2012年10月7日日曜日

<エトス・プロジェクト>を通して国際原子力ロビーは何を目指しているのか?/その1.) http://echoechanges-echoechanges.blogspot.jp/2012/07/blog-post_409.html 国際原子力ロビーは福島原発事故の問題を手中に納めるため、日本で本格的に動き出している。この惨事が惨事と認定されないように、原子力産業の発展のくびきとならないようにするためである。昨年から、福島で,東京で,広島で、日本の原子力ロビーやそれに関与している御用学者達が盛んに連動して動き始めていることも周知の通りである。 昨年秋から、<エートス・プロジェクト>などという、倫理性や精神性を包み込む名称をタイトルにして、原子力推進勢力が復興計画を福島で行なおうとしている。この計画の組織者達は何を意図しているのか、数回にわたって検証したい。 その1:日本にも襲いはじめた<エートス>プロジェクトとは何なのか? まず、バーゼル大学医学部名誉教授ミッシェル・フェルネックスの<エートス・プロジェクト>に関するインタヴュー(ユーチューブ上で公開中:http://youtu.be/2_oKtjnh52c)を見て頂き、そして、彼が2002年、クリラッド(フランスの市民放射能測定所)の機関紙22号に載せた論文「鍵となる嘘 —あるいはいかにチェルノブイリに刻まれた記憶を消し去ること」を合わせて読んで頂いた上で、拙稿に戻って頂こう。 http://echoechanges-echoechanges.blogspot.fr/2012/07/blog-post_16.html また、ウラディミール・チェルトコフ監督のドキュメンタリー映画「真実はどこに? —放射能汚染を巡って」(ユーチューブ上で公開中:http://www.youtube.com/watch?v=oryOrsOy6LI)をまだ見ていない人がいたら,ぜひ見て頂きたい。 福島原発事故が起こってから、国際原子力ロビーは様々なかたちで、この事故の放射能による悪影響を極力少ないものに見せるために、様々な手を打って来ている。目に見えて大きな組織作りの最初は、日本財団[1](これは極右翼でA級戦犯だった笹川良一が創設した笹川財団が発展して改名した同じ財団)が主催して福島で行なわれた「国際専門家会議」である。この会議は参加者の顔ぶれを見るだけでも、まさに国際原子力ロビーと共犯関係にある国連の諸機関(IAEA, WHO, UNSCEAR, ICRPなど)が総動員されている。この中に、本稿の主題である<エートス・プロジェクト>のフランス人責任者ジャック・ロシャールがちゃんと場を確保している。 原子力関連の国際機関とは? 1986年のチェルノブイリ原発事故以来、この事故の真実隠蔽に奔走して来たのは、まぎれもなくIAEA(国際原子力機関)であり、この組織は、原子力の推進を図る組織であり、監視機関ではないことは,すでに多くの人の知るところである。共犯はUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)、WHO (世界保健機関), ICRP(国際放射線防護委員会)である。そしてそれに力を貸して来たのは、むろん世界の原子力産業である。 IAEAは、1953年米国大統領アイゼンハワーの<アトム・フォー・ピース>(平和のための原子)以降、その方針に従って、安全保障理事会に直属する形で、1957年に設立され、原子力エネルギーの平和利用の促進(ほとんどが要するに原発推進である)と、核兵器に転用されないための監督機関の役割を担っている。1959年にはWHOと合意書を交わし、原子力に限っては、WHOはどのような研究も調査も勝手にすることができない関係になっていることは、再三指摘しておく必要がある。  これらの原子力関連国際機関の委員はおおよそ、共通して複数の役職を持っている。アンスケアの代表理事アベル・フリオ・ゴンザレスは、アルジェンチンの原子力当局の顧問だが、IAEAの理事だったし、またICRPの委員でもある、といった具合である。ロシャールも仏原子力ロビーの民間窓口CEPNの会長であると同時に、ICRPの委員も務めている。 IAEAが国際チェルノブイリ・プロジェクト報告を1991年に出し、放射能の影響はほとんど問題にならないかのような結論を出したことは、よく記憶にとどめておくべきことである。