2012年9月13日木曜日

(福島県民に読んでほしい 松崎道幸医師からの意見書) http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-11541 ◆松崎道幸医師(深川市立総合病院 内科部長)からの意見書 できるだけ多くの福島県民に読んでほしいと思います。 まずは、その要約から <甲状腺障害> 1. 内外の甲状腺超音波検査成績をまとめると、10 才前後の小児に「のう胞」が発見される割合は、0.5~1%前後である。 2. 福島県の小児(平均年齢10 歳前後)の35%にのう胞が発見されていることは、これらの地域の小児の甲状腺が望ましくない環境影響を受けているおそれを強く示す。 3. 以上の情報の分析および追跡調査の完了を待っていては、これらの地域の小児に不可逆的な健康被害がもたらされる懸念を強く持つ。 4. したがって、福島の中通、浜通りに在住する幼小児について、避難および検診間隔の短期化等、予防的対策の速やかな実施が強く望まれる。 5. 以上の所見に基づくならば、山下俊一氏が、全国の甲状腺専門医に、心配した親子がセカンドオピニオンを求めに来ても応じないように、文書を出していることは、被ばく者と患者に対する人権蹂躙ともいうべき抑圧的なやり方と判断せざるを得ない。 ・ <呼吸機能 骨髄機能> 1. 福島県中通地方は、チェルノブイリの高汚染地区に匹敵する放射能汚染が続いている。 2. チェルノブイリの疫学調査から、そのような地区に長期間居住する子供たちに深刻な呼吸機能異常と骨髄機能異常が見られることが指摘されている。 3. 将来のあるこども達に起こるおそれのある不可逆的な健康被害を予防するためには、速やかに汚染地域から避難する必要があることは明白であり、それこそが痛苦のチェルノブイリ事故から我々が学び取るべき教訓である。 **********************            意見書 「今、福島の子どもたちに何が起こっているのか?」から抜粋      ―甲状腺障害、呼吸機能、骨髄機能を        チェルノブイリ事故等の結果から考察する―    松崎道幸(深川市立病院内科・医学博士)          2012年5月12日 2.甲状腺障害 【1.平均年齢が10 才の福島県の子どもの35%にのう胞が発見された】 福島第一原子力発電所事故の影響を明らかにするために実施中である「福島県民健康管理調査」における福島の子どもの甲状腺検診調査結果(本年4月26日発表分)(*)を概述します。 http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240125shiryou.pdf 発表された検査の実施状況と結果概要は別紙1の通りです。これによれば、甲状腺検診を受けたこどもの年齢分布は、0-5 才9826 名、6-10 才10662 名、11-15 才11466 名、16-18 才6160 名でしたので、平均年齢は10 才(小学4、5 年前後)と言うところです。 実際の検診所見をまとめると、次のようになります。 「結節」が1%、「のう胞」が35.1%でした。 福島県の乳幼児から高校生を対象とした調査で、甲状腺超音波検査による「のう胞」保有率が高いのか低いのかについて、過去に報告された調査研究成績をもとにして述べたいと思います。 【2.長崎県の7才から14才のこども250人中、甲状腺のう胞が見られたのは0.8%(2 人)だった(山下俊一氏調査)】 福島大学副学長山下俊一氏らのグループが2000 年に長崎県のこども(7~14才)250 人を、超音波で調べたところ、のう胞を持っているこどもは二人(0.8%)でした。 【3.甲状腺のしこりやのう胞は、生まれた時はほとんどゼロだが、5才過ぎから徐々に増え始め、20 才になると10 人に一人が甲状腺にしこりやのう胞が出来る(ニュー・イングランド・ジャーナルMazzaferri 氏論文)】 1993 年に発表された論文(Mazzaferri EL.他)によれば、主に米国人を対象に超音波検査や解剖検査で調べると、甲状腺の「結節nodule」(この論文では腫瘍とのう胞をまとめて結節と定義している)は、生まれた時はほとんどゼロですが、5才過ぎから年齢に比例して、徐々に増え始め、20 才になると10 人に一人が甲状腺にしこりやのう胞を持っている状態となっていました。 ●超音波検査または解剖による頻度。□触診による頻度)。また、「結節」の25%~35%が「のう胞」だったと述べられています。過去に放射線被ばくあるいは甲状腺疾患のない者における甲状腺結節の頻度。 触診と超音波検査・解剖検査による検出率の比較 10 才前後の子ども集団の甲状腺「結節」の頻度はせいぜい1~2%となります。そのうち25~35%が「のう胞」ですから、のう胞保有率は0.5~1%程度と考えられます。 【4.チェルノブイリ地域の18歳未満のこどもの甲状腺のう胞保有率は0.5%だった。(日本財団調査)】 福島大学の副学長山下俊一氏が、チェルノブイリ事故の5 年後から10 年後まで放射線被ばくの著しいチェルノブイリのゴメリ地域とその周辺で、のべ16万人のこどもの甲状腺を超音波で検査しました。 この調査では、「結節」と「のう胞」を分けて記載していますので、「結節」=充実性の腫瘍と言う意味になります。その結果、0.5%にのう胞が、同じく0.5%くらいに「結節(充実性腫瘍)」が見られたということでした。 【5.福島調査の「のう胞」保有率は、過去のどの調査よりも高率である】 以上の4つの調査成績を一覧表にまとめてみると、今回発表された「福島県民健康管理調査」の子どもの甲状腺検診の結果は、驚くべきものであることが分かります。三分の一のこどもの甲状腺に「のう胞」ができていたからです。 「のう胞」とは液体のたまった袋です。これがあるからと言って、直ちに甲状腺がんが起きる恐れがあるとは言えませんが、甲状腺の内側に何か普通とは違ったこと(ただれ=炎症あるいは細胞の性質の変化)が起きていることを指し示していると考える必要があります。 <検討対象事故による放射線被ばくのう胞保有率> 1 福島県0~18 才児(平均年齢10 才)  35% 2 長崎県7~14 才児          0.8% 3 米国等10 才児          0.5~1% 4 チェルノブイリ原発周辺18 才未満児 0.5% 【1の小括】 1. 内外の甲状腺超音波検査成績をまとめると、10 才前後の小児に「のう胞」が発見される割合は、0.5~1%前後である。 2. 福島県の小児(平均年齢10 歳前後)の35%にのう胞が発見されていることは、これらの地域の小児の甲状腺が望ましくない環境影響を受けているおそれを強く示す。 3. 以上の情報の分析および追跡調査の完了を待っていては、これらの地域の小児に不可逆的な健康被害がもたらされる懸念を強く持つ。 4. したがって、福島の中通、浜通りに在住する幼小児について、避難および検診間隔の短期化等、予防的対策の速やかな実施が強く望まれる。 5. 以上の所見に基づくならば、山下俊一氏が、全国の甲状腺専門医に、心配した親子がセカンドオピニオンを求めに来ても応じないように、文書を出していることは、被ばく者と患者に対する人権蹂躙ともいうべき抑圧的なやり方と判断せざるを得ない。 ・ 2.呼吸機能 サウスカロライナ大学疫学生物統計学部のスベンセン博士らのグループは、2010 年に、セシウムによる高汚染地域に住み続けたこどもたちの肺の働きが悪くなっていることを明らかにしました。 チェルノブイリ核事故被害を受けたウクライナの小児におけるセシウム137 曝露と呼吸機能の関連。スベンセン(サウスカロライナ大学疫学生物統計学部)他.Environ Health Perspect.(環境医学展誌)118 巻2010 年5 月号、720~5 ページ この調査では、18 才未満の415 名のこども(最多年齢8-9 才)の呼吸機能を1993 年から1998 年まで追跡調査しました。その結果、最もセシウムによる土壌汚染の高い地域(平均355 キロベクレル/m2)に住み続けていた子どもは、最も汚染の少ない地域(平均90 キロベクレル/m2)に住み続けていた子どもよりも一秒量が4~5%低下していることが分かりました。 一秒量とは、精一杯息を吸い込んだ後、一気に吐き出して、最初の一秒間に肺活量の何%を吐き出せるか、その比率を見たものです。小学生くらいの子どもなら、一秒間に3 リットル以上呼出できます。