2012年12月6日木曜日

福島のこどもたちと沖縄県民に想いをはせて、21世紀の核なき世界と憲法を選ぶ一票を! http://chikyuza.net/n/archives/28607 <加藤哲郎(かとうてつろう):一橋大学名誉教授・早稲田大学客員教授> ◆2012.12.1 東京は都知事選挙と衆議院選挙のダブル選挙です。2週間の更新のあいだにいくつかの政党が消え、いくつかの政党が生まれました。都知事選挙はすでに公示、総選挙は4日公示、投票日は16日です。お隣の韓国ではすでに大統領選が始まり、19日が投票日。野党がぎりぎり候補を一人にしぼっての決戦ですが、議院内閣制の日本では、まずは候補者調整の第一幕、選挙結果を見て政権づくりの第二幕の政党再編があるでしょう。そのさい、TPPも消費税も社会保障も重要ですが、長いタイムスパンで重大な選択になるのは、原発と憲法という争点です。憲法は、国の仕組み、政治の仕組み、基本的人権と自治、民主主義のあり方を定めるものです。争点になっているのは、憲法96条の改正手続き、第9条の戦争放棄・戦力放棄条項です。両院の3分の2による改憲発議要件を過半数にし、時々の情勢にあわせて基本法そのものを変えやすくするというのです。憲法は、主権者である国民が、政府の権力行使をしばるものです。戦争や平和のあり方をも規制します。それが簡単に変えられ、しかも集団的自衛権とか、自衛隊を国防軍にするとか、果ては核兵器保有を公言する政党まで出てきていますから、改憲の狙いと方向は明らかです。世論調査では、確かに改憲支持が広がり、「時代に合わない」という理由があげられますが、「時代にあわせる」とはどういうことかが、総選挙の争点です。「健康で文化的な最低限度の生活を営む」生存権は、危機に瀕しています。「知る権利」や集会・デモの自由も制限されています。そうした方向とは正反対の改憲論が、主要政党党首により公然と唱えられ、海外メディアは「極右の台頭」と警戒しています。1945年以来の日本の岐路です。そしてその「極右化」は、沖縄県への米軍基地集中、オスプレイの危険、米兵犯罪の治外法権的野放し状態を、いっそう悪化させ永続化させることになるでしょう。 ◆2011年3月11日から初めての総選挙です。東日本大震災の被災者支援・復興と福島原発事故にどう対処するかは、新しい歴史的で国民的な争点です。東京都知事選でも総選挙でも、脱原発が争点になってきましたが、メディアの誘導する論点は、もっぱら電力供給のベスト・ミックスと稼働期限の問題です。景気回復・消費税も社会保障でも、まずは被災地をどうするかこそ語られるべきなのに。復興予算は流用され、被災地に行き渡りませんでした。東北電力の電気料金値上げは、除染施設も仮設住宅も一緒です。被災者は全国に散らばっています。肝心の福島第一原発の現場も、こどもたち・お母さんたちの悲鳴も、隠されています。党首討論や記者会見での質問は、もっぱらエネルギー転換の工程表です。これ以上被曝労働者を増やすのか、核燃サイクルを続けるのか、この地震列島で10万年かかる使用済み核燃料を最終的にどこに廃棄できるのか、この国のメジャーな政治は、問題から逃げ、先送りしようとしています。まだまだ懲りない原子力ムラと、そこに寄生する官僚、財界主流、電力労働組合を後ろ盾にした政党・候補者を見分けなければなりません。「総選挙でグッバイ原発」が、落選運動の格好のサイトです。脱原発法制定全国ネットワークも、脱原発基本法制定に賛成する総選挙・小選挙区別候補者氏名を公表しています。 ◆マスコミで当初「第3極」と想定された日本維新の会の現代表の発言だけは、記録に残しておく必要があります。前日発表したばかりの「原発は2030年までにフェードアウト」という自党の政見公約を知らずに「原発は必要」と頭ごなしに訂正、それも核兵器開発のオプションを失うと困るからとか。原発が潜在的核保有であることを、公然と述べています。ビキニ環礁での米国水爆実験による第5福竜丸被曝時に、中曽根康弘等の原子力予算が出され、「だからこそ平和利用」という原水禁運動の国民化の中で、原爆は悪で戦争・破壊・危険・恐怖の対象、原発は善で平和・建設・安全・希望のシンボルに、分化していきました。これが実は、日本列島の空間的分岐にも関わっているのではないかという記録を、ジョン・ダワー『昭和』(みすず書房)を読んでいて気づきました。そこに収録された「占領下の日本とアジアにおける冷戦」という論文は、「1945−47 非軍事化と民主化」「1947−49 ソフトな冷戦政策」「1949−51 ハードな冷戦政策」「1951−52 統合的冷戦政策」と占領期における米国の世界戦略とその中でのアジア・日本の位置づけを、米国側第一次資料で検証したすぐれた学術研究です。 ◆その中で、朝鮮戦争前の1948年頃から、米国国家安全保障会議(NSC)は、沖縄、講和後の日本本土の米軍基地、日本の再軍備の3つのレベルに分けて米国のアジア戦略を考えており、「日本は必要だったが、日本人は信用することができなかった」ために、「日本の再軍備」は認めるが「在日米軍基地を長期に維持」する方向が定められており、沖縄は、1948年以降「核兵器を搭載した戦略爆撃を実施する三つの主要な発信基地」の一つと位置づけられていたというのです(同書133頁)。あとの二つがどこかダワーは書いてませんが、当時のアメリカの世界戦略からすれば、西ドイツと中東でしょう。西ドイツは後にNATOの核基地になり、欧州原子力共同体(ユートラム)の枠内で原発保有が認められます。そして西ドイツと日本には独自の核兵器保有は認めないが、米軍基地への核配備で「アトムズ・フォー・ピース」による原発開発は許され、日本の場合は第5福竜丸被曝での原水禁運動・反米運動の高まりに対応して、まずは沖縄への核兵器配備(53年12月オネストジョン配備)、本土での原発ビジネス(55年11月日米原子力協定)と、地理的に原爆と原発が分離されたようです。もちろん当時の日本の支配層の核保有願望も十分熟知したうえで。その上で、実際は途方もないリスクを内在する原発を、本土では東京用を福島へ、大阪用を福井へという風に、過密の電力消費地と過疎の原発立地への、地理的・空間的分断が進められました。尖閣領土問題に火をつけ、東京都政をもて遊んで放り出し、国政攪乱に乗り出した老人は、フクシマの原点がオキナワを介してヒロシマにあることを、改めて想起させる役割を果たしたようです。次回の定期更新は、選挙結果を見ての17日に設定します。ただし重要な政治戦・情報戦のさなかですので、臨機応変の臨時更新も行います。 ◆2012.11.19  さっそく選挙を前に、立候補予定者の「脱原発度」を仕分けるサイトができたようなので、紹介しておきます。横須賀市議会議員の小林のぶゆきさんの立ち上げた「総選挙でグッバイ原発」。なかなかよくできていて、14の出典のクロスで「誰が、どれだけ脱原発なの?」を測るもの。落選運動ばかりでなく、当選運動にも使えそうです。ぜひご参照ください。 「加藤哲郎のネチズンカレッジ」から許可を得て転載 http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml

0 件のコメント: