2013年5月20日月曜日

"改革遂げた自負,ドイツが注ぐ日本への厳しい目線." http://a-bombsurvivor.com/internetinformation/No.9/No.1490.pdf 「日本の動きに懸念を持っている」。ドイツのメルケル首相が日本の経済政策を名指しで批判したのは、1月のダボス会議の席上だった。それから2カ月。表向きの対日批判は影を潜めたが、ドイツの政府・与党には日本への不満が渦巻く。お互いの価値観を認め合う雰囲気が薄れ、それを修復しようにも政財界での人脈が途絶えている。 明治維新の時代からさまざまな歴史的な局面で利害をともにしていた日独関係には、隙間(すきま)風が吹く.21日、日銀の黒田東彦新総裁は「全力でデフレ脱却」と宣言した。これに金融市場は期待を寄せるが、ドイツでの評価は散々だ。 「政治に指図される中銀総裁」とツァイト紙は報じ、フォークス誌は「熱心にお金を刷る男」とこき下ろした。アベノミクスはドイツから見れば、インフレを招く「危険な方針転換」(ニュース専門番組N24)。冷静な記事で定評のある独誌シュピーゲルも「ハラキリ(自殺行為)」と伝える。安倍政権の経済政策をメディアが執拗に批判するのは、ドイツ社会の雰囲気を反映 する。日本は構造改革を素通りし、通貨安誘導や金融緩和で目先の成長を図ろうとしているのではないか. ―― 与党議員の多くがそんな懸念を持つ。「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは経 済、金融の安定に悪影響を与え得る」。2月に7カ国(G7)財務相・中央銀行 総裁が緊急声明を出したのは、通貨安誘導を図ろうとする日本とフランスの動きを抑え込もうとするためだったとの解釈が一般的。過度な円高に同情の声はあるが、「政治家が具体的な為替水準に言及するのは前近代的」との主張にかき消された。 かつて日独は経済政策で緊密に連携し、共同歩調を取ってきたが、なぜそれが崩れたのか。 1990年の東西ドイツ統一でドイツの価値観が変わり、政策での溝が広がったことが背景にある。旧東独の復興費用がかさんで巨額の財政赤字を抱えたドイツは 2003年、社会保障制度の縮小などの改革に着手。 付加価値税(消費税に相当)も大幅に引き上げた。一方で冷え込む内需に見切りをつけた企業は国外に打って出た。ドイツは自らの改革こそが債務危機のなかでの「一人勝ち」につながったと自負する. 「構造改革こそが潜在成長率を引き上げる」(独紙フランクフルター・アルゲマイネ)というのがドイツの主張。 ケインズ主義的な政策で景気の底上げを図ろうとする南欧諸国と同じように、日本の政策も間違っていると断ずる。 ドイツ的な価値観を絶対視し、それを他国に押しつける傲慢さは欧州でも批判を浴びる. 「ドイツ製品の不買運動をしよう」。キプロスではこんな呼びかけが始まり、スペイン紙はメルケル独首相を独裁者ヒトラーになぞらえた。ドイツの主張がすべて正しいわけでもない。 西独マルクがユーロに切り替わった際に実質的な「通貨安」となったことはドイツ経済界では常識だが、独政府はそれには口をつぐむ。 債務危機が深まった10~12年にかけては、ドイツを含めたユーロ 圏主要国の政策決定の遅さと足並みの乱れが世界の金融市場を揺らし、日本もそれを批判した。 成熟した外交関係において相互批判は健全だが、日独関係が危ういのはドイツで「瀬戸際の日本」の印象が急速に強まっていることだ。東京電力の福島第1原子力発電所の事故も重しとなり、ドイツ企業のなかで日本への赴任希望者がめっきり減った。大手メディアでは「北京支局」のほうが「東京支局」よりも格上になる事例が相次ぐ。グローバル化が進んでいるにもかかわらず、日本に対する偏見もふくらみ、時計の針が逆戻りしたかのような関係になりつつある。同じように相互批判しながらも関係が薄れていない独ロや独米とは状況が異なる。 日本の重要性を訴える人脈が途絶えたことも逆風となっている。 70~80年代にシュミット、コール両内閣の重鎮だった貴族出身のラムスドルフ元経済相は「日本の生産技術を見習うべきだ」が口癖だった。 90年代は東京勤務経験のあるコメルツ銀行のコールハウゼン元頭取が知日派の筆頭格として活躍した。そうした人材がいまは見あたらない。日本側も「知独派)が細っている。 日本に代わって台頭しているアジア勢はやはり中国だ. 中国側はベルリンの首相府や外務省に日参、沖縄県の尖閣諸島を巡る領土問題で 「日本寄り」の立場をとらないようにくぎを刺す。 欧州で最大の発言力を持つドイツを味方に付ければ、EU全体を抑えられるとの読みがある。ドイツ企業からも「中国に進出したほうが得策」との声が漏れる。 ただドイツが外交・経済面で対中関係に軸足を置くことのリスクは大きい。民主主義や報道の自由などを要求しにくくなるだけでなく、安全保障体制にも悪影響を与える。「北朝鮮は核とミサイル実験を即座に停止すべきだ」。8日、ウェスターウェレ外相が激しい調子で批判した裏には、北朝鮮を野放しにすれば欧州に近いイランが勢いづくおそれがある との判断がある。北朝鮮封-じ込めには中国とではなく、日韓と組むことが不可欠。 東アジア情勢は欧州の安全保障にもつながる。 一方、日本にとって、欧州で存在感を飛躍的に高めたドイツを失えば損失は計り知れない。日本と欧州連合 (EU)は経済連携協定(EPA)に向けた交渉を始めるが、ドイツを後ろ盾にすれば 進展は早い。日本を巡る領土問題では、ドイツが少なくとも中立の立場をとり続けることが日本の利益となる。対中向け武器禁輸を解除するかどうかの議論でも、積極派のフランスを押しとどめているのは、慎重派のドイツだ。 あまりにも冷え込んだ日独関係にドイツ経済界には危機感が広がる。老舗プライベート・バンクのバンクハウス・メッツラーは「日独産業協会」の幹事役を引き受け、民間レベルで日独の相互投資の後押しに乗り出した。在日ドイツ商工会議所は、技術協力の促進を目指して「日独企業サミット」を開いた。そうした動きが大きな流れとなって両国を再び結びつけられるのか。 欧州の「域内大国」になったドイツと、再起を図る日本.ライバルであると同時に、協力できるパートナーであるのが日独関係にふさわしい。

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