議長に就任したのは、広島でABCC機関の代表を務めた他ならぬ重松逸造であり、原爆被曝者追跡調査の責任者でもあったこの医者があたかも報告書の信頼性に担保を与えた形になっている。 この報告書がベースとなって、原子力ロビーによる被曝影響の無化と記憶の否認のために、あらゆる方策を講じられているのである。 とりわけ、チェルノブイリの被曝地域である三か国(ベラルーシ、ウクライナ、ロシア)の中でも、最もひどい被爆国となったベラルーシでは、1996年から2001年の間、<ETHOSエートス>プロジェクトという企画が、CEPN(原子力分野における防護の評価研究センター)という民間団体によって、欧州連合も参加する形で、展開された。このCEPNはNPOだが、フランスの原子力ロビー、EDF (仏電力公社)、CEA(仏原子力庁=要するに核兵器の製造と原子力の管理・研究)、AREVAグループ(Cogemaに続いて、再編された世界最大原子力複合産業体)の三大組織とIRSN(国立放射能防護と原子力安全研究所)が共同で設立したNGOで、いわば仏原子力ロビーの民間に対するロビー活動の窓口と言っていいだろう。組織の定款は一般の非営利市民団体と同じであるが、年間予算が数百万ユーロという相当な予算を手にしている。この組織が行なっているのは、原子力産業分野での保安評価であるが、原発事故など苛酷事故のリスク評価を行っているムタディス・コンサルタント社と一緒に、仏原子力ロビーのテコとなっているのである。仏原子力ロビーがムタディスに,苛酷事故が起こった時にどのように危機管理すればいいのかを研究させている。「(原子力産業の)事業を正当化しながら、それに伴うリスクを正当化すること」が目指されているわけだ。ちなみにCEPN代表のジャック・ロシャールは経済学者で、物理学者でも医師でもない。 多くの大学や研究者に呼びかけられ、多大な予算が投入され、<善意の>大学教授、<善意の>研究者が集まった。パリ - グリニョン国立農業研究院、コンピエーニュ工科大学などだ。そして欧州委員会も協賛、助成するのである。 CEPNが軸となって、このプロジェクトは、その後、<エートス2>、<COREコア>、<サージュ>と継続されるが、ここには、ラアーグ再処理場の市民による放射能監視をする役割を担っていて、いわば原子力推進派の反対側にいると見なされるはずの「アクロACRO」までも参加している。 こうした原発事故の後の対応は、たしかに「放射線防護だけでなく精神的、社会的、経済的、政治的、倫理的な面から成る複雑な過程」(ロシャールの説明)だが、何より、健康問題が中心的課題となるべきところ、後者の精神的、社会的、経済的、政治的、倫理的な面に主題がすり替えられている。これらの側面は、実際、福島や周辺県で、真摯に長年に渡って農業や漁業に打ち込んで来た生産者や住民にとって、感じやすい部分であり、また彼らの思いが帰郷、復興、再開に向けて思いが募っているとき、ジャック・ロシャールの語る<住民参加型の復興>の思惑にスッポリと重なるのである。それこそが罠なのだ。原発事故後の様々な健康障害は、実は放射能ではなく、精神ストレス、経済的、社会的な様々な原因によるのであって、放射能によるものではない、というのが国際原子力ロビーの主要な主張なのである。つまり、放射能を免罪すること。これこそが,彼らの目的であり、それは真実を覆い隠すことで成立している戦略なのである。 次回その2では、ベラルーシで行なわれたエートス・プロジェクトがどうだったのかを見ていきたい。   [1] 日本財団は、歴史否定主義的な立場を取っており、南京虐殺、従軍慰安婦問題も否定している。放射能に対してもその悪影響はないとする否定主義の立場を取っており、そうした立場から、チェルノブイリへの医療協力プロジェクト(1991-1996年)も行なっており、重松逸造が議長を務めた国際チェルノブイリ・プロジェクトも前身だった笹川財団から基金が出ている。チェルノブイリ笹川協力委員会は、重松、長龍、山下各氏がメンバーの委員会山下俊一教授のチェルノブイリ調査への助成も笹川記念保健協力財団が出資している。東京財団は、その子財団。 参考:http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1999/00198/contents/002.htm

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