2012年9月23日日曜日

外交なき政権の、選挙対策としての領土紛争(1-3) ◆ http://archive.mag2.com/0001332092/index.html 1 外交なき政権 民主党は、最初から最後まで、国内政局に終始し、マニ フェスト裏切りを実行してきた。 民主党政権は、わが国の国益に沿って、尖閣問題を中国 と話し合い、解決を準備してこなかった。外交なしのそ のツケが、石原慎太郎、前原誠司、野田佳彦の動きで一 挙に露出してきた。 民主党の議員は中国・韓国の政治家たちと交流している のだろうか。「外国視察」の対象も、この2国は国家戦 略として出かけてゆかねばならないほどに、とくに重要 である。 大臣が国際会議でたまに会って話すのでは、意思疎通は 図れないように思われる。大切な中韓との政治のパイプ が、小沢一郎なき野田政権では切れているのである。こ れは意識的に作ってゆかねばならなかった性格のもので ある。 しかも野田らの考えていることは、ここにいたっても政 局である。選挙での、消費税増税と原発再稼働の争点隠 しに、韓国李明博(イ・ミョンバク)大統領の竹島上陸 や、尖閣を利用しようとしている。 紛糾する外交・領土で、消費税増税や原発、オスプレイ、 TPPの争点化を隠す。選挙の争点を外交・領土にすり 替える。消費税増税の廃止(凍結)を掲げる国民の生活 が第一を、マスメディアから消し、日本維新の会に票を 集める。その策動が、マスメディアを総動員して行われ ている。 このようにして国民はだまされ、民・自・公と日本維新 の会に投票する。そのような危険な企てが進行している。 中国敵視の情宣は、中国に信頼されている政治家、たと えば小沢一郎などを間接的に排除する動きへとこれから 繋がってゆく。 2 他国のメディア 今回の尖閣をめぐる動きで、日本のマスメディア、とり わけテレビの悪質さが明確になったように思われる。け っして国民を押さえない。むしろ中国に敵意を持たせる べく国民を煽る。 テレビが、尖閣ネタの反中キャンペーンと、国民の生活 が第一潰しの、橋下新党盛り上げで、フル回転している。 尖閣を仕掛けたのは日本である。この結果を招いた前原、 石原、野田を批判し、インタビューしないと、ジャーナ リズムにならないだろう。マスメディアに権力を監視す る自覚がない。本質は大本営発表を降ろすだけの御用メ ディアであり、まったく戦前と体質は変わっていない。 テレビに持ち上げられている橋下は、テレビが作った、 弱者切り捨て、福祉切り捨て、原発推進、消費税増税推 進、対米隷属の切り札にすぎない。 ところで中国国内のデモの沈静化と同時に、まるでそれ を見越したようにオスプレイが岩国を離陸した。仕組ま れているのだ。他国の内政問題も、現在は、国際的な既 得権益支配層の協働・排除の目的のもとに仕掛けられて いる。消費税増税、原発、ACTA、オスプレイ、TP Pと皆そうである。 日本一国だけで決めている大きな政策などひとつもない。 すべて外国、とりわけ米国が絡み合い、ジャパンハンド ラー(アーミテージ(元国務省副長官)、キャンベル (国務次官補)ゲーツ国防長官、カーチス・コロンビア 大教授、マイケル・グリーン)らが決めているものばか りである。 3 石原が都で購入を検討 2012年4月16日、訪米中の石原慎太郎東京都知事 は、ワシントンで講演した。そして東京都が沖縄県・尖 閣諸島を購入する、と記者団に語った。 石原が尖閣や竹島の領有権で騒ぐ前に考えてほしいこと がある。それは本物の憂国が、対米自立に向かうという ことだ。現在のわが国で、民族の真の矜恃が試されるの はそこなのだ。 オスプレイで米国に何もいえない政治家が、韓国や中国 だけに啖呵を切ってみせるのは、おかしいのである。 沖縄も、日本固有の領土である。横田基地もわが国固有 の領土だ。石原は、尖閣の火遊びをやめて、都知事とし て横田基地の返還を米国に求めるべきだ。尖閣にゆく元 気があるのなら、横田でハンガーストライキなど簡単だ ろう。 石原の憂国の嘘は、米国に対しては向かわない。中国に 対してのみ、極端に国民を煽動してみせる。 それにしても、日本のマスメディアは、対米隷属の人間 は叩かない。だから尖閣紛争に関して、きっかけを作っ た石原も前原も野田も無風である。腐った、まさに他国 のメディアである。 もし尖閣購入を、対米自立を唱える政治家がやっていた ら、今頃は、連日、袋叩きに遭っていただろう。 