものが見つかり、燃料の冷却に影響が出るおそれがあるため…
…柏崎刈羽原発では、ことし10月、5号機の燃料プールに保管されている、長さ4メートル余りの使用済み燃料のうち、18体で水を通す管が変形しているのが見つかり…
…燃料棒どうしが接触すると、冷却するための水の流れが悪くなり、燃料の冷却に影響が出るおそれがあるということです。
互いに崩壊熱を出し合っているのですから、プールの水の冷却ができなくなった場合などはジルコニウムの被覆が熱で溶けてしまう危険も出てきます。
これが、日本の原発の恐ろしく杜撰なところです。
原子力ムラの人々は、「見たくないものは見えない」という、とても都合の良い目をしているのです。
この使用済み燃料プールに冷却水を送るポンプが故障したり、配管が水漏れを起こしたり、あるいは、循環冷却システムそのものが老朽化して駄目になったり、交流電源が喪失したり、プールに亀裂が入って外から水を入れても入れても、すぐに漏れてしまうようなことが起これば、ジルコニウム火災が起こります。
上のイラストの右側のような状態になると、もう人間は近づけないので、軍用機で真上から特殊な消化剤を投下するしかありません。それに失敗すれば、万事休す。
使用済み燃料プールから火炎が出ているからといって、キリンなどの長いアームを使って水を入れることは、火に油を注ぐのと同じことになります。
ガンダーセン氏、東電・資源エネルギー庁を4号機の危険について言及
この動画は、今年8月31日、衆議院第一議員会館1Fの多目的ホールで行われた「福島原発4号機の核燃料問題を考える議員と市民の院内集会」の模様です。
0:40:10あたりからご覧ください。
村田光平元駐スイス大使の質問に続いて、アーニー・ガンダーセン氏が質問しています。
ガンダーセン氏:
「御社(東電)は燃料プールで火災は起こらないと考えているようですが、万が一、その仮定が間違っていて、不幸にも火災が起こってしまった場合、最悪の事態に備えて、化学製品(消化剤)の活用を考えていますか」。
ガンダーセン氏のこの質問に答えたのは、東京電力・原子力立地本部・土木建設備GMの佐藤芳幸氏。
佐藤芳幸氏:
「4号機は十分に補強しているので崩壊はあり得ないし、使用済み燃料プールの中には「燃えるようなものはなく、消防体制も強化している」。
この回答を聞いた会場の人たちから一斉に罵声が飛んだのです。「そんなことも知らないのか」と。
つまり、東電の佐藤芳幸氏は、ジルコニウム被覆管それ自体が「燃えるもの」であり、ジルコニウム被膜が高熱になって破損したら、いよいよ世界の終わりであることを知らなかったのです。
だから、「消防体制を強化している」…つまり、キリンがいつでも出動できる態勢になっているから大丈夫と彼は言いたかったのでしょう。
でも、発熱した状態のジルコニウム被覆管がギッシリ詰まったプールにキリンで水を入れたら、プールは爆発するでしょう。
「…(ジルコニウム被覆管などの製品製造の)作業における安全とセキュリティに関しては、広範な行動計画が、ジルコニウム火災(zirconium fire )の危険を根絶するために、プラントの全体にわたって展開されています。
……現場の安全管理者によって構成されたチームが組織されています。
ジルコニウム火災が起こりうると考えられるあらゆる危険な状況を徹底的に洗い出し、それぞれのリスク評価が確立されています」。
アレバ社では、ジルコニウム製品の製造過程で火災が発生する事故があり、ジルコニウム製品の事業単位、および派遣労働者、および下請け作業者に至る従業員約1200人が、この危険回避行動計画に沿ったトレーニング受けているのです。
東電は、ジルコニウムが熱を持ち酸化作用が暴走したとき、どれほど危険なのか、本当に分かっているのでしょうか。
4号機燃料プールの冷却水を送るポンプが故障!? 午後5時以降のIWJライブで!
ところで、IWJを主宰している岩上安身氏のもとに、昨夜、村田光平元駐スイス大使から連絡があったそうです。
「4号機プールの冷却水ポンプに故障が生じた」ということですが、東電の最新のリリースを開いても何も記されていません。(午後4時50分現在)
通常は、午後3時には発表されるのですが、トラブルがあるときは、いつも発表されないのは私が何度も確認しています。
何かが起こっていることは間違いなさそうですが…。
IWJのチャンネル1で午後5時以降(蓮池さんインタビューの後ということです)、村田氏のインタビューがあるそうです。ライブです。(「USTREAMチャンネル」のボタンをクリック)
東電側は、「11日にポンプは復旧した。ポンプが故障で止まったという事実はない」と否定しているようです。
変な回答です。
選挙の投票日が迫っているために、実際にポンプが止まっていたのに、東電内部、政府機関、マスコミが一斉に口にチャックをしてしまったということです。
原発の危険性に人々の関心が向いてしまうと、原発推進を政権公約に掲げている政党にとっては不利になってしまい、公平な選挙にならないからだ、とかいつもの屁理屈をつける連中がいるということです。
あるいは、エネ庁当たりが、村田氏の4号機に関する警告が嘘であるかのように思わせるために、「ポンプが止まった」というガセをつかませて評判を貶めようという人々の罠に嵌まったか。
私は、これだと思います。また世耕か。
悪党党と政党名を変えるべきなのですが…。
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