2013年4月8日月曜日

(山下俊一の3月11日英語基調講演の完全書き起こし、および和訳 ) http://fukushimavoice.blogspot.de/2013/04/311.html?spref=tw 米国放射線防護協会 第49回年次大会 第10回ウォレン・K・シンクレアー基調講演. 「福島原子力発電所事故と総合的健康リスク管理」 山下俊一 2013年3月11日 米国メリーランド州ベセスダ  動画 Yamashita’s lecture at the March 11 NCRP annual meeting http://echo.colostate.edu:8080/ess/echo/presentation/d6ddb666-85bd-48a3-8d83-a691910906be パワーポイント資料 PowerPoint slides. https://docs.google.com/file/d/0B3fFCVXEJlbvWmJRTlZXSTJhS28/edit 山下氏の英語は、以前にも2011年3月22日の外国人記者クラブでの英語記者会見を部分的に書き起こした事があります。 http://fukushimavoice-eng.blogspot.com/2012/08/analysis-radiation-health-risk.html ここでの英語も、また言っている内容も、ひどいものでした。 今回の英語基調講演では、折しも3月11日と言う日に米国まで来て、特に福島県民には心外であろうと思われる内容を、このような自己流の英語で全く自分視点から喋ったと言う事実に呆れてしまいました。そして、聞き取りにくい英語を聞き込めば聞き込む程、その内容のひどさに怒りを感じました。これは日本人全員が知るべきだと感じました。 これほどでたらめでいい加減な英語で微妙な問題をわけの分からない状態に落とし込み、しかも放射線の影響と言うことは断固として否定している。山下氏に批判的な人ばかりではなく、彼に好意的な人も、山下氏の英語講演の英語力および論理性のなさがどれほどひどいかをよく認識していただきたいと思います。 個人的な印象としては、この講演中に山下氏が何を喋っているのかはっきりと把握した人は会場では数少なかったのではないかと思います。聴衆に最も伝わったことは、どれほど一般人やメディアが無知であるか、どれほど福島県での放射線の影響が少ないか、どれほど福島県の方々における精神的ストレスが大きいか、などだと思います。 スライド2 直訳:・・・多くの国々や国際機関が、特に米国からトモダチ作戦が東日本大震災のすぐ後に、日本人には大変良い結果でした。 スライド2 意訳:・・・多くの国々や国際機関が、特に米国からトモダチ作戦が東日本大震災直後に援助に来てくれて、日本は大変助かりました。 スライド3 直訳:今日は、私は、福島原子力発電所事故と総合的な健康リスク管理のお話をしたいと思います。ジョンが私の経歴を紹介するように、私は長崎出身。ご存知の、広島・長崎。私達は長い間、被爆者生存者を助けていました。そして私は、1991年からチェルノブイリ・プロジェクトに深く関わっています。 福島事故のすぐ後に、私は、緊急被ばく医療の手助けのためだけでなく、県民の医療とさらに健康管理を設立するために、長崎大学から福島へ派遣されています。故に、今日の私の講演は、チェルノブイリの事と福島県の健康管理調査の問題に焦点を当てるだけにすぎません。 スライド3 意訳:今日の講演では、福島原子力発電所事故と、総合的な健康リスク管理についてお話をしたいと思います。先ほどジョンから私の経歴をご紹介頂きましたが、私は、皆様も広島・長崎の原爆でご存知の長崎の出身です。私達は長崎でずっと被爆者の支援をしております。また、私は、1991年以来、チェルノブイリ・プロジェクトに深く関わらせて頂いています。 福島原発事故直後に、私は、緊急被ばく医療の手助けのためだけでなく、県民への医療と健康管理の設立のために、長崎大学から福島医大へ派遣されました。故に、今日の私の講演では、チェルノブイリでの状況と福島県の健康管理調査の事に焦点を当てる事に致します。 スライド4 直訳:皆さんがご存知のように、健康影響は単に急性影響と晩発性影響によって分類されています。線量に依存します。線量の重要性は分かっています。どれ位の線量受けたか?しかし、一般的に、人々、彼らは知りません。例えば、原子炉事故は、急性放射線のような原爆被爆者のデータに全く等しくありません。これは福島での現状において混乱するかもしれません。なので、確定的影響の区別について、注意深く考える必要がありますが、それは大量の放射線被ばくの一種類です。しかし今日は主に低線量の放射線の影響、いわゆる確率的影響についてお話します。 スライド4 意訳:皆様がご存知のように、放射線被ばくによる健康への影響は、単に、急性影響と晩発性影響に分かれています。この影響は、線量に依存しますが、線量の重要性というのは、ご存知だと思います。被ばく線量はどの位だったかと言う事が問題となりますが、一般的に申しまして、分からない場合が多いのです。例えば、原子炉事故というのは、急性被ばく症がほとんどである、原爆被爆者のデータと同じでは、全くありません。これは福島県の現状においては、混乱を招くかもしれません。そのため、被ばく量が多い場合に起こる確定的影響を区別するということを注意深く考慮する必要があります。しかし、今日は、いわゆる確率的影響である、低線量被ばくについてお話させて頂きます。 スライド5 直訳;しかし、一般の人に、確率的影響は何かを説明するのは大変困難です。長い間でさえ、放影研、放射線影響研究所広島・長崎は、原爆被爆者のデータのために大変熱心に研究をし、また、私達はチェルノブイリでも長い間研究をしましたが、これは低線量の疫学研究の限界が存在します。その意味は、放射線誘発性の癌の直接的な証明がないために、不確かさのためのリスク評価への貢献に科学が限定されているのです。 スライド5 意訳:しかしながら、一般の人に、確率的影響が何かと言う事を説明するのは大変困難です。放影研(放射線影響研究所)は、広島・長崎で長期間、大変熱心に原爆被爆者のデータの研究を続けており、私達もチェルノブイリで長い間研究をしています。しかし、低線量被ばくの疫学研究の限界というものが存在します。放射線誘発性の癌の直接的な証明が存在しないために、不確かさに関するリスク評価への科学の貢献にも限界があるのです。 スライド6 直訳:しかし、私達は、放射線疫学によってとても良いデータを既に知っています。特に、今日は、私は、甲状腺癌の発癌現象に集中したいと思います。若い年齢の甲状腺への放射線の曝露は、外部被ばくか内部被ばくにより甲状腺癌と関連した、大抵の明らかに定義された環境因子であり、この定義は原爆被爆者とまたチェルノブイリにおいての大規模なコホート研究に基づいています。これらの2つのスライドは、外部か内部による甲状腺線量と甲状腺癌の相対リスクとの相関関係を示しています。シーベルトという単位があり、外部でも内部でも同等の生物学的影響を意味するので、大変似た傾向があります。そのため、100ミリシーベルト以上では、線量反応的に甲状腺癌が増加するのがわかっています。 スライド6 意訳:しかし、放射線疫学によって大変良いデータが分かっています。特に今日は、甲状腺癌の発癌現象に集中したいと思います。幼少時の甲状腺の放射線被ばくは、外部被ばくと内部被ばくのどちらにおいても甲状腺癌と関連した最も明らかに定義された環境因子です。この定義は、原爆被爆者とさらにチェルノブイリにおける大規模なコホート研究に基づいています。この2つのグラフは、外部被ばくと内部被ばくそれぞれによる、甲状腺被ばく線量と甲状腺癌の相対リスクとの相関関係を示しています。シーベルトと言う単位が使われていますが、シーベルトは外部被ばくでも内部被ばくでも同等の生物学的影響を表すために、この2つのグラフでは大変似た傾向が見られます。100ミリシーベルト以上の被ばく量では、線量に比例して甲状腺癌が増加するのが分かっています。 スライド7 直訳:私の講演の半分は、何を本当に私達がチェルノブイリから学んだのか、そしてチェルノブイリから学んだ教訓をどのように福島に適応するかに集中したいと思います。大変悲しいことに、1986年のチェルノブイリ事故時には、冷戦の時代でした。世界は東と西に分かれていました。これは本当に人災です。そして大変不幸なことに、短寿命核種の放射性ヨウ素に対する公共の防御とさらに大きな内部被ばくは、その後、放射性セシウムによって起こりました。どちらも、食物連鎖と飲み物を通してであり、禁止もコントロールも、あまり良くされませんでした。そして、それから、最終的に、1991年12月に旧ソ連は崩壊しました。