2013年5月24日金曜日
5/20ふくしま集団疎開裁判の会 ヤブロコフ博士 郡山講演会 文字おこし(講演部分)
http://blog.goo.ne.jp/flyhigh_2012/e/c2ddc3b148e8f37b1b4ea74152d1cc22?fm=rss
ふくしま集団疎開裁判の会 郡山連続講演会【第2回 チェルノブイリ被害の全貌~福島への教訓】
講師 アレクセイ・V・ヤブロコフ博士.
こんばんは。今日は書を出してくださいましてどうもありがとうございます。皆様と一緒にこの場にいることができるということを嬉しく思います。ではこの本がそもそも誕生した経緯というものを少しお話しをさせていただきます。
2005年つまりチェルノブイリの事故から20年経とうとしている時でありますけれども、IAEA国際原子力機関そしてWHO世界保健機関がチェルノブイリ事故の報告書という大変厚い本、報告書を出しました。その報告書に書かれていたことというのが、私を含めた私の友人達が、自分の目で見、自分の耳で聞いてきたことと余りにかけ離れていたということに驚いたわけであります。
そこで私たちは、自分たちで独自の本を書こうということを決意いたしました。私はソビエト時代から国会議員を努め、そしてもともと生物学者であります。またロシアという自分の国の市民であるという自覚を持っています。
そして私が友人と呼んでいる人たちでありますけれども、例えばワシーリ・ネステレンコという人がいます。この人は物理学者であり、ソビエト時代の移動式の原子炉というものが設計された時の、設計の総責任者を努めた人であります。
そういった人たち特にこのワシーリ・ネステレンコさんと一緒に、中心になって自分たちで(聞き取り不能)できたこと、そういう事実をまとめた本を作ろうと決意したわけであります。その後、福島の原発で事故が起きたわけであります。そしてあの事故、それ以降の日本で起きていること、状況ということはチェルノブイリの事故のあとにソ連で起きたことの繰り返しであるという点があまりにも多いわけであります。そこでチェルノブイリの教訓ということを今一度私たちが思い出し、そして噛み締めるということはとても大きな意味があるのではないかと今私は思っています。
さて、日本語版が先日出たわけであります。沢山の方が翻訳をしてくださいました。その翻訳に従事してくださった人々、ひとりひとりに深く心からのお礼を申し上げたいと思います。純粋に翻訳の期間だけで1年半かかったという大きな作業であり、とても忍耐強く作業をしてくださいました。そしてまたこの本を日本語で日本で出してくれた日本の出版社にも心からお礼を言いたいと思います。
さて、今日のこの会に参加してくださっている皆様には、主催者のみなさまから私の以前の報告のスライド集というものを日本語にして配布をしていただいております。これは私が今日講演するにあたりまして大いに助かるものでありますので、チェルノブイリのことについてはもちろんお話をしたいと思いますけれども、福島、そして今後福島を含めて、日本でどうなるのか、何をすればいいのかということにより多くの時間を割く講演会にしたいと思います。
さて、これから私は座ってお話をさせていただきたいと思います。足の膝が痛みますので。長く立っているとちょっと辛いので座ってお話をさせてください。
さて、私たちがこの本を作るにあたりまして、参考にしたもともとの文書の数でありますけれども、チェルノブイリについて4万点あるいはそれ以上の本というものが出されていますけれども、当然その全てを把握する、目を通すというのは不可能でありました。しかしそのうちの5千点に関しては私たちは実際に参考にしました。
そしてチェルノブイリの事故以降、世界で出版された、チェルノブイリの事故その影響についての本という中でも最も幅の広いものを網羅した本というのが私たちの本であるということを自負しております。
そしてこの日本語版でありますけれども、本を手にとった方は既にお分かりかと思いますけれども、索引がありません。これは残念なことでありますけれども索引を作るということは、技術的にも難しいことでありますし、またページ数が増えてしまうということで出版社の方からのいろいろな意見もあったというふうに聞いておりますが、しかし電子の形で、ネットを参考にすれば索引を見ることができるというふうに今後の作業でしていってくれるという話を聞いています。
索引(用語解説) https://docs.google.com/document/d/1xDRQv10iM84G3n5dkkVVrbHFBcQEQg__EtU_9vYhq_I/edit?pli=1
