2013年3月7日木曜日
【原発】動燃による反対派つぶし「工作」の記録 ~「西村ファイル」~
http://blog.goo.ne.jp/humon007/e/872007a93a6fffa028a1dddf6444f6fb
(1)「週刊朝日」3月15日号は、段ボール箱5箱分の機密ファイルを紹介している。所有者は西村成生・動燃総務部次長。ただし、故人である。「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故(1995年12月)に係る「ビデオ隠し問題」を内部調査中、1996年1月13日に「謎の死」を遂げた。享年49。
山積みの「西村ファイル」には、原発や関連施設をめぐる地元住民や地元政界へのカネや接待、選挙での“暗躍”、反対派の市民運動家への露骨な“監視”などの「工作」が克明に記録されていた。
(2)岡山県と鳥取県の県境に近い人形峠は、1955年に日本で初めて天然ウランの鉱床が発見されると、原子燃料公社(後の動力炉・核燃料開発事業団、現在の日本原子力研究開発機構)が両県で採掘を始め、地元はウランブームに沸いた。
採掘されたウランは品質が採算ベースに合わないことが判明し、鉱山は10年ほどで閉鎖。動燃は人形峠事業所(現・人形峠環境技術センター)を残し、ウラン濃縮の試験プラントなどを営んできた。
1988年、この地が大きな社会問題になった。人形峠周辺の鉱山跡地に、行動を掘った際に掘り出した土などが野ざらしのまま放置され、そこから高い放射線量が計測されたのだ。ウラン鉱山のあった鳥取県東郷町(現・湯梨浜町)の方面(かたも)地区は、町や動燃に16,000立米のウラン残土の全面撤去を要求した。
残土の処分は容易ではない。動燃は何とか地区内に置いたまま処分しようとした。それには、地元の同意が不可欠だった。いかに動燃の意向に沿う住民を増やしていくか。動燃は「工作」を始めた。
(3)「西村ファイル」の「方面地区住民資料」によれば、方面地区の20世帯の住民について、①名前、②生年月日、③職業、④PVC(動燃)に対する理解、⑤人脈・本人に対する「工作」、⑥家族関係、⑦地権の有無、⑧備考・・・・の項目に分けて詳細に調べ上げた。まさに「思想・素行調査」リストだった。特に反対派住民は入念にマークしていた。
反対運動の中心になった榎本益美(77歳)に係る項目⑤では、「工作」方法を具体的に説明している。<社会党対策会議の○○(原文実名、以下同)、共同通信記者、市民グループとの関係を切ることであろうが、当面、本人を孤立させ相手にしないことが効果的である>・・・・動燃の「工作」は、一時的には成功した。
「資料」には、家族の勤務先や家庭事情まで詳細に書かれていた。その作成者は、動燃・人形峠事業所総務課長などを歴任した男(鳥取県倉吉市在住、72歳)で、彼が本社に送信したファックスが「西村ファイル」に残されている。
動燃は、都会から離れた小さな集落ならではの濃密な人間関係を巧妙に「工作」に利用しようとしていた。地域独特の本家、分家や養子縁組といった関係、地区の婦人会などを利用し、「工作」に使おうとした。「町議」の名も頻繁に出てくる。陰湿なのは、家族関係に加え、勤務先の上司などの上限関係で「圧力」をかけていた形跡があることだ。
(a)県職員・・・・<夫婦の勤務先である鳥取県の上司・幹部を利用する>
(b)農家・・・・<農協関係者の幹部による説得が必要>
(c)郵便局員/地元区長・・・・<郵政関係者(地元局長)、親せき等を動かし、区長としてもう少し積極的な態度をとるよう働きかける>
(d)地元大手バス会社社員/有力地権者・・・・<○○自動車を通じて圧力をかけるべきだ>
資料には、住民を見下した態度が滲み出ている。<当初は理解を示していたが、現在は必ずしもそうではない。口が軽く、役員の中でも考えが一貫していない>
(4)動燃職員が残土問題について説明に訪れた当時、科学的根拠や資料の提示を求めたが、科学的データで説得するというよりも、「なるべく穏便に収めたい」とごまかすことばかり。見え透いた懐柔策だった。【藤田省三・鳥取県会議員(自民党)】
動燃が抜き打ちで地区の人を集めて説明会を開いたことがあったが、「大丈夫だけぇ。安全だけぇ」と言うだけで、放射能の測定機器も持ってこない。機器は、市民グループが持ってきて初めて観たほどだ。【榎本益美】
「工作」は実を結ばず、動燃はウラン残土の撤去を約束したものの、撤去先をめぐって周辺自治体と紛糾。長年、地区に放置されたまま歳月だけ経った。2000年、住民らは鳥取県などの援助を得て旧動燃を鳥取地裁に提訴。2004年、最高裁で残土の撤去を命じる判決が確定し、特に放射線量が高い一部の残土は米国のウラン精錬所に移され、その他は145万個の煉瓦に加工されて搬出された。
(5)「西村ファイル」には、「原子力ムラ」のさらに深い闇をうかがわせる資料がある。
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