人々は、チェルノブイリからとても苦しみました。私達が1991年に研究に行った時、心理社会学的および精神的な結果の影響はとても大きく、だから、チェルノブイリ内では、混乱と神話がありました。私達は、たくさんの事を学びました。 スライド7 意訳:この講演の半分では、チェルノブイリから実際に何を学んだのか、そしてチェルノブイリからの教訓をどのように福島で活かせることができるのかと言うことに集中したいと思います。大変悲しい事に、1986年のチェルノブイリ事故当時は冷戦時代であり、世界は東西に分かれていました。これは本当に人災でした。そして、大変不幸なことに、短寿命核種である放射性ヨウ素からの公衆の防御が実行されず、後に放射性セシウムによる、さらに大きな内部被ばくが起こりました。これは両核種とも、放射能汚染された食物や飲み物の流通の禁止もコントロールも不十分であったため、飲食により起こりました。そして、1991年12月に、結局旧ソ連は崩壊しました。チェルノブイリ事故により、人々は大変苦しみました。心理社会学的および精神的影響が多大であったあまり、私達が研究を行った1991年には、チェルノブイリ近辺は混乱と噂話で満ち溢れていました。多くの事を学びました。 スライド8 直訳:皆さんがご存知のように、これはヨーロッパ全地域を放射性セシウム137が汚染した地図を日本と、日本の地図と比較したものです。福島事故直後、福島がチェルノブイリのようになるかと、人々は心配し過ぎていました。しかし、それは正しくありません。もちろん、チェルノブイリと福島の間には大きな違いがあります。しかし、チェルノブイリと福島には、とても似た点もあります。いわゆる、心理社会学的と精神的影響です。大変悲しい事に、私達は現在、福島では、このような混乱の真ん中にいます。 スライド8 意訳:これは、皆さんも見覚えがあると思う、ヨーロッパ全域の放射性セシウム137の汚染分布図に、日本地図を当てはめたものです。福島事故直後、福島がチェルノブイリのようになるのではないかという懸念が過剰にありました。しかし、その懸念は間違っています。もちろん、チェルノブイリと福島の間には大きな違いがありますが、また、とても似た部分もあります。それは、いわゆる、心理社会的および精神的影響のことです。残念ながら、現在の福島での状況は、このような混乱の真っただ中にあります。(訳者注:できる限りの意訳をしても、文章の意味に整合性がないように思える。) スライド9 直訳:これは、UNSCEAR2008で報告されたチェルノブイリ付近の学童と中高生の甲状腺の平均推定被ばく線量の地図。チェルノブイリ事故は1986年に起こったけど、このようなスライドは20年以上後に出る。なぜなら、甲状腺への放射性ヨウ素は検査して評価するのが大変難しかったからです。この地図によると、この地域で苦しんだ子供達の平均線量は約500 mSvでした。これらの曝露では、放射線の晩発的影響を考慮するのがとてもとても大事。 スライド9 意訳:これは、UNSCEAR2008で報告された、チェルノブイリ付近の学童と中高生における甲状腺の平均推定被ばく線量を示した地図です。チェルノブイリ事故は1986年に起こりましたが、このようなデータは、その後20年以上経つまで出て来ませんでした。その理由は、放射性ヨウ素による甲状腺の被ばく量を調べるのは大変困難だからです。この地図によると、この地域で被ばくした子供達の甲状腺の平均推定被ばく線量は約500mSvでした。この被ばく量においては、放射線の晩発的影響を考慮するのが大変重要です。 スライド10 直訳:後で出てきたそういった種類のデータによると、そして私達はまた、1990年、1992年に、小児甲状腺癌の急増に出会いました。これは主にベラルーシのデータを表し、14歳以下、15−19歳、20−24歳。そして、年が過ぎるにつれ、小児甲状腺癌のピークが乳幼児、中高生、そして青年へと移りました。甲状腺癌を発病した子供達の年齢のターゲットは10歳以下だから。特に5歳以下。なぜなら、後に、私達は、私達の子供達がチェルノブイリ事故直後に汚染された牛乳を飲んだと気づいたから。 スライド10 意訳:後に出たデータなどにより、1990年から1992年にかけて小児甲状腺癌が急増したことも分かりました。このグラフはベラルーシのデータからですが、14歳以下、15−19歳、そして20−24歳の3グループにおける甲状腺癌の発症率の推移を表しています。時の推移と共に、小児甲状腺癌発症のピークが乳幼児から中高生や青年と、もっと高い年齢に移行したのが分かります。甲状腺癌を発症した子供達の年齢は、事故当時10歳以下、特に5歳以下が多かったからです。その理由は後で分かったのですが、子供達がチェルノブイリ事故直後に、放射性ヨウ素で汚染された牛乳を飲み続けていたからなのです。 スライド11 直訳:しかしながら、さっきのUNSCEARデータのスライドで言ったようい、放射性ヨウ素による真の甲状腺被ばく量の評価はほぼ不可能です。半減期が8日のため、直ちに消えました。1991年にチェルノブイリ入りした時、放射性ヨウ素は存在しません。だから小児甲状腺癌の発症率を当時0歳から3歳と、その後の事故直後の誕生後の年と比べました。大変興味深いことに、事故の時に生まれた子供達、0歳から3歳は、甲状腺癌が頻繁です。しかし事故後1年後には甲状腺癌の増加は見られませんでした。だから、これはまた別の直接的証明ですが、しかし、甲状腺癌が放射性ヨウ素によって起こるかもしれない間接的証明です。幸運にも、彼らはまだ放射性状態の汚染で住んでいますが、しかし、この子供達には他の大きな癌は増加がありません。しかし、福島では、人々が放射性ヨウ素のことを心配し過ぎて、また、さらに、放射性セシウムがどんな癌でも起こすかもしれません。私達は、チェルノブイリに基づいたそういうデータを否定しますが、しかし、一般の認識、いわゆる誤解が、日本全国にはびこりました。 スライド11 意訳:しかしながら、先ほどのUNSCEARデータのスライドについて述べましたように、放射性ヨウ素による甲状腺の実際の被ばく量の評価は、放射性ヨウ素の半減期が8日のためにすぐに消えてしまうので、ほぼ不可能に近いのです。私達が1991年にチェルノブイリ入りした時には、放射性ヨウ素は既に存在していませんでした。そのために、私達は、小児甲状腺癌の発症率を、事故当時に0歳から3歳だった子供達と、事故後に生まれた子供達の間で比較しました。大変興味深いことに、事故当時に既に誕生していて0歳から3歳だった子供達では甲状腺癌の頻度が非常に高かったのです。しかし、事故後1年後に誕生した子供達では、甲状腺癌の増加は見られませんでした。故に、これは、直接的な証明ともなりますが、甲状腺癌が放射性ヨウ素によって引き起こされるという間接的な証明ともなります。この子供達はまだ放射能汚染の状況下で暮らしていますが、幸いにも、他の癌の顕著な増加はありません。しかし福島の住民は、放射性ヨウ素やまた放射性セシウムがどんな癌でも引き起こすのではないかと過剰に心配しました。そのような可能性は、私達は、チェルノブイリの知見に基づいて否定したのですが、それにも関わらず、いわゆる誤解という一般的な認識が日本全国にはびこってしまいました。 スライド12 直訳:ケース・コントロール研究の他の共同プロジェクトによると、甲状腺癌の増加は、明らかに放射性ヨウ素の線量責任的に表されています。これらのデータは、米国とベラルーシ、そして米国とウクライナのコホート研究によって最近確認されました。どれだけの甲状腺量を受けたかということの線量反応性を理解すること、これは、本当に大切です。 スライド12 意訳:他のケース・コントロール共同研究によると、甲状腺癌が放射性ヨウ素の線量反応的に増加するのが明らかにわかります。このようなデータは、近年、米国・ベラルーシ、そして米国・ウクライナのコホート研究によって確認されています。甲状腺被ばく量の線量反応性を理解することは本当に大切です。 スライド13 直訳:チェルノブイリのデータと比べて上のパネルでは、約500 mSvの甲状腺被ばく量の線量に平均したと言及しました。日本では、幸運にも、事故後間もなくの3月24日から30日に、180人の子供達がヨウ化ナトリウムカウンターで直接測定されましたが、ほとんど全員が1 mSv以下でした。だから、これはとても良いニュースです。しかし、この子供達の数は少な過ぎます。福島から避難させられた子供達を注意深く追跡する必要があります。 スライド13 意訳:このスライドの上の方のチェルノブイリのデータをご覧下さい。先ほど申しましたように、チェルノブイリでの甲状腺被ばく量は平均して500 mSvほどでした。日本では、事故後間もなく、3月24日から30日の間に、180人(訳者注:1,080人を言い間違えている。)