2012年5月8日火曜日

http://chikyuza.net/n/archives/22621 (野田首相はアメリカに何をしに行ったのか(?)<三上 治:社会運動家・評論家> 5月2日付けの朝日新聞の記事である。協調姿勢を際立たせた、ものは言いようであると言うが、誰が見たところでアメリカ隷従を際立たせたというだけではないのか。かつて民主党政権が政権交代時にちらりと見せた日米関係の見直しを見直し隷属を再確認しに行っただけではないのか。国内的に孤立する野田政権がアメリカのお墨付きを得て国内政治の再編をすることの後押しを頼みに行っただけではないのか。もっと突込んで言えば自民党や公明党の協力《連立も含め》の根回しだった。背後には消費増税ではすんなりと行かない民主党と自民党(公明を含む)の協調体制の枠組作りがあるのではないか。うがった見方だとういうことにはなるまい。 アメリカのオバマ大統領が力説したという「米国はアジア太平洋を主導する」というのは明瞭である。アメリカは冷戦構造の終焉後に9・11も含めて新戦略を打ち出した。イラクやアフガニスタンでの戦争を媒介に世界支配の新戦略を提示した。この軸をアジアに移し、戦略的修正をしたのである。これにはアメリカのドル基軸通貨維持を核心にしたアジア経済支配の戦略がある。イラク戦争が誕生したばかりのユーロへの対抗が本質としてあったように。中国の抱え込みと包囲というように二重対応を戦略としながら、通貨(元)のドル補完体制維持がある。日米同盟とは日本がこのアメリカの戦略を支持し、補完するということだけである。アメリカは近代ヨーロッパの分割支配によるアジア支配の手法を東アジア地域に適用し日本と中国、韓国《北朝鮮》の支配をやっているのであり、日本はその手のひらで踊らされているだけである。アメリカは軍事経済と金融経済の肥大化による実体経済の衰退という矛盾の深化の中にある。この泥沼からの脱出《転換》の道はなく、軍事支配力とそこから生まれる権威を持っての金融的な経済支配《ドル基軸通貨による支配》を維持するしかない。このための戦略を修正しつつ展開してきたのであり、そこに現在もある。戦後の日本はアメリカ=世界という枠組みの中で高度成長を遂げた。だが、アメリカの衰退の中で日本は独自の立ち位置(自立)を求められている。それが切実な課題になってきているのだ。最近、アメリカの日本化《高度成長の後の停滞》が言われるが、日本の停滞《失われた20年》はアメリカ支配の枠組みから脱せないところからきた。根はアメリカにあるのだ。野田は日米同盟の深化と言う名の隷属、その確認の儀式に出掛けて行っただけではないのか。 野田首相はアメリカを経由して自民党や公明党の協力を求める工作に行った。これは小沢一郎の判決後の日本の政治の動きとつながっているとも言える。小泉―安倍路線によって敷かれたブッシュ政権下の日米同盟深化路線を野田は受け継いでいることを表明しに行ったのだから。ブッシュ政権を受け継ぎつぎつつもオバマはそれを修正はしている。中国脅威論の導入である。そのオバマの新戦略に同調していることを示し行ったのだ。この流れや動きを僕らはここ十年くらいの中で見る事ができるが、日本は日米同盟深化ではなく、それを見直し自立に向けた動きが必要なのだ。野田は衰退するアメリカとの同調によって日本社会を一層の停滞と混迷に導いて行くだけである。 野田はアメリカ訪問と首脳会談で手応えのようなものを得たと自負しているらしい。そんな報道を見るたびに何を考えているのかと首をひねりたくなる。アメリカの権威が日本の政治の権威になるというのは錯誤だが、この錯誤は民衆や永田町での温度差なのかとさえ思う。沖縄基地移設。TPP交渉参加、消費増税、原発問題など野田政権は中途半端の提起し、何一つ解決しえていないし展望もない。野田首相や彼の周辺にはそれを解決していく政治的能力がない。 これをいくらアメリカの権威で打破しようとしてもできるものではない。これらを解決するには政治的・社会的構想(理念とビジョン)を必要とするが、彼の周辺にはそれがないからだ。これは得ることは困難なことだが、現在社会の転換ということが意識されそれをビジョンに結晶させることが不可欠だ。東日本大震災や原発震災はその試金石であった。日本社会の転換のビジョン、それに支えられた構想なしに現在の課題を解決しえない。その場合に日米関係の転換は中心に来ることであるが、その逆にしかことを考えられないのは野田政権である。失われた10年からの脱却として小泉がアメリカの新戦略の模倣《ブッシュ政権下の新自由主義の模倣》に踏み出した時、路線は敷かれたのだが野田はそれを復権させているのだ。日米同盟、とりわけ軍事分野での関係の深化は「集団自衛権の行使」や「武器輸出規制緩和」などが先行的に進められる。東日本大震災の復興などの内政は停滞が深まるのに軍事的領域はアジアでのアメリカの代弁者的機能を強める。ここで忘れてはならないことがある。こうしたアジアを対象とした日本の軍事的役割の強化は同時に国内的には強権的な権力体制の強化も目論まれていることだ。国家機密強化や共謀罪など、新たな形で官僚的支配強化の動きのあるのだ。強権化という逆行的動きが伴なわれている。

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