さてこれから私、具体的な例をいくつか挙げて説明をしたいと思います。この場で説明をする例はごく数が限られたものでありますけれども、本を見ていただければ非常にたくさんの例が載っているということが分かっていただけると思います。さてガンの罹病率でありますけれども、全世界で伸びている、増えているという事実は確かにあります。しかし放射線による汚染度が激しければ激しいほど、ガンの罹病率が高いということはこの数字が示しています。これは岩波の本の140pに挙げられている図6.2であります。
さて、こちらはチェルノブイリの事故のあとの甲状腺のガンの罹病率ということで、ベラルーシの例になっております。いま左下のグラフで説明をしたわけでありますけれども、これは岩波の本では139pの図の6.1ということになっておりまして、この直線になっているのが、甲状腺がんの発症の推測の伸びで、将来こうなるという推測の数字であったわけであります。実際どうだったかと言いますと、その上になっていますね。白い丸い点を結んだという状態になっております。従ってもともとの予測よりもはるかに伸びた、発症の数が増えたわけです。
こちらは岩波の本の158pの図の6.21 乳がんの罹病率でありますけれども、チェルノブイリ以降の汚染に関しましても、汚染の著しい地域、それほどでもない地域といって、地域ごとにスポット状も含めて異なっておりまして、日本でも福島以降、汚染の状況というのは各地域によって異なっているわけであります。このグラフが示しているのは、この上の大変にガンの罹病率が伸びている州、日本の県に当たりますけれども、そこは汚染が著しかったところであります。従って汚染が著しいところでは、乳がんの罹病率もはるかに高くなっているということを事実があらわしているわけであります。
さてチェルノブイリ以降でありますけれども、罹病率が高まったというのは、癌がもちろんそうでありますけれども、癌による罹病率の高まりというのは、すべての罹病率の高まりの中の10~15%に過ぎません。つまり癌以外の病気の罹病率、発生率というのも、チェルノブイリ以降は高くなり、これは日本でも同じ状況になると私たちは考えています。
これは岩波の本では97pに載せられています図5.9、ロシアの一つの州を例にとった流産率の比較であります。これはリクビダートルとロシアで呼ばれているのが、チェルノブイリの発電所の事故のあと事故処理に当たった人たちのことであります。
そのロシアのひとつの州における、リクビダートルの家庭における流産率とその州の平均の数字を比較したものであります。そして見てみますと、このリクビダートルの家庭においては、最初の年は流産率が非常に高くて、そして通常の平均の数字までに戻るには5年~6年かかったのであります。このソビエトのチェルノブイリの事故以降、事故処理に当たったリクビダートルという人たちは医学的な健康追跡調査がかなり良く行われて、またデータもきちんと残っていたというケースであります。
これは先天性の発生異常ということで、大変に悲しい事実であるわけですけれども、これはウクライナのある地区でありますので、州、日本の県に当たるものの中のまたもうひとつ小さい地域ということで、これは具体的にルギヌイ地区というところで、人口2万人のところであります。そこで生まれた先天性の異常のある新生児の数の実数でありまして、86年4月のチェルノブイリ事故以前は、2万人あたり多くても5人のそういった子供たちが生まれていたわけですけれども、チェルノブイリの事故以降ですけれども、急激にそういった先天性異常のある子供が生まれる実数が上がりました。そして事故から5年、6年経った1992年に著しく、そういった写真にみるような異常のある子供たちの生まれる数が増えました。そしてそれ以降も、事故以前よりは高い実数というのが出ているわけです。
さてこちらでありますけれども、先天性異常のもうひとつの例、21トリソミーつまりダウン症候群ということになります。これは岩波の本では65pに出ているものであります。上のグラフがベラルーシ、下のグラフが西ベルリンであります。これはチェルノブイリの事故のちょうど9ヶ月後に、ダウン症の子供が生まれる率というものが急激に高まったということがこのグラフそれぞれに示されています。そして事故から何年経ったあとでも、事故以前よりはダウン症の子供が生まれる率が高いということがこの数字で示されています。
そしてこちらは、チェルノブイリ以降に起きた健康障害、そして罹病率というものの中の水晶体の混濁、そして両方の目の水晶体が同時に混濁するというものであります。これはチェルノブイリの事故以降、このグラフに関しては、岩波の本の112pにあげられている、「ベラルーシの子供における両眼性の(両方の目の)水晶体の混濁」ということですけれども、この現象というのは日本でも必ず起きる、すでに起きているかもしれませんし、必ず起きると思いますので、こういった水晶体の混濁ということに関しても、子供さんたちに関して注意を払って下さい。