の子供達がヨウ化ナトリウムカウンターによる甲状腺被ばく量測定を受けましたが、幸運にもほとんど全員の被ばく量が1 mSv以下でした。これは、とても良いニュースです。しかし、このサンプルサイズは小さ過ぎます。福島から避難さされた子供達を注意深く追跡調査する必要があります。 スライド14 直訳:そして、また別の重要な要因は甲状腺でのヨウ素濃度です。福島とチェルノブイリは全く異なります。チェルノブイリの土地では慢性的にヨウ素が欠乏している地域があり、そしてそれから放射性ヨウ素を受け取りました。しかし、福島では福島に比べて、そのような種類の甲状腺ヨウ素線量で、既に飽和しています。なのでヨウ素はまた別の重要な要因です。あいにく日本では、そのような種類のヨウ素の甲状腺ブロッキングは、日本政府により効率的に投与されませんでした。しかし、線量はとても小さいです。だから、甲状腺への放射性ヨウ素はあまり心配しなくてもよいのです。 スライド14 意訳:そして、また別の重要な要因は甲状腺におけるヨウ素の濃度ですが、福島とチェルノブイリでは全く状況が異なります。チェルノブイリの土壌は慢性的にヨウ素が欠乏していますが、そこに放射性ヨウ素が降下しました。しかし、福島の土壌は、福島の住民のヨウ素による甲状腺被ばく量と比較して、既にヨウ素で飽和されています。(訳者注:この文章は、いくら意訳しても意味が通じない。おそらく言いたい事は、「チェルノブイリと比較して、福島の土壌はヨウ素で飽和しており、人々の体内でヨウ素が欠乏していないために、放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれる可能性が低い」ということだと思われる。)あいにく日本では、安定ヨウ素剤の投与による甲状腺ブロッキングは、日本政府によって効率良く実施されませんでした。しかし、放射性ヨウ素による被ばく線量は大変小さいので、甲状腺被ばくに関しては、あまり心配する必要がありません。(訳者注:このスライド14の表では、土壌におけるヨウ素濃度〈右軸〉と安定ヨウ素剤投与の有無〈左軸で上が無し、下が有り〉の異なる条件下における甲状腺癌のリスクが表されている。) スライド15 直訳:ベラルーシ、ウクライナとロシアを含む三ヶ国によると、子供甲状腺癌の増加の同じ傾向が報告されています。違う年齢グループ、学童、中高生と青年です。三ヶ国まとめたものは、また、今は甲状腺癌のピークが学童から中高生に、そして最終的には青年に移ったのを示しました。チェルノブイリ事故直後に一度被ばくをしただけで、特に小さな子供にとって、リスクは続きました。このような種類の放射線被ばく由来の甲状腺癌の生物学的影響のメカニズムを解明する必要があります。 スライド15 意訳:ベラルーシ、ウクライナとロシア三ヶ国のデータによると、学童、中高生と青年という異なる年齢グループそれぞれにおける小児甲状腺癌の増加の傾向は、三ヶ国で同様のパターンが見られます。また、三ヶ国をひとつのグラフにまとめると、甲状腺癌のピークが、最初は学童と中高生に見られ、それが最終的には青年に移行したのが分かります。チェルノブイリ事故直後に一度の被ばくをしただけで、特に小さな子供における甲状腺癌のリスクが続いたということです。このような放射線被ばく由来の甲状腺癌の、生物学的影響のメカニズムを解明する必要があります。 スライド16 直訳:良い放射線疫学研究の結果では、特に100 mSvと2000 mSvまでの間の線量反応関係の、いくつかの重要なポイントが示されました。特に被ばく時の若い年齢はリスク要因です。潜伏期は起こり、子供でさえもおそらく4−5年です。ヨウ素欠乏症はリスクを増やします。そして100 mSv以下では、甲状腺癌の増加を見つけるのはとても困難です。100 mSvに基づいた以下での集団の発癌率に過去25年間で増加はありませんでした。このような種類のチェルノブイリの子供のデータの他に、緊急時作業員のデータは、150 mSv以下で発癌率の増加がないと示唆します。これがまさに私達がチェルノブイリから学んだ事です。しかし、福島はとても難しく、私達がこのような証明、すなわち事実を使っても、住民はこのようなデータを受け入れられません。 スライド16 意訳:優れた放射線疫学研究によると、被ばく線量と発癌の相対リスクについていくつかの重要なポイントが結論として導き出されていますが、特に大切なのは100 mSvから2000 mSvまでの線量では、線量反応関係が見られるということです。特に、被ばく時の年齢が若いことはリスク要因です。そして発癌までの潜伏期がありますが、これは、子供においてさえも多分4−5年です。ヨウ素欠乏症は甲状腺癌の発癌リスクを高めます。そして100 mSv以下では、甲状腺癌の増加を少しでも検知するのは非常に難しいです。過去25年間に、被ばく線量が100 mSv以下の集団において発癌率に増加は見られませんでした。チェルノブイリでは、このような子供のデータ以外に緊急時作業員のデータがありますが、それによると、150 mSv以下の被ばく線量では発癌率に増加がないと示唆されています。このようなことを私達は実際にチェルノブイリの経験から学んだわけです。しかし、福島では、私達がこのような、事実である証明を提示しても、住民がデータを受け入れることができないという、非常に困難な状況にあります。 スライド17 直訳:チェルノブイリ甲状腺組織バンクに基づいて、私達は、また、放射線被ばくと甲状腺の発癌現象との直接的なシグネチャ(識別特性)か関連性が何かを分類している。1998年から1999年に、そのような種類のチェルノブイリ組織バンクをロシアと一緒に設立し、その時はベラルーシ人も元々関与してましたが、今は失敗に終わりました。だから、今、3000以上の甲状腺疾患の症例をこの組織バンクで集めてあります。この組織バンクを使って、私達は今、チェルノブイリの甲状腺乳頭癌の病理学的および臨床学的特徴を、散在性の甲状腺癌と比較して分析しています。 スライド17 意訳:チェルノブイリ甲状腺組織バンクでは、放射線誘発性の甲状腺癌における直接的なシグネチャ遺伝子は何か、そして放射線被ばくと甲状腺の発癌現象の関連性は何か、ということを分類しています。1998年から1999年にかけて、私達は、ロシアと一緒にチェルノブイリ組織バンクを設立しました。当初はベラルーシも関与していましたが、今では参加していません。現在、この組織バンクには、3,000症例以上の甲状腺疾患の組織が集められています。私達は現在、この組織バンクを使って、チェルノブイリの甲状腺乳頭癌の病理学的および臨床学的特徴を、自然発生の甲状腺癌と比較して分析しています。 スライド18 直訳:チェルノブイリに関連する甲状腺乳頭癌は綿密に関連した年齢依存性として、その病理学的所見には大きな違いがあります。小さな子供達は、他の甲状腺乳頭癌と比べて組織学的に大変独特な甲状腺乳頭癌を持ちます。私達は多くの事を学びました。小児甲状腺癌の経年傾向や甲状腺の年齢別傾向などです。しかし、再発などの、甲状腺癌のリスクは、自然発生と放射線誘発性の甲状腺癌の2つのグループではかなり違います。こういう種類のヒントは、私達が福島で、子供達の甲状腺超音波検査を含む福島健康医学調査を開始した際に、大変重要なポジションを与えてくれました。 スライド18 意訳:チェルノブイリ事故後に発生した甲状腺乳頭癌の特徴は、年齢と密接に依存しており、その病理学的所見も年齢によってかなり異なります。小さい子供における甲状腺乳頭癌は、他の年齢における甲状腺乳頭癌と比べると、組織学的に特有です。小児甲状腺癌の経年傾向や甲状腺癌の年齢別傾向などの多くの事が分かりました。しかし、自然発生の甲状腺癌と放射線誘発性の甲状腺癌の2つのグループでは、再発などのリスクに大きな違いがあります。このようなヒントは、福島県で、甲状腺超音波検査を含む県民健康管理調査を開始した際に、とても重要な手がかりとなりました。 スライド19 直訳:ご存知かもしれませんが、甲状腺癌のメカニズムは今では色々な遺伝子異常を用いて明白に特徴づけられます。主に、甲状腺乳頭癌は、RET-RAS-BRAF-MEK-ERKの経路のどこかで起こります。MAPキナーゼが、点突然変異か遺伝子再配列のどこかで過剰に発現されます。これは甲状腺乳頭癌の発癌現象のメカニズムを学ぶのに大変独特なケースです。 スライド19 意訳:ご存知かもしれませんが、甲状腺癌の発癌メカニズムは、現在では、様々な遺伝子異常によって明白に説明されています。甲状腺乳頭癌は、主に、MAPキナーゼが点突然変異か遺伝子再配列のどこかで過剰に発現された時に、RET-RAS-BRAF-MEK-ERKの経路のどこかで発生し得ます。これは、甲状腺乳頭癌の発癌現象のメカニズムにおいて、独特のことです。 