2012年10月20日土曜日
小出裕章氏、〈ふくしま集団疎開裁判〉にメッセージ.
http://www.janjanblog.com/archives/82612
◇◆◇ 被ばくし続ける子どもたち ◇◆◇
子どもたちが、被ばくし続けている――。
9月28日、文部科学省前の集会(毎金・17時~19時)で、郡山から参加した女性は、呆(あき)れたように、その実態を語った。
「けさ9時半の時点で、郡山の空間線量は0.8~0.9マイクロシーベルト/時もありました。にもかかわらず、その線量の中で〈子ども祭り〉が平然と行なわれているのです。『ここまでやるか、郡山…』と思い……悲しさや怒りを通り越して愕然(がくぜん)としました。子どもたちは〈被ばく〉について十分な知識を持ち合わせていません。子どもたちの健康は、おとなが責任を持つべきなのに、このあまりのひどさには言葉がありません」(注)
(注)下記矢ヶ崎氏の計算によれば、「年間1ミリシーベルト」の被ばく限度を守るには、1時間当たりの線量は、0.114マイクロシーベルト/時である。郡山での線量0.8~0.9マイクロシーベルト/時というのは、その8~9倍もの値である。後述の小出裕章氏も、0.6マイクロシーベルト/時を超えるようなところは〈放射線管理区域〉にしなければいけないと語っている。
◇◆◇ 矢ヶ崎氏、都内で記者会見 ◇◆◇
10月5日午後、自由報道協会主催の記者会見が行われ、矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授と「市民と科学者の内部被曝問題研究会」の〈モニタリングポスト検証チーム〉メンバーが、福島県内の〈モニタリングポスト〉の“不正確さ”について改めて詳細な報告を行なった。
同氏は、そもそも被ばく許容量が原発事故後に「20ミリシーベルト/年」に突然引き上げられたことについて強い怒りを隠さない。
「ひとたび放射能事故が起きたら、放射線に対する人の抵抗力が20倍になるというのならともかく、事故後に、許容量がいきなり20倍にも引き上げられるようなことに対して、すべての国民が怒りを発しないといけません。同時に、マスコミには、〈国民のいのちを守る〉という視点で、この問題を報じてほしい。」
「モニタリングポストによる放射線の測定で、福島県民の健康が守られることが大事なのに、調査していくと、これほどまでに県民の健康が足蹴(あしげ)にされ、切り捨てられているのかということに驚きを禁じ得ませんでした。」
「基本的には、住民の集団移住などの健康保護策を最優先すべきです。それなのに、線量が高い中を『帰還して、ふるさとの“復興”をしなさい』と言うのは、まさに、住民の〈いのち〉切り捨てそのものです。」
記者会見の席上、放射線計測に対する、意図的な操作の可能性も指摘される中、矢ヶ崎氏は、引き続きモニタリングポストの検証を継続していくことを述べた。
◇◆◇ 「どこに安心・安全があるのか?」 ◇◆◇
17時からの文科省前集会(10月5日)では、光前弁護士から、10月3日付の毎日新聞スクープ記事、つまり、「健康管理調査」に関する“秘密会議”の存在をすっぱ抜いた記事についてコメントがあった。
「こういう内部告発はとても意味があるし、この告発をした人を私たちみんなが守っていかなければいけません。〔庁舎を見上げて〕文科省で働くみなさんも、社会正義のために告発をできる人はどうぞしてもらいたい」
福島県中通りから上京したKさん(71)もマイクを握る。
「いったい、いまの福島のどこに安全、安心があるのか?国や東電がついてきた数々のウソは、まさに犯罪です。こういうウソを私たちが信じて来たことも問題です。これからは、私たち全員が、原発について、そして復興について、深く考えて行かなければいけないと思います」
◇◆◇ 山本太郎さん「みなさんスッキリしましたか?」 ◇◆◇
〈ふくしま集団疎開裁判〉の支援者らは、20時前には、集会場所を潮見坂(注:脱原発テントから国会方面にのぼる坂)上の交差点に移し、21時半過ぎまで、おもに官邸前抗議行動を終えて帰る人たちに向けて、呼びかけを行っている。
10月5日は、俳優の山本太郎さんも駆けつけて、マイクを握った。その第一声がふるっている。
「官邸前で、《原発反対~!》と大きな声で叫んで来て…どうですか、みなさんスッキリしましたかぁ~?」
そこで大きな拍手と歓声があがると、すかさず山本さんはこう続けた―。
「でもね、みなさん――。大きな声を出してスッキリするだけでは困るんですよ。みなさんが、スッキリしたまさにこの瞬間にも、福島では子どもたちは被ばくさせられているんです。」
「放射線管理区域にしなくてはいけないようなところに、子どもたちを閉じ込めておく――これは、国が子どもたちのことを見殺しにすることを決めたということでもあるのです!」
「子どもたちに、もう(被ばくの)結果は出ていますよね?平成24年に福島県のおこなった〈健康管理調査〉の結果では、43%もの子どもたちの甲状腺に、しこりやのう胞ができていることがわかりました。まだ1年半で、すでにこれだけの結果が出ているのです」