さて、こちら英語にはなっていますけれども、チェルノブイリの放射線照射に由来するところの障害というので、たとえば一番最初に書いてあるのが、血液と血管系の病気が出てくる、内分泌系の病気も出てきます。免疫系、呼吸器系、消化器系ということで、ほとんど体の全てにわたるところに障害が出てくるということが事実としてあがっています。
さてこちらは、岩波の本では171pに書かれております「乳児死亡率の変化」の異常な状態であります。
つまり1才未満の子供たちの死亡率ということで、左側のグラフがドイツ、右側がポーランドであります。両方ともソビエトではないヨーロッパの国ということになりますけれども、それぞれチェルノブイリの事故から1年後になりますけれども、この乳児の死亡率というものが異常に高くなっているというのがこの斜線でかかれているところであります。
これは統計的にとられた数字ということ、そして予測の数字というのが横の点線で書いてあるわけですけれども、予測の許容範囲の最大数字、それをはるかに超える乳児死亡率というものが出てきたのが、チェルノブイリの事故から1年後であります。
さてこちらもまた、新生児の死亡率ということで、岩波の本では171p、172pにあげられているものです。先ほどお見せしたグラフというのは、学術的な報告書のグラフであります。
こちらに関しては4つの国、ノルウェー、スイス、スウェーデン、フィンランド、それぞれの国の政府が毎年出している国民の生活に関する統計という数字、それをグラフにしてみたものであります。それぞれの国で、実線そしてチェルノブイリの事故以降の何年間かは点線で書かれているのは、新生児の死亡率の予測図ということであります。
それぞれの国で新生児の死亡率は年々下がっていくということが予測されていて、チェルノブイリの事故以降の期間というのは、その予測通りになっている訳ですけれども、1986年のチェルノブイリの事故以降のおよそ5年~6年間というのは予測の数値よりもはるかに高い新生児の死亡率となっております。この直線が点線になってる部分の上の部分というのがその期間であります。
そして私たちはWHO世界保健機関に対しまして、チェルノブイリの事故以降、ヨーロッパのいくつもの国々において新生児の死亡率が異常に高くなった期間が明らかにあると、これを説明してくださいと求めているわけですけれども、いまだに回答はもらっていません。
さて、こちらの図でありますけれども、とても重要なグラフであると思います。岩波の本では179pに載っている図の7.22でありますけれども、これはロシアの6つの州、日本の県に相当する6つの、特にチェルノブイリの事故による汚染が著しかった州とそれ以外の地域というものをくらべたものでありますけれども、これはその死亡率をくらべたものであります。
これを見てみますと基準というものでありますけれども、1平方キロメートルあたり1キュリーというものをこえた地域においては、死亡率というものが非常に高いということを示しています。
そしてこちらのグラフでは事故以降の13年間というものが主なこの図で示される領域となっているわけですけれどもこの比率というものを、あるいは指数というものを、では全世界でチェルノブイリの事故の影響で亡くなった人は合計何人いるのかということを私たちは計算しました。これはサンクトペテルブルグで出版された本で私が書いたものでありますけれども、これはもちろん計算は概算ということになりますけれども、しかしチェルノブイリの事故以降20年間で、80万人から100万人が全世界で事故があったがために亡くなったという数字を私たちは計算の数値として出しました。
そしてこれはロシアの地方をくらべたわけでありますので、チェルノブイリ以降の放射線による汚染の状況以外の条件というものはみな同じであるわけです。つまり経済的な生活水準や、社会保障がどう整備されているか、また医療機関がどういう形で整っているかということはロシアの地域で同じであるわけです。
原子力関連施設そして原子力産業のさまざまな機関で仕事をしている医学の専門家、あるいは実際のお医者さんたちという人たちがたくさんいるわけですけれども、そういう人たちに対して、私を含めた私たち研究者が、「この事実を説明してください、放射線による汚染以外にこういった死亡率の、あるいは死亡数の違いというものが説明できますか」と何回も問いかけているんですけれども答えはもらっていません。
さて、この原子力産業の人たちが、私たちのような研究者の研究内容に反論するにあたって始終言うことは、次のようなかたちであります