スライド20 直訳:また、チェルノブイリと異なる時の突然変異の事象を通し、どんな種類の遺伝子異常がチェルノブイリに存在したかが明らかにわかります。左のパネルでは、潜伏期があきらかに起こるということを示します。チェルノブイリの甲状腺遺伝子異常の特徴の違いは、最初の幼い子供達の短い潜伏期は主にRET/PTC3とRET/PTC1の遺伝子再配列を表します。これはDNA二重鎖切断のみによる遺伝子配列です。しかし長い潜伏期とまた年齢の増加は、また、BRAF点突然変異を高頻度で示しました。同じ種類の甲状腺乳頭癌でも、子供と成人の甲状腺乳頭癌の2つのグループの間では、遺伝子背景が全く異なります。同様の傾向は、また、放影研によって報告されているように、日本の原爆被爆者でも明らかになります。だから、放射線誘発性の発癌現象のメカニズムを探し求めること、これはまた大変重要です。 スライド20 意訳:また、チェルノブイリでの突然変異事象を時間の推移と照らし合わせて見ますと、チェルノブイリでどのような遺伝子異常が存在するのかがわかります。このスライドの左側の図表で見られますように、チェルノブイリでの甲状腺癌における遺伝子異常の特徴は潜伏期の長さによって異なります。例えば、上のグラフの一番最初の0−14歳の子供達のカーブ線をご覧頂きますと、潜伏期が短い場合には主にRET/PTC3とRET/PTC1の遺伝子再配列を表しているのが分かります。これは、DNA二重鎖切断のみによる遺伝子再配列です。(訳者注:DNA二重鎖切断「のみ」と山下氏は述べているが、DNA切断と組み替え,再結合が起きないと再配列は起きないだから、「のみ」と言及している意味がわからない。)しかし、潜伏期の長さと年齢の増加と共に、BRAF点突然変異の頻度が高くなりました。子供と成人においては、例え同じタイプの甲状腺乳頭癌であっても、遺伝的背景は全く異なるのです。また同様の傾向は、放影研のデータによりますと、日本の原爆被爆者でも見られています。だから、放射線誘発性の発癌現象のメカニズムの探究というのもまた、大変重要なのです。 スライド21 直訳:しかし、同じ放射線がこれらの子供達に対して曝露されても、これらの子供達の小さな部分だけが甲状腺癌を発生します。ほとんどの子供は甲状腺癌を発生しません。だから、私達は甲状腺癌についての2つの限定的な分子疫学的研究に焦点を当てましたが、このスライドに写っています。小児甲状腺癌の検体を1,000あまり集めましたが、それは血液で、ひとつの線は、これらのベラルーシ、ウクライナとロシア連邦の地域に、同じ地域のコントロール群と一緒に約30人の人が存在するのを示します。1,000以上の症例の検体と、1,000以上のコントロール群の検体を集めました。 スライド21 意訳:しかし、同じ程度の放射線被ばくを受けても、子供達の中で甲状腺癌を発症するのはほんの一部分です。子供達の大部分は、甲状腺癌を発症しません。このスライドでは、甲状腺癌についての適切な分子疫学的研究の2つに焦点を当てました。地図上の丸がついた短い線は、ひとつが約30人を示します。この、ベラルーシ、ウクライナとロシアにまたがる地域の1,000人の甲状腺癌の患者と、また同地域の1,000人のコントロール群からも血液検体を集めました。 スライド22 直訳:そして、それから、GWASが癌感受性遺伝子のとても明らかな傾向を示し、そしてこれ、FOXE1、 9番染色体。これは、FOXE1で、甲状腺転写因子2です。そして、また、他の関連した遺伝子も確認しました。興味深いことに、これらの遺伝子背景のSNP(一塩基多型)の異常はチェルノブイリの甲状腺癌での発現率が高いです。 スライド22 意訳:そしてGWASにより、9番染色体のFOXE1遺伝子という癌感受性遺伝子が、甲状腺癌に関連している傾向が明らかになりました。これはFOXE1遺伝で、甲状腺特異的転写因子2です。また、他の遺伝子の関連も確認されました。興味深いことに、遺伝子背景におけるこのようなSNP(一塩基多型)の異常は、チェルノブイリの甲状腺癌での発現率が高いのです。 スライド23 直訳:私達の最終分析は明らかに、患者とコントロールの間に大きな違いがあるのを示し、コントロールは今はほぼ2,000件。 スライド23 意訳:私達の研究の最終分析では、甲状腺癌の患者と、最終的に2,000を超えたコントロール群との違いが明らかに示されました。 スライド24 直訳:私達は2010年に既にこのタイプのFOXE1遺伝子がチェルノブイリの放射線誘発性の甲状腺癌の主な遺伝的決定基だと報告しました。もちろん、これらの、甲状腺癌を発症する子供達は、放射線特有のSNPタイプを持っていただけでなく、また、散発性のSNPタイプも2つのグループで重複していました。共通の遺伝的背景に基づいた甲状腺癌の発癌現象の放射線だけでなく遺伝的感受性も、放射線のような環境要因に加え、大変重要です。 スライド24 意訳:私達は、2010年には既に、このFOXE1遺伝子がチェルノブイリでも放射線誘発性の甲状腺癌においての主な遺伝的決定基だと報告しています。もちろん、甲状腺癌を発症した子供達は、放射線特有のSNPタイプだけでなく散発性のSNPタイプを重複して持っている場合もありました。共通の遺伝的背景において、甲状腺癌の発癌現象では、放射線のような環境的要因に加え、遺伝的感受性も大変重要なのです。 スライド25 直訳:そこで、私達は、今、他の集団、ヨーロッパ人だけでなく日本人にも集中しました。このSNP異常の同様の傾向が甲状腺癌発癌FOXE1に存在。だから、今は、私達は、FOXE1が甲状腺癌の発癌の候補遺伝子のひとつであると知る、認識するのです。これはまた、福島地域へと広く追跡する、大変独特の所見でもあります。 スライド25 意訳:そこで次は、ヨーロッパだけでなく日本の他の集団も集中して調べました。このSNP異常であるFOXE1は、甲状腺癌の発癌において、他の集団でも同様に存在していました。これから、FOXE1が、甲状腺癌の発癌遺伝子の候補のひとつであると分かりました。これは大変独特の所見であり、福島県でも広く追跡していくべきものです。 スライド26 直訳:今から、私の講演での2番目で、私は東日本大震災(複数形で)に集中したいと思います。ほんの2年前に、それは起こりました。地震、津波、そして原子力発電所事故。それは本当に、福島での多元的災害です。福島で、東日本大震災で亡くなった20,000人の内、福島では1,600人が亡くなり、202人が行方不明です。また、1,000人以上の死者は、災害に関連した理由で亡くなりました。それは、避難時か避難後という意味です。急性被ばく症はなかったけれど、避難による死者がいました。それは本当に悲しい状況です。そして、医療対応に対してどのように準備するかというのは、また、この種類の災害関連死をについて考えるのがとても大切です。 スライド26 意訳:それでは、今から、この3部構成の講演の第2部に入り、東日本大震災についてお話したいと思います。ちょうど2年前の出来事でした。地震、津波、そして原子力発電所事故。それは本当に福島においての多次元的災害でした。(訳者注:意訳をしても、山下氏がこういう認識だというのは変えられない。)東日本大震災で亡くなられた20,000人の方達のうち、福島県の死者数は1,600名、行方不明者は202名でした。また、1,000人以上の方が、避難時か避難後に亡くなったという、災害に関連した理由で亡くなられました。急性被ばく症による死者はおりませんでしたが、避難そのものによる死者がいたと言うことです。大変、残念なことです。医療対応の準備をするにあたり、このような災害関連死を考慮するというのは、とても重要なことです。 スライド27 直訳:ご存知のように、福島第一原子力発電所は津波によって完全に電源を失いました。幸い、地震の後で全てが止まりました。なので、バックアップ電源なしに冷却し続けることに失敗しました。 スライド27 意訳:皆様もうご存知かと思いますが、福島第一原子力発電所は津波によって完全に電源を失いました。幸い、地震の後で原子炉は全部自動停止しました。しかし、バックアップ電源さえも失ったために、原子炉を冷却し続けることができませんでした。 スライド28 直訳:日本政府は、直ちに避難と屋内待機を指示しました。このスライドによると、3月11日、3月12日、3月15日、3kmに行き、そして10km、望んだ後でさえも10kmから20km、そして数字は20kmです。20kmから30kmの間は、屋内でした。家屋避難は3月15日に推奨されました。そして、福島第一原子力発電所から大量のフォールアウトを受けました。 スライド28 意訳:日本政府は、直ちに避難と屋内待機の指示を出しました。