「大手マスコミは、こういう重要な事実を伝えようとしません。だったら、私たちが一人ひとりで、伝えて行きましょう!福島の子どもたちが見殺しにされているこの現実を、どうかみなさんの友だち、知り合いに教えて、〈ふくしま集団疎開裁判〉を支えてください」
◇◆◇ 小出裕章氏との電話中継 ◇◆◇
山本太郎さんのあとで、京都大学原子炉実験所の小出裕章氏と電話中継があり、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の森園さん、柳原弁護士、光前弁護士、それに山本太郎さんらが電話をつないだ(以下、敬称略)。
〔森園〕町内会の運動会のことですが、グランドは“除染”をして、線量が0.25マイクロシーベルト/時ぐらいなのですが、まわりの(除染していない)場所は0.7とか0.8ぐらい線量がありました。こういう現状をどうお考えですか。
〔小出〕放射線量が毎時0.6マイクロシーベルトを超えるような場所は、本来〈放射線管理区域〉にしないといけないところなのです。一般の人々は、そんなところにいてはいけないし、子どもは放射線に対する感受性が高いので、早く避難しないといけません。
〔柳原〕そういう〈放射線管理区域〉にしなくてはいけないような場所からの避難について、〈ふくしま集団疎開裁判〉の第1審(2011.12月判決・原告敗訴)で、郡山市は「転居は自由である」と言いました。つまり、簡単に言えば「逃げたい人が、勝手に逃げればいい、どうぞご自由に」という姿勢です。こういう郡山市の姿勢についてどう思われますか。
〔小出〕(苦笑)まったくあきれた話です。現在、福島県のかなりの地域が「1平方メートルあたり6~10万ベクレルの汚染」があると推定されます。日本の法律によれば「1平方メートルあたり4万ベクレル」を超えるところは〈放射線管理区域〉にしないといけないのです。そういう場所であれば、子どもはいてはいけないし、おとなだって逃げなければいけない。それを「逃げたい者は勝手に逃げろ」式の言い方は、まったくひどい話です。
〔光前〕いま、放射線量の測定結果が(矢ヶ崎氏らによって)問題になっています。この測り方ですが、どういうところに注意すればよいのでしょうか。
〔小出〕みなさんがお使いの測定器は、いわゆる簡易型のタイプだと思います。それらは、たとえば10台機器を並べれば、10台値(あたい)が違う…というようなものです。ですから、その測定器で出た値そのものを気にするというよりは、相対的な線量の高低を知る目安にするとよいでしょう。つまり、この機器で向こうを測ると高い数値が出た、それに対してこちら側は比較的線量が低い…というような具合です。
〔森園〕福島のある場所では、除染をしたあとに、モニタリングポストを設置して「1マイクロシーベルト/時あったものが、0.4まで下がりました。よかったですねぇ~」なんてことをやっているところがあります。
〔小出〕「除染」という言葉を、原発事故以来よく聞くのですが、放射性物質を人間の力でゼロにすることはできません。「除染」という言葉でおこなっているのは、単に、放射性物質の“場所を動かしている”だけです。(注:場所を移すだけであるから、当然移した先の場所で被ばくの問題が出てくる。また、小出氏は別のところで、一部だけ汚染されているような場所での「除染」は一定の効果はあるかもしれないが、山も川も田畑も汚染されてしまっているような場合は、そもそも除染の意味がないという趣旨のことを述べている)
〔柳原〕10月3日付の毎日新聞で、福島県の「健康管理調査」にかかわる〈秘密会議〉のことがすっぱ抜かれました。こういう裏での〈秘密会議〉のありようをどうお考えですか。
〔小出〕相変わらずだなと思いました(苦笑)。原子力ムラの人たちは、このようにして、これまで自分たちの好きなようにものごとを進めて、現在まで生き延びて来ているのです。
〔山本〕そういう原子力に関わって来た人たちは、いま現在、福島の子どもたちがたいへん危険な状態にあることを知っているのですよね?
〔小出〕学問的には(注:科学的な知識としては)わかっているでしょう。ただ、彼らは、できることなら今まで通りに「安全、安全…」と言いたがっているのだと思います。子どもたちを救うことについて(そういう原子力推進派の)研究者たち(の学問的な良心が目覚めること)に期待することは…むずかしいでしょう。私は、これまでそういう原子力推進を進めて来た人たちは(その罪悪の大きさから)刑務所に入れるほうがいいと思います。
〔山本〕小出先生…これからもどうか力を貸してください!
〔小出〕……。私はこれまでの原発訴訟での体験から、裁判に絶望して来た人間です。…ですから、できることは限られていますが、その中でできることはしたいと思います。
〔柳原〕今日はお忙しいところありがとうございました。
大手メディアでは報道されない、子どもたちの〈いのち〉を守るための活動は、司法への提訴(2011年6月)以来、確実に支援の輪を広げつつある――。
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