「汚染が著しい地域においては、さまざまな病気の罹病率というものは増えてはいる、ただそれは人々のあいだに‘放射線恐怖症’というものがあり、放射線を怖がるがためにひとりひとりが自分を心理的に追い詰めてそのために自ら病気を引き起こしているのだ」というふうに言うわけです。
しかしチェルノブイリの事故のあとで、放射線による汚染が著しい地域では、カエルやツバメ、あるいはノネズミといいものが生息を続けており、人間に見られるのと同じような病気の症状、体の様々な障害というものをみせているわけです。カエルやツバメに放射線の恐怖症があるでしょうか?ないですね。
そしてチェルノブイリの事故によって放射能で汚染されている地域というのは程度の多少にかかわらず、動植物や微生物といったものに突然変異率が高いということが結果として出ています。そして汚染度がより高ければ高い程そういった突然変異の率が高いということもすべての調査結果が示しています。
さて、ではチェルノブイリの教訓に移りたいと思います。
教訓その1「放射線の状況というものは安全です」という当局の公の宣言を決して信用してはいけない。」
教訓その2「空気・水・食料品に関して政府から独立した形で放射能をモニタリングするシステム、体制を確立しなければいけない。」
教訓その3「体内の放射線核種ということに関してつまり内部被曝に関して政府から独立したモニタリングを確立しなければいけない。」
ということです。
IAEA国際原子力機関、これはなぜ嘘をつくのでしょうか?そしてWHO世界保健機関、ここもなぜ嘘をつくのでしょうか?
これは1959年にWHOとIAEAが協定を結んだからであります。この協定があるがために、WHOはヒポクラテスつまり医者の誓いというものに反した形で、放射線の被害、放射線が人に害を与えるという状況があった場合は、IAEAとの話し合いなくして、そこからの了承を得ることなくして事実を公表してはいけないという義務を負ってしまったからです。
WHO国際保健機関でありますけれども、本部はジュネーブにあります。この写真の後方に見える建物ですけれども、6年前からこのジュネーブのWHOの本部の前では、毎日毎日でありますけれども、ピケがはられています。これはWHOに対しまして、「自分たちの医師の誓いというものを思い出してください」「チェルノブイリについて嘘を言い続けるのをやめなさい」「チェルノブイリについて真実を語ってください」ということを求めるものであります。
私もジュネーブに行くたびに、このピケに参加してるんですけれども、一番最近参加した時には、このWHOに対して、「チェルノブイリと福島についての真実を述べなさい、嘘をつくのはやめて欲しい」という言葉に変わっていました。
スイスそしてジュネーブを訪れる機会がある方もいらっしゃると思います。そのときはここの団体と事前に連絡をとって、自分もピケに参加すると言っていただき、1時間でもいいのでこのピケのメンバーになって連帯感を表明してくれれば大変に助かります。つまりWHOに対して、彼らが嘘を恒常的についているという状態に反対をする、真実を語ってくれと求めるピケについても参加してください。
さて、チェルノブイリ以降のこういった機関の行動というものでありますけれども、それを思い出してみたいと思います。「危険というものはありません、将来も危険な事態にはなりません」ということを言い続けていたわけです。そして事故が発生してから7年、8年、10年経ってはじめて、「いや、危険はありました、そしてそれ以降の危険というものもあったわけであります」というわけです。
そして福島の事故以降、どうだったかといいますと、こういった組織というものは、「危険はありません、そして今後の危険もないでしょう、少なくとも目に見えるような危険はないんです」と言っているわけです。ですから将来、「かつては間違ったことを言っていました」ということになると思います。
さて、それでは、福島についてお話をしていきたいと思います。もちろんチェルノブイリについて忘れることなくということであります。福島についてお話をしていきましょう。こちらでありますけれども、新生児の死亡率というものであります。この左側の2つの上と下のグラフというのが日本について、そして右側がドイツについてということになります。
これは私の知人であるところのドイツ人の学者アルフレッド・カルブレインという人が、日本の公式の統計の数字を使って作成したグラフであります。ドイツに関して、この縦の点線になっているのが、チェルノブイリの事故が起きた1986年の4月であります。その事故から1年後、統計的に予測できる数字よりも、はるかに高い新生児の死亡率になっているわけです。