このスライドでご覧頂けますように、避難区域は3月11日に3km圏内の指示が出され、それが3月12日に10km圏内になり、同日さらに、10km圏内から20km圏内に拡大され、最終的には20km圏内でとどまりました。20kmから30km圏内は、3月15日に屋内待機の指示が出されました。そして、福島第一原子力発電所から大量のフォールアウトが起こったのです。 スライド29 直訳:そして、それから、最終的に、このスライドで示されているように、地域が汚染されています。航空機モニタリング、4月29日、そしてまた、モニタリングポイントはこのスライドで示されました。μSv。赤いのは19μSv以上、青いのは1μSv以下。この状況は続いていません。そして、事故の2年後、大変幸運なことに、それぞれほとんど半分位。なぜなら、放射性セシウム134は2年の半減期でとてもゆっくりと影響されるから。だから、すなわち、初めの航空機モニタリングデータから、ほぼ半分が福島県では減っています。 スライド29 意訳:最終的にフォールアウトにより汚染された地域は、このスライドでご覧頂けます。左は4月29日付けの航空機モニタリング地図で、右の地図では地上1mのモニタリングポイントでの測定値が表示されており、単位はμSvです。左の地図では、赤の表示は19μSv以上、青の表示は1μSv以下の地域を示します。(訳者注:山下氏は、μSv/hを意味していると思われるが、実際に言及したのはμSvだったので、そのまま訳した。)しかし、現在この汚染度が持続されているわけではありません。事故から2年経った今、大変幸運なことに、放射性セシウム134の半減期が2年なので、セシウムはどちらもほぼ半分しかのこっていません。故に、福島県では、最初の航空機モニタリングデータと比べて、数値はほぼ半分に減っています。(訳者注:山下氏が言及したまま訳したが、文面からすると、セシウム134もセシウム137も2年で半分になったと思っているようである。) スライド30 直訳:この原子炉事故は、恐ろしい災害ではありません。まさに、産業危機と環境被害です。そして、政府が避難と屋内待機の指示を出し、それは十分でした。だから、避難後は、集団への被ばく量は、劇的に減りました。しかし、多くの問題が存在し、それは原子力作業員、運転スタッフや緊急対応隊員などが、また、ある程度の放射線被ばくした。一般市民と作業員両方への被ばく量と影響についての懸念が大きいので、私達は、さらに情報を集めて世界に提示する準備ができています。 スライド30 意訳:この原子炉事故は、ただの恐ろしい災害なのではなく、まさに産業危機とそれに伴う環境被害なのです。政府が避難と屋内待機について十分な指示を出したので、住民の被ばく量は、避難後には劇的に減りました。しかし、原子力作業員、運転スタッフや緊急対応隊員の方達もまた、ある程度の被ばくをされたため、多くの問題があります。一般市民と作業員の方々両方の被ばく量や放射線被ばくによる健康影響について多くの懸念がございますので、私共と致しましては、さらに情報収集を致しまして、世界に発信したいと思っております。 スライド31(ほとんどスライド内の文章を読んだだけなので、直訳も意訳もほぼ同じ):一般市民の懸念は大きな問題点です。一般市民は、放射能汚染の長期的な健康影響について心配しています。特に政府の処置に対して、怒り、不安と不信用の火花を散らしていて、私達専門家でさえも一般市民とマスメディアの標的となっています。汚染区域からの食品の出荷禁止と食品の安全に関しての過剰な心配が、農家の人々の生活を台無しにし、彼らが生活を立て直すことを困難にしているまたひとつの懸念となっています。専門家と学術学会の役割は大事ですが、信頼度と信憑性両方が、不適切で未熟なメディアリテラシーのためにある程度生じた混乱と誤解によって失われたのです。 スライド32 直訳:私は、ここ、福島県立医科大学での事故後1週間の3月18日に、派遣されました。彼らは、避難者のサポートのためにとても頑張りました。しかし、ベッドは約800で、スタッフは100人から1,500人以上です。彼らは、とても心配して怖がっていました。もうすぐで彼らもまた、福島第一から60kmの距離であるこの大学から逃げているのです。 スライド32 意訳:私は、事故から一週間経った3月18日に、ここ、福島県立医科大学に派遣されました。病院のスタッフは、避難者のサポートのためにとても頑張りました。福島県立医科大学の大学病院のベッド数は約800で、スタッフは1,500人以上います。スタッフもとても心配して怖がっており、福島第一から60kmの距離も離れているというのに、もう少しで大学から逃げようとしていました。 スライド33 直訳:なので、私達は、病院のスタッフと共に、地震と津波の被害者、大規模な患者の転院と、また、放射能フォールアウトに受けられた人達のスクリーニングの対応をしました。改善の余地は多くありましたが、しかし、医療スタッフ、自衛隊、消防隊員や警察官でさえも、最初からとてもとても頑張って働きました。 スライド33 意訳:そこで、私達は、病院のスタッフと共に、地震と津波の被害者の対応に努め、また、大規模な患者の転院、そしてさらに、放射能フォールアウトを受けた人々のスクリーニングにも対応しました。改善の余地は多くありましたが、それでも、医療スタッフだけでなく、自衛隊員、消防隊員や警察官さえも、最初から大変頑張って業務に従事しました。 スライド35 直訳:そしてついに、このような種類の地図が日本全体で示されていて、主に福島と隣のその県に焦点を当てています。 スライド35 意訳:最終的に、このような地図に、主に福島県と近辺の県等に焦点を当てつつ、日本全体が表されています。(訳者注:この地図は日本全体ではないのだが、山下氏が「日本全体」と言ったのでそのまま訳した。) スライド36 直訳:今は、ターゲット地域は30キロ圏周辺。20キロ以内は私達は「警戒区域」と呼びます。しかし、浪江から飯舘村への西と北の区域さえ、私達は「計画的避難区域」と呼びます。また、その人々は、これらの汚染区域から避難しました。 スライド36 意訳:現在では、30キロ周辺がターゲット区域となっています。(訳者注:何の「ターゲット」なのか明確でないが、後にもtarget operationsという山下氏独自の造語で県民健康管理調査の調査対象を表現したりしていることから推測すると、福島県を山下氏管轄下の研究区域とし、「ターゲット」と言う言葉に研究標的とする強い意味合いが伺える。)20キロ圏内は、「警戒区域」と呼ばれます。しかし、北西に向かう浪江町から飯舘村の区域さえ、「計画的避難区域」と呼ばれます。住民は、この計画的避難区域である汚染区域からも避難しました。 スライド37 直訳:WHOの予備的データによると、彼らが福島の集団でどれだけ受け取ったかを去年の5月に推定しました。これは、最初の4ヶ月に住み続け、汚染された食物を食べ続けた人々からのとても保守的で理論的なデータです。大変理論的であり、一般市民への現実をあまり超えていません。そしてこれは線量どれだけ受けたかを考慮するのにとても大事です。同時に、福島プラント作業員もまたこのタイプの研究で測定されました。200mSv以上が受け取った作業員が存在します。これは、それらの人々に特に必要な長期の健康モニタリングへの本当に大事なターゲットです。 スライド37 意訳:2012年5月に発表されたWHOの予備的推定被ばく線量のデータでは、福島の住民がどのくらい被ばくしたかが推定されました。この推定被ばく線量は、事故後の最初の4ヶ月間にそこに住み続け、汚染された食物を食べ続けたことを考慮した、とても保守的で理論的なデータです。大変理論的で、住民の現実にそぐうものです。被ばく量がどれほどだったのかを考慮するのは、大変重要です。また同時に、福島第1原発の作業員の被ばく量も推定されました。作業員の方達の中には、200 mSv以上の被ばく量を受けた方もいらっしゃいます。この200 mSvというのは大変重要なターゲットとなり、長期的な健康モニタリングは、このように200 mSv以上を被ばくした方達のために特に必要となります。 スライド38 直訳:今、福島では、これらの区域が分類されています。警戒区域、約77,000 人が避難する。計画的避難区域は約10,000人。緊急時避難準備区域、26,000人。合計約113人がこれらの区域に避難さされています。これらの区域の他に、30キロ圏内では、合計210,000人が避難しています。なので、これは福島県で、とても大きな真剣な問題です。福島県の全人口は200万人です。だから、約1割が福島県のどこかに移住しています。 スライド38 意訳:現在、福島県における避難区域は、このように分類されています。警戒区域からは約77,000人が避難しています。計画的避難区域からは約10,000人、近畿有事避難準備区域からは26,000人が避難しています。