その量が4~5%低下すると言うことは、絶対量で100cc から150cc 低下すると言うことになります。 普通肺の働きは20 才前後が最良で、その後は年をとるにつれて、一秒量ならば、毎年20~30cc くらいずつ減ってゆきます。一秒量が150cc 減ると言うことは、5 年から7 年位肺が早く老化する、あるいは成長しきれなかったことを意味します。 ウクライナの355 キロベクレル/m2 の放射能汚染の土地に住み続ける子どもは、放射能汚染のない地域のこどもよりも、肺年齢が5 年以上早く老化することになります。現在の福島なら、どこが355 キロベクレル/m2で、どこが90 キロベクレル/m2でしょうか。 これは文部省が昨年作った土壌汚染の分布図です。 紺色■の部分が60~100 キロベクレル/m2で、中通りの山すそを縁取るように分布しています。この論文で言う「低汚染地域」に当たります。明るい水色■の部分が300~600 キロベクレル/m2でウクライナの「最高度汚染地域」に当たります。福島市と郡山市など中通りのすべての地域は、「低」と「最高」の中間の汚染度になっています。 したがって、現在福島の浜通りと中通りに住んでいる子どもは、肺の働きが数年早く低下(老化)するおそれがあることになります。さらに、この論文では、低汚染地域を比較の基準としているため、被ばくの影響を少なく見積もっていることになるので、実際に起きる健康被害はもっと大きくなることを覚悟する必要があります。 ・ 3.骨髄機能 次にお示しする論文は、高度汚染区域に住み続けたこどもでは、放射線被ばくで血液を作る働きが落ちて、白血球が減ったり貧血になると言うデータです。 これは2008 年に、ウクライナ医学アカデミー放射線医学研究センターのステパノーバ博士が環境医学誌に発表した論文です。ウクライナのジトミール、ナロジケスキー地区に住む1251 名の子どもの血液を事故の7 年後から11 年後まで追跡調査したものです。 ステパノーバ(ウクライナ医学アカデミー放射線医学研究センター)他.チェルノブイリ事故による放射線汚染がウクライナ・ナロージケスキー地区の小児の赤血球数、白血球数、血小板数に及ぼす有害影響.環境医学誌.7 巻2008年5 月号、21 ページ~. それによると、汚染の高度な地区(350~879 キロベクレル/m2)の子どもは、汚染の少ない地区(29~112 キロベクレル/m2)より20%近く白血球数が少ない(5810 対6870)ことが分かりました。血小板数と赤血球数も5~10%ほど少なくなっていました。 現在の福島で言うと、前掲地図で紺色■の中通り周辺が低汚染地域、緑色■の川俣町(飯館村外縁)周辺が高度汚染地域にあたります。 したがって、この論文から医学的に想定しなければならないことは、現在福島の浜通りと中通りに住んでいる子どもは、血液を作る骨髄機能が長期間妨害されるおそれがあるということです。白血球が減ると、細菌やウイルスに対する抵抗力が減ります。赤血球が減ると貧血になりやすくなります。血小板が減ると、怪我をした時に血が止まりづらくなります。 しかも、もしも何か別の病気や肉体的ハンディを持っている子どもさんが、現在の福島中通り・浜通りに住んでおられる場合には、この程度の骨髄機能への影響によっても、もともとの病気やハンディがさらに悪化する恐れを考慮する必要があります。 さらに、この論文では、低汚染地域を比較の基準としているため、被ばくの影響を少なく見積もっていることになるので、実際に起きる健康被害はもっと大きくなるだろうと覚悟をする必要があります。 ・ 【2、3の小括】 1. 福島県中通地方は、チェルノブイリの高汚染地区に匹敵する放射能汚染が続いている。 2. チェルノブイリの疫学調査から、そのような地区に長期間居住する子供たちに深刻な呼吸機能異常と骨髄機能異常が見られることが指摘されている。 3. 将来のあるこども達に起こるおそれのある不可逆的な健康被害を予防するためには、速やかに汚染地域から避難する必要があることは明白であり、それこそが痛苦のチェルノブイリ事故から我々が学び取るべき教訓である。 以 上

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