つまり言葉の本来の意味において、日本にジャーナリズ ムは存在しないといっていい。つまりわが国独自の、国 益を主張するマスメディアなどないのである。 (「その2」へ続く) 4 国で購入 野田は、9月10日に、尖閣諸島の国有化に関する関係 閣僚会合を開いた。そこで、魚釣島、南小島、北小島の 3島を国有化する方針を決めた。購入金額は20億5千 万円であった。 藤村修官房長官は、10日の記者会見で、こう語った。 この理由付けが子供だましで、いかにも嘘吐きの政権ら しい。 「所有者が売却したい意向を示した。第三者が買えば平 穏かつ安定的な維持管理の目的が果たせなくなる」 まるで中国のために、過激な石原ではなくて国が買って やったのだ、といわんばかりである。こんな子供だまし が領土問題で通用する筈がない。領有で揉めている領土 なら、個人より都の購入が、国ならそれ以上に、相手国 を刺激するのは当然ではないか。 現在の日本の閉塞と減衰の中心に、政治家と官僚、企業 家、学者、マスメディアの想像力の欠如があるように思 われる。消費税増税、原発、TPPとすべてそうである。 こう動いたら、こうなる。その想像力が最も必要なのは 尖閣だ。 たとえば自民党の石原伸晃である。 9月11日夜のテレビに出演して、尖閣諸島の国有化に 関連し、中国は「攻めてこない。誰も住んでいないんだ から」と語った。この程度の認識で、総理になって、親 父の慎太郎に煽られて、見当外れの戦争をされたら、わ たしたちはたまったものではない。 野田らが、これまでの棚上げ論を勝手に反故にして強引 に国有化したのだから、中国もこれから遠慮なく国有化 を宣言して上陸するだろう。中国が上陸して、軍艦も繰 り出して睨み合いが続けば、そこで中国の実効支配の既 成事実が形成される。安保条約の適用範囲ですらなくな ってしまうのである。 石原伸晃は、中国は尖閣を攻めません、といったかと思 うと、社会保障費の削減に尊厳死がある、と語った。こ の頭の悪さに匹敵するのは、野田の嘘吐きぐらいだろう。 橋下のアジテーションも、かわいいぐらいだ。長老たち が伸晃をかわいがる筈だ。昔からデキの悪い子ほどかわ いいというから。 5 APECでの胡錦濤国家主席の警告 9月9日になった。ウラジオストクで開かれたアジア太 平洋経済協力会議(APEC)で、野田は胡錦濤国家主 席と言葉を交わす機会があった。これが大きなターニン グポイントになった。もし野田が普通の政治家であった なら、やらなかったことを、あまりの愚かさ(何しろデ フレ下で、財務官僚のために消費税増税をやるのだか ら)ゆえに、やってしまったのである。 胡錦濤国家主席は、野田に対し、こう語った。 「中日関係は釣魚島(尖閣諸島の中国名)問題で厳しい 局面を迎えている。日本側のいかなる島の購入計画も不 法かつ無効で、中国は断固反対する。日本側は事態の重 大さを十分認識して誤った決定をせず、中国側とともに 両国関係発展の大局を維持してほしい」 野田はこの「事態の重大さを十分認識して」という胡錦 濤の警告を正確に理解することが出来なかった。それで 警告を無視してしまったのである。 永田町でやっている純粋野党(自民党と公明党を除いた 野党を、そういうらしい)無視、国民無視の態度が、外 国に対しても出てしまったのである。米国にさえ頭を下 げておけば、この世に恐いものなどないと勘違いしてい るのかもしれない。 6 愚か者の侮辱 APECから帰った2日後の、9月11日に、野田は、閣 議で尖閣諸島の魚釣島、南小島、北小島の3島を国有化 することを閣議決定した。 政府は午前中に地権者と契約書を交わし、国有化した。 完全に胡錦濤国家主席の警告は無視されたのである。 ここには政治も外交もない。国会でやっている独裁を他 国に当てはめただけだ。胡錦濤国家主席の警告は、まる で「反原連」と会って、最初から聞く気もない話を、た だ直接民主主義のセレモニーとして聞き流した程度の意 味しか持っていなかったのである。 野田が、尖閣諸島を国有化する方針を示したタイミング の悪さには、世界中が一驚したにちがいない。 これは9・18(満州事変の発端となった柳条湖事件)の 1週間前である。かてて加えて9月29日は両国にとっ て大切な日中国交回復40周年だ。10月に入れば10 年に一度の中国共産党大会がある。まさに愚か者が侮辱 してみせたのである。 野田や玄葉には政治や外交以前に、人間的な知恵と感性 が皆無だ。