これらの区域からは、合計113人(訳者注:実際には113人と言及されてましたが、113,000人と言いたかったのだと思います。)が避難しています。30キロ圏内では、これらの避難区域以外からも避難者がいて、合計で21万人が避難しています。これは福島県においてとても大きく重篤な問題です。福島県の全人口は200万人なので、約1割が福島県のどこかに移住したことになります。 スライド39 直訳:そこで私達は今、とても難しい部分に直面しています。どうやって対策するか、とうやって彼らと一緒に働くかです。今日は、発電所の作業員、緊急隊員は飛ばし、避難したれどまだ福島に留まっている住民に集中するだけです。彼らは、慢性的な低線量を受け、また、リスクに対するストレスと恐怖に毎日曝露されています。不幸なことに、教育が足りず、まだコミュニケーションがとても難しく、まだ情報が正確なソースとして現実化しなかった。そして、また、負の汚染のイメージのたくさんの噂話が、これらの地域で準備されます。 スライド39 意訳:そこで現在私達は、どのように対応するか、どのようにこのような人達と付き合って行くかという、大変困難な部分に直面しています。今日は福島原発の作業員や緊急対応人員は飛ばし、避難したけれどまだ福島に留まっている住民のみに集中します。この住民達は、慢性的な低線量被ばくをするだけでなく、また、毎日のようにリスクに関するストレスと恐怖に晒されています。残念ながら、教育が不足しており、コミュニケーションがまだとても難しく、私達が提示する情報が正確であるとまだ分かってもらえない状況です。そしてまた、このような地域では、汚染についての否定的なイメージについて、多くの噂があります。 スライド40 直訳:福島災害は、不確かな健康影響を起こしますが、しかし、急性ではありません。本当に何かが福島で起こりました。まさに、心理的、精神的影響は既に見られています。心配、怒り、睡眠の乱れ、PTSDなど。なぜなら、彼らはまだ存在する放射能線量区域住んでいる。だから、このストレスをこうむっているこれらの人達の世話をしなければ、他の選択肢がありません。 スライド40 意訳:福島原発事故による健康被害は明らかではありませんが、急性のものではありません。福島で実際に何が起こっているかというと、心配、怒り、睡眠の乱れ、PTSDなどの、まさに、心理的および精神的影響が既に見られているのです。これは住民がまだ、放射能で汚染されている区域に住んでいるからです。ストレスから苦しんでいるこの住民達の世話をする以外に選択肢はありません. スライド41 直訳:そこで、私達は、福島健康管理調査のプログラムを始めることに決めました。事故後2ヶ月足らずの2011年5月に、このような前例を見ない、200万人の人々をほとんど生涯を通してターゲットとする、健康管理プログラムを設置することにしました。 スライド41 意訳:そこで、私達は、県民健康管理調査を始めることに決めました。 事故から2ヶ月足らずの2011年5月に、このような、前例をみない健康管理プログラムを設定したわけですが、これは、200万人の人達を、ほぼ生涯に渡って対象として行きます。 スライド42 直訳:健康管理はデザインとして2つに分かれています。基本調査は、最初の4ヶ月間の外部被ばく線量評価にとても大事です。そしてそれから同時に、約21万人の人口の、主に汚染区域から避難した対象集団のさらなる検査に基づいてサービスをすることが、とても大事です。 スライド42 意訳:健康管理というのは、設計としては2段階に分かれています。まず、最初の段階の基本調査は、最初の4ヶ月間の外部被ばく線量評価にとても大事です。また次の段階では、それと同時に、約21万人の主に汚染区域から避難した対象集団に対して、さらに検査した結果に基づいて医療を施すことも大事です。 スライド43 直訳:このスライドは福島健康管理調査のアウトラインです。この調査では、200万人の人口、全人口をターゲットにしています。そして、詳細調査は4つに分かれています。甲状腺超音波検査、総合的な医学チェックアップ、精神衛生とライフスタイル調査、そして妊娠中と授乳中の女性の調査です。ゼロから、私達は、福島医科大学と一緒に、このようなタイプの調査プログラムを設立しました。そして、だから、私達の広島・長崎とまたチェルノブイリからのノウハウが、このような組織化とプログラムの開始に大変役に立ちます。 スライド43 意訳:このスライドでは、県民健康管理調査のアウトラインをご覧ください。この調査は、福島県の全人口である200万人を対象としています。詳細調査は、「甲状腺超音波検査」、「健康診査」、「こころの健康度・生活習慣に関する調査」、そして「妊産婦に関する調査」の4部門に分かれています。福島医科大学の協力の下、ゼロのスタート地点から、このような調査を構築致しました。ここで、私達の広島・長崎とさらにチェルノブイリにおけるノウハウが、このようにプログラムを計画して開始するのに大変役立ったというわけです。 スライド44 直訳:目標はとても明らかです。人々は苦しみ、心配と怒りを持っており、落ち着かなければいけません。長期的な健康状態をモニターする必要があります。これは、地域の住民へのメッセージです。そして、それから、同時に、科学的と疫学的に、低線量長期的放射線の人間の健康への影響に明らかにしなければいけません。 スライド44 意訳:この調査の目標は、とても明白です。住民の方達は、被害をこうむっており、不安と怒りを感じているので、落ち着かなければいけません。長期の健康状態をモニターする必要があります。これは、地域の住民へのメッセージとも言えます。また同時に、低線量の長期的な放射線被ばくの人間の健康への影響を、科学的および疫学的にはっきりとしなければいけません。 スライド45 直訳:基本調査というのは、問診票によって記憶の記録を集め、それから、そのような問診票と一緒に、特別な空間の環境放射線量に分析します。とても複雑。 スライド45 意訳:基本調査では、問診票による記憶の記録を集めます。その問診票を分析して、外部被ばく量としての環境空間放射線量を推計します。大変複雑な作業です。 スライド46 直訳:3月11日から7月11日まで、そこに、動くやり方、このような種類の問診票に反応することから記録された、そのような毎日の動きがあります。 スライド46 意訳:このスライドには、その問診票に記入された、3月11日から7月11日までの毎日の行動記録の例が示されています。 スライド47 直訳:そして同時に、放医研によって特別に開発された時系列の線量率マップが分析し、そしてそれから、そのような種類のデータが、正式な外部被ばく線量を私達にくれました。 スライド47 意訳:そして放医研によって特別に作成された時系列の線量率マップと合わせて分析することにより、正式な外部被ばく線量を推計しました。 スライド48 直訳:大変重要なことに、川俣、浪江と飯館区域の比較的高度に汚染された区域である14,000人の人達を対象とした最初の4ヶ月間の外部被ばくの分布は、既に報告されています。ほとんど全員が10 mSvであり、多くの人達は最初の4ヶ月は3 mSv以下でした。 スライド48 意訳:大変重要なことに、川俣町、浪江町と飯舘村の比較的高線量の汚染区域の14,000人の住民を対象とした、最初の4ヶ月の外部被ばく線量推計の分布があります。最初の4ヶ月では、ほとんど全員の外部被ばく線量は10 mSv以下であり、多くの人達では3 mSv以下でした。 スライド49 直訳:最近、私達は、386,000以上の調査データを報告されています。これらのデータによると、この問診票の地元の時系列に推計された外部被ばく線量は1 mSv、2 mSvで、ほとんど全部が5 mSvです。これは福島地域住民にとって、大変良いニュースです。福島は今、広島・長崎とチェルノブイリと比べて大変低線量に存在します。 スライド49 意訳:これまでに、386,000以上の調査データの報告がありました。このデータによると、問診票の地元の時系列に従って推計された外部被ばく線量は、1 mSv以下や2 mSv以下が多く、ほとんど全員が5 mSv以下です。これは福島県民にとっては大変良いニュースです。現在の福島は、広島・長崎とチェルノブイリと比べて大変低線量の状態にあります。 スライド50 直訳:だから、確率的影響を通して放射線誘発性の癌の増加を確認するのは将来で非常に難しいです。しかし、このようなモニタリングと、そしてまた、健康管理プログラムを続けなければいけません。 スライド50 意訳:このグラフでも分かるとおり、福島での被ばく線量は低いため、確率的影響を通して将来的な放射線誘発性の癌の増加を確認するのは、非常に困難です。それでも、このようなモニタリングや健康管理調査は続けなければいけません。 スライド51−52 直訳:2番目に、私達は、子供と女性とその他の、違う対象の業務に焦点を当てています。今、すぐに、福島での甲状腺への放射性ヨウ素のリスクを紹介したいと思います。私達は今、18歳以下の年齢、約36万人、子供全員が甲状腺超音波検査によって検査されるだろうと決められました。その母親と、地域政府と、そして中央政府からの強いプレッシャーのため。私達は、今、超音波を使った、大変洗練された最初のスクリーニングをスタートされます。そして、それから、もし異常が見つかったら、2度目のスクリーニング。0歳から18歳。チェルノブイリ以外で初めて、私達はこのような調査を今しています。 スライド51−52 意訳:2番目には、私達は、子供や女性などの異なる対象群に焦点を当てています。(訳者注:経済用語にはOperational target という言葉は存在する。しかし、target operationsという言葉は存在しない。そのため直訳においても意訳においても、文脈の前後から推測し、対象群とした。)ここで、手短に、福島県における放射性ヨウ素の甲状腺に対するリスクをご紹介したいと思います。約360,000人の18歳以下の子供全員に甲状腺超音波検査を行なうことにしました。(訳者注:山下氏が「子供全員」と言った時、「全員」という言葉にとても感情を込めており、聞いている方は、あたかもそれが大変な作業であって迷惑であるかの印象を受けた。)これは、母親達、地方自治体、および日本政府からの強いプレッシャーのためです。(訳者注:「母親達」と言う時も、感情がこもっている感じがし、まるで「母親があまりうるさいからやった」という印象を受けた。)大変洗練された超音波機器を用いた先行検査の一次検査が現在行なわれており、もしも異常が見つかったら、二次検査となります。検査対象の年齢は、0歳から18歳です。チェルノブイリをのぞいて、このような調査は初めて行なわれることになります。 スライド53−58 直訳:そしてそれから、普通の子供達の甲状腺でのう胞、結節のような多くの異常を見つけること、それか、私達でさえ、異所性胸腺や残存胸腺を甲状腺内の子供達の中ではっきりと見ることができます。そのような所見は、容易に甲状腺癌と誤診されます。だから、これは、超音波を用いてこのような小児甲状腺のガイドラインを明らかにするか作ることはとても大切です。 また、多くののう胞が子供で発見。そのような種類の小さなのう胞、コロイド・クロット、また見つけ、3歳の女児でさえ、このような小さなのう胞を見せます。これは子供の、自然で、自発的に変化する所見です。しかし、福島で母親達はとても心配します、そのような所見が見つかったら福島によって曝露された放射線のせいではないかと。しかしその前は、私達は、このような種類の甲状腺を子供全体でスクリーンしたことがありませんでした。 スライド53−58 意訳: この超音波検査では、普通の子供達でも、のう胞や結節のような多くの異常が見つかっています。もしくは、子供の甲状腺内で、異所性胸腺や残存胸腺が見える事さえありますが、このような所見は容易に甲状腺癌と誤診されます。だから、超音波検査を用いて小児甲状腺の状態を明らかにし、ガイドラインを作ることは非常に大切です。 また、多くののう胞が子供で見つかっています。このような小さなのう胞や、また、コロイド・クロットなども見つかっています。3歳女児にでさえ、このような小さなのう胞が見つかります。これは子供においては自然なもので、また自然に変化していくような所見です。しかし、福島でそのような所見が見つかったら、それが福島原発事故からの放射線への被ばくのせいではないかと母親達がとても心配します。(訳者注:ここでも「母親達が」と言う時に、うっとうしそうな言い方をした。)しかし、以前は、単にこのような甲状腺スクリーニングを子供達全体にしたことがなかっただけなのです。 (スライド53. (小児におけるのう胞と結節) (スライド54 残存胸腺、または異所性胸腺) もしくは、子供の甲状腺内で、異所性胸腺や残存胸腺が見える事さえありますが、このような所見は容易に甲状腺癌と誤診されます。 (スライド55 コロイドのう胞(コロイド・クロット入りのう胞) このような小さなのう胞や、また、コロイド・クロットなども見つかっています。 (スライド57 3歳女児の症例(A2判定) 3歳女児にでさえ、このような小さなのう胞が見つかります。これは子供においては自然なもので、また自然に変化していくような所見です。しかし、福島でそのような所見が見つかったら、それが福島原発事故からの放射線への被ばくのせいではないかと母親達がとても心配します。 (スライド58 小児甲状腺癌と胸腺) このスライドに関しては特に何のコメントもなく、ただスライドを見せただけでした。 スライド59 直訳:これは甲状腺超音波検査の最近の結果です。私達はAは普通であると分類されてますが、Aが完全に普通で特有の所見がないと私達はA1に分ける。小さなのう胞や結節は、また私達はA2と言う。Bは、 5 mm以上の結節か20 mm以上ののう胞は、二次スクリーニングの推奨に紹介するかもしれません。133,000人の子供達のスクリーニングデータによると、 99.5%が正常、しかし異常の0.5%で、3人は二次スクリーニングで明らかになりました。これは最初のデータです。だからしかし、この数字は何なのかと理解すること、これはとても大切です。 スライド59 意訳:これは、一番最近の甲状腺エコー検査の結果です。所見は結節とのう胞のサイズで分類されています。A判定は正常ですが、A判定の中でも所見がなくて全く正常な場合はA1判定と分類しています。小さなのう胞か結節が見られる場合はA2判定と呼びます。B判定は、5 mmより大きな結節か20 mmより大きなのう胞であり、この場合は二次検査が推奨されています。これまで発表されている133,000人の子供達のデータによると、99.5%が正常で0.5%に異常がみられ、二次検査の結果、3人の(甲状腺癌が)明らかになっています。これは最初のデータとなります。なので、この数字が何を意味するのかを理解することがとても大事です。 スライド60 直訳:1年目のスクリーニングは2011年10月から2012年3月末、彼らは約38,000人の子供の二次スクリーニングを終了しました。これらのデータによると、事故後1年以下でこれらが福島事故に関連していないと気づきませんでした。しかし、一般の人達はこのようなB、そしてA2の診断さえもが放射線被ばくの影響と関連していることを懸念しています。 スライド60 意訳:1年目の甲状腺検査は2011年10月から2012年3月末の間に行なわれ、約38,000人の子供の二次検査が終了しました。このデータを見て、事故後1年足らずなので、この結果が福島事故に関係ないと思った人はいませんでした。(訳者注:おそらく「関係ある」と言いたいのだと思うが、山下氏の英語原文の意味のままにした。)しかし一般の方達は、このようなB判定、そしてA2判定でさえもが、放射線被ばくの影響に関連しているのではないかと非常に懸念しています。 スライド61 直訳:二次検査の結果分かった事は、この二次検査の意味は穿刺吸引生検が甲状腺結節のどこかにされると言う事です。この中、私達は既に、3名の小児甲状腺癌を手術し、7名の癌がこの区域で疑われています。 スライド61 意訳:二次検査では、甲状腺の結節の一部分にて穿刺吸引生検を行なうのですが、その結果、既に3名が小児甲状腺癌の診断で手術を受けており、また、7名に癌の疑いがあります。 スライド62 直訳:これらのデータによると、皆が驚きましたが、なぜならこれが日本の甲状腺癌発症率で、5年ごと、5年ごとが青棒で示されています。これは癌死率です。(一番下の括弧内のこと)子供での甲状腺癌の発症は大変稀です。もちろん、それは本当です。しかし、この18歳以下でスクリーニングを始めました。大変大きな甲状腺癌の増加、症状がない子供でさえ。大変な困難に直面していますが、放射線へではなく、しかし、また、このような医療検査へです。 スライド62 意訳:その結果には、皆が驚きました。このグラフは、日本における甲状腺癌の発症率で、年齢が5歳ごとに区分されており、青棒は、5歳ごとの年齢枠における甲状腺癌の発症率を表しています。年齢区分の下の括弧内は、各年齢枠での甲状腺癌の死亡率です。小児甲状腺癌は非常に稀です。もちろんそうなのですが、今回、18歳以下の子供においての甲状腺超音波検査のスクリーニングを開始したら、甲状腺癌が、症状がない子供においてさえも、大きく増加しました。私達が直面しているこの困難は、放射線のせいではなく、このような医療検査をしているという事実のせいなのです。 