無能なうえに鈍感ときたら、何でもやれる。 今回の尖閣紛争は、日本の政治・外交が崩壊しているこ とを世界に発信した。 繰り返すが、領有権で棚上げしていた領土の国有化宣言 が、中国にとって「国恥の日」とされる屈辱の記念日の 1週間前である。そして日中国交正常化40周年記念行 事、10年に一度の中国共産党大会の直前である。 このタイミングで尖閣の国有化を、しかも胡錦濤の警告 を無視して発表するとは、普通、どの国のトップも、オ バマでも配慮してやらないことである。中国をよく知る 優秀なブレーンがやらせないのだ。 これまで中国が、周恩来・?小平といった建国の大先輩 がやってきたことだから、「棚上げ論」を認め、従って きた。その縛りを日本自らが捨てた。これほどの外交的 愚策は珍しい。 (「その3」へ続く) 7 経済的な報復 中国で猛烈な抗議デモが起きた。そのデモが沈静化する と、今度は中国の経済的な制裁が始まった。 石原慎太郎は21日の定例会見で、自分が尖閣紛争のき っかけを作ったくせに、経済面に影響を出したことにつ いて「私は日本を第2のチベットにしたくない。日本人 はサムライの気持ちを取り戻したらいい」と語った。 対米隷属の、第2の日本になりたくない、原発事故の日 本にはなりたくないと思っている外国は多い筈だ。それ にまず石原自身がサムライになったらどうなのか。尖閣 に上陸するという勇ましいかけ声はどうしたのか。昔か ら、武士に二言はない、というではないか。 それ以上に呆れたのは、野田が19日夜のテレビ朝日の 番組に出ていった言葉である。 尖閣諸島国有化への中国国内の激しい反発について、こ う語ったのだ。 「一定の摩擦が起こることは考えられた。ただ、この規 模は想定を超えている」 「様々なチャンネルを通じて(中国側と)コミュニケー ションを図っていきたい。特使も含めて検討したい」 つまり見通しも甘ければ、戦術も戦略もなく、ただ思い つきでやったのである。かりにコミュニケーションがと れたところで、APECで胡錦濤国家主席から直接にい われた以上のことは聞き出せないのだ。 8 狂った政権 愚かな政治の次にくるのは、狂った政治だ。それが永田 町を席巻している。尖閣問題も、野田にやらせておいた ら、どこまで調子に乗るかわからない。歴史は、戦争が その国の最も優れた知性の判断で始まったのではないこ とを教えている。多分に偶然が左右して、まったく愚か な人物の判断で始まっている。 米国は尖閣への日本の実効支配を認めているが、領有権 は認めていない。米国は尖閣を安保第5条の適用範囲と いう。これは、わが国の、尖閣実効支配を認めていると いうだけのことだ。その現実を追認しただけのことで、 それ以上でも以下でもない。 中国との領有権を巡る軍事衝突が起きたとき、米国は参 戦しない。米国議会が、領有権を認めない無人島のため に、そして何度も領土問題では中立を表明した問題で、 参戦を決定することはないのである。しかも相手は最大 の米国債の購入国ではないか。 まして米国の不参戦は「日米安全保障協議委員会(「2 +2」)の開催」(平成17年10月29日)で、「島 嶼部への侵略」に米軍出動のないことが、明確に規定さ れている。 「日本は、弾道ミサイル攻撃やゲリラ・特殊部隊による 攻撃、島嶼部への侵略といった、新たな脅威や多様な事 態への対処を含めて、日本を防衛し、周辺事態に対応す る」 (引用終わり) つまりわが国の「島嶼部への侵略」(尖閣諸島)に対し ては、日本が自衛隊で対処するとなっているのだ。 もしここで中国が尖閣に上陸して島を制すると、島の管 轄支配も消えて、実効支配は中国に移る。自動的に尖閣 は安保条約の対象外になるのである。 発端が石原・野田の尖閣購入にあることは、明確だ。民 間が苦労して築き挙げた友好を、対米隷属の政治とメデ ィアが壊す。いつものパターンだ。彼らの大好きな消費 税増税のためには景気浮揚が必要だ。そのためには中国 との友好が必須である。こんなこともわからない連中が 国政の舵を取っているのだ。この国の未来を考えると、 暗澹としてくる。 ただ、絶望することはない。いや、現在のわたしたちは、 この国土で壊れた原発ともみ合って生きてゆかねばなら ない子どもたちのために、絶望を禁じられているのであ る。

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