スライド63 直訳:今、悪いニュース。センセーショナルなニュースがあります。「福島の子供の3分の1以上が癌になる危険。」「福島の子供達は天井知らずの数の甲状腺異常がある。」私達は、彼らに攻撃されています。しかし、福島でのこのような大規模スクリーニング活動が甲状腺結節やのう胞の発症率と、症状がない症例の早期発見のための癌の発症率の増加に繋がりました。スクリーニング活動のためにベースラインリスクが変わるので、将来見られる甲状腺癌の発症率をどの過去の報告とも比べることはできません。私達は、注意深く、多くの時に、運営に向けて説明する必要がある。 スライド63 意訳:そして、悪いニュースです。センセーショナルなニュースが起こりました。「福島の子供の3分の1以上に、癌になる危険性がある。」「福島の子供達の甲状腺異常の数は、天井知らずなほど多い。」などです。私達は、攻撃されているのです。しかし、福島県でこのような大規模スクリーニングを行なったせいで、甲状腺結節やのう胞の発生率が増加し、そして、症状がない場合でさえも、甲状腺癌が早期発見によって見つかっています。このスクリーニングのせいでベースラインリスクが変わったので、将来見られる甲状腺癌の発症率を、過去のどのリポートの発症率とも比べる事ができなくなりました。これは、何度も何度も、注意深く、皆さんに説明しなければいけません。(訳者注: 原文での「説明」の対象は、先にも何度か出て来た「operations」なのだが、該当する言葉が日本語にないために好意的に解釈して「皆さんに」なのだろうと推測した。) スライド64 直訳:私はまた、健康診査で何をしたかの小さな結果を紹介したところです。21万人の内、70,000人の子供と大人が検査され、そして大変残念ながら、運動不足のために、肥満と高脂肪血症がこれらの避難した人々で増えました。 スライド64 意訳:またここでは、健康診査で見つかった事を少しだけご紹介致します。福島県で避難された21万人の検査対象者の内、70,000人の子供と大人がこれまでに健康診査を受けました。そして、大変残念なことに、運動不足のために、肥満と高脂肪血症が、避難された方々で増えたことが分かっています。(訳者注:このスライドの内容は、『第10回「県民健康管理調査」検討委員会 資料3 平成23・24年度 県民健康管理調査「健康診査」の実施状況について』の 4ページ目とほぼ同じ内容なので、そこから部分的に引用しつつ下記に和訳した。http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/250213siryou3.pdf どれほどスライドの内容がほとんど言及されていないか、が明白になる。) スライド64の内容 2011年度の福島県の避難者の健康診査の中間報告 ● 平成 23 年度県民健康管理調査「健康診査」により、避難区域等に居住していた方々の震災後の健康状態の概要が明らかになった。肥満と脂質代謝異常は、男女ともに若年期に既に存在し、壮年期に増加した。肝機能障害と高尿酸血症は男性で比較的若年期より増加がみられている。その上、高血圧、糖代謝異常、腎機能障害は、壮年期に増加し、その割合は高齢者で最も高かった。 ● 平成 23 年度県民健康管理調査「健康診査」の結果を、小児および成人においての震災前の健康診査の結果と比較した。その結果、少なくとも一部で、肥満、糖代謝異常、脂質代謝異常、肝機能異常の割合が高い傾向を示した。この結果の要因を推測すると、余儀なくされた避難生活による生活スタイル、食習慣、運動量や他の個人的生活習慣の変化が示唆されるが、健診時期、年齢分布、地域分布と受診率の違いという交絡要因が存在する(ため厳密な意味での比較はできない集団である)ことを考慮する必要がある。 ● 県民健康管理調査としては、平成 23 年度に実施した「健康診査」の結果を基本とし、今後も経年的な調査を実施することにより、生活習慣病を含めた様々な疾病について、その予防に活用していく。 スライド65 直訳:そしてまた、「こころの健康度・生活習慣に関する調査」は、子供と大人がとてもストレスだと示しました。例えば、子供では、学校での成績変化、いらつき、不安、うつ、そしてまだ地震と放射線に敏感。大人では、睡眠の乱れ、うつ、将来の恐怖、動揺、避難生活のディスカウントのケースが多いです。それは本当に急性期反応です。彼らがどの位の長い期間続くのか分かりません。私達はどのようにそれらの人々皆を取りなしてケアできるでしょうか。 スライド65 意訳:そして、「こころの健康度・生活習慣に関する調査」によると、子供も大人も非常なストレス下にあるのが分かりました。例えば、子供だと、学校の成績に変化があったり、イライラしたり、不安がったり、うつ状態だったり、今でも地震や放射能に敏感だったりします。大人では、多くの人達に、睡眠の乱れ、うつ、将来への不安、動揺、避難生活に対する失望、などが見られます。これは実は急性期反応なのです。私達には、この急性期反応がいつまで続くのか、どのようにこの方達を皆落ち着かせて対処できるのか、見当もつきません。 スライド66 直訳と意訳はほぼ同じ内容:そして、妊婦さえとても心配しています。しかし、大変幸運なことに、日本では、流産や人工中絶のどちらも増加がありませんでした。とても良いニュースです。先天性奇形の罹患率の明らかな増加もありません。だから、そのようなデータを公表して、また、説明する必要があります。 スライド67 直訳:そして、だから、福島医科大学では、英語のウェブサイト「福島放射線と健康」に開けました。そしてそれから、一般市民だけでなく世界の専門家と世界の社会の中にもコミュニケーションして。 スライド67 意訳:そのために、福島医科大学は、英語のウェブサイト「福島放射線と健康」を開設し、一般の方達だけでなく、国際的な専門家や国際社会にも情報発信をしています。 スライド68 直訳:最後に、福島から何を学ぶかです。何を結論するのも早過ぎますが、福島の後でたくさん議論してます。最初に、緊急事態区分と防護措置基準は変えられなければいけません。そして、今日は私は飛ばしましたが、ヨウ化カリウム方針が今、たくさん議論をしています。そして3つ目は、一番難しい部分ですが、一般市民とどのようにコミュニケーションを取り、一般市民を放射線と放射線恐怖症から守るかです。最後に、 ICRP 101に従っていても、帰還と復興政策がまだ足りない。しかし、福島では、一般市民とコミュニケーションを取るのが大変難しいです。私は本当に、NCRPや国際機関と協力して、リスク評価の研究と教育、リスク・コミュニケーション、リスク対応などをターゲットするのを望んでいます。 スライド68 意訳:最後に、福島から学ぶべき事についてですが、今はまだ、結論を出すのには早過ぎますが、事故後にたくさんの議論が行なわれて来ています。まず第一に、緊急事態区分と防護措置基準を変更する必要があります。そして、今回はお話しませんでしたが、ヨウ化カリウムの方針についても、今、多くの議論が行なわれています。そして第三に、これは最も難しいことなのですが、一般市民とどのようにコミュニケーションを取り、一般市民をどのように放射能と放射線恐怖症から守るかと言う事も大切です。最後に、帰還と復興の方針も、ICRP 101に従ってはいますが、十分ではありません。しかし福島県では、一般市民とコミュニケーションを取るのが大変難しいのです。本当に、NRCPや国際機関と協力して、リスク評価の研究や教育、リスクコミュニケーション、リスク対応などをターゲットにすることを望みます スライド69 直訳・意訳:再度ここで、福島をサポートして下さったことに対して、深くお礼を述べさせて頂きたいと思います。そして、また、このような特別な講演をさせて頂いて、大変光栄です。どうもありがとうございました。 NRCPボイス会長:はい、山下先生には、チェルノブイリでの甲状腺に関しての経験をまとめて頂き、また、福島の現状について私達の知識を文字通りアップデートして頂くという、今までに聞いた中で、最も情報に溢れてた素晴らしい講演のひとつをして頂いたことにお礼を述べたいと思います。これは、まさに最新情報です。(訳者注:山下氏の英語は、英文法や英会話の法則をことごとく無視していたため、あまりにも予測に反していたので自然に耳に入って来ず、逐一繰り返して巻き戻して聞く必要があった。10時間以上かけてやっと最後に辿り着いたと思った時に、このボイス会長の発言を聞いて文字通りびっくり仰天した。彼は、一体どういう耳を持っているのだろうかと思った。そして、この山下氏の講演内容が、「福島の最新情報」として受け止められていると言う事に憤りすら感じた。)

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