左二つのグラフを見てみますと、この点線になっているのが2011年3月の福島の事故であります。その事故から1年の間ですけれども、新生児の死亡率が、これは日本全体の数字でありますけれども、統計的に予測できる数字よりも高いものになっているわけです。
さて、こちらでありますけれども、出生数、つまり、生きて産まれた子供たちの数の変化ということであります。左の縦2つが福島県、そして右側の縦2つがキエフ市、ウクライナの首都のキエフということになります。
キエフを見てみますと、1987年、チェルノブイリの事故のあとから9ヶ月後というのが縦の実線が引いてあります。福島県に関しては2012年の年の初め、ですからちょうど福島の事故のあとから事故後9ヶ月後の数字ということになります。どちらを見ても、生きて産まれた子供の数というのが、事故から9ヶ月後に著しく減っているというのが数字であらわれています。
さて、岩波から日本語訳ができた私たちの本に書かれています、チェルノブイリの事故のあと何が起きたのかということを手引書として活用して、日本の未来について予測をしますと次のような形になります。これはチェルノブイリの事故のあとに実際に起きたことで、日本ではこれから1年、2年、3年後に起きるということになります。
まず染色体の突然変異というものが増えます。先天性の異常というものも件数として増えていき、また新生児の死亡というものも高くなるでしょう。白血病というものも増えていきますし、またさまざまな形でのさまざまな臓器の癌というものも増えていくと予測されます。
そして男子の精子の数については減少していき、また生まれる子供の性別の比率が変化をして、男の子が生まれる率というものが減少をしていくと、いうことが必ず日本でも起きると私は考えます。
さて、チェルノブイリの事故と、福島の事故それ自体をくらべてみますと、事故によって放出された放射性物質というものは福島の事故の場合チェルノブイリの1/2である、1/3であるということが言われています。
しかし、私たちが注目すべきなのは、どれだけ放出されたかということではなくて、それが実際どれだけ人に影響を与えるかということであると思います。人口の数、人口密度ということをくらべてみますと、チェルノブイリ地区の周辺に住んでいる人々の数よりもはるかに2倍3倍の数の人々が福島には生活をしているわけであります。
チェルノブイリの事故の影響というもので、予測がつかなかったもののひとつについてお話をしたいと思います。これは土壌などの汚染ということでありますけれども、事故から7年8年経ちますと汚染の度合いというものが落ち着いてくるだろうというふうに予測され、実際そうなっていたわけであります。しかし、事故から7年8年経つと突然でありますけれども汚染度が高まったという地域がいくつも出てきました。なぜなのか、謎であったわけですけれども、その謎は簡単に解けました。放射性の核種というものが土壌のより深いところに落ちていったわけでありますけれども、事故から7年8年経ちますと植物の根がたくさんある深さにまで達してしまって、植物の根が放射性物質を吸い上げて地表に出してしまって、汚染度が高くなったという事実がありました。
さて、それでは今後でありますけれども、個人のそして社会全体の健康に関する指標というものについて考えていきたいと思います。「平均的なミリシーベルトは~である」という数字を当局は出したがるわけでありますけれども、それは各個人の健康に関する基準とはなりえません。それぞれの人がどれだけ今後健康であるかということを判断するというのは、具体的な事実、数字で判断ができます。それは各個人の染色体の状況について検査をする、また目の水晶体の状態について検査をするということで、費用がかかるということはありますけれども、しかし出る結果というものは本当に正確なものであります。
またたとえば唇の組織の表面を検査する、あるいは尿を検査する、男性に関しては子供も含めて、精子の状態というものを検査するということになります。そうすればその個人個人がどれだけ被曝を受けているのか、そしてどこに受けているのか、そして今後どうすればいいのか、何もしなければどうなるのかということが正確に分かるわけです。従ってその「平均的なミリシーベルト」という数字を基準にはしないでいただきたいと思います。
さてそのミリシーベルトでありますけれども、10ミリシーベルトであるのか、20ミリシーベルトであるのか、あるいは1ミリシーベルトであるのか、ということで基準を当局は動かしたりするわけでありますけれども、こういった数字は各個人個人のリスクというものを判断する材料にはなりません。といいますのは、地域全体の、かなり大きな地域のすべての人にとっての平均的な環境数値ということしか意味しないからです。
そしてこの公式の見解というものは、被曝線量というものを基準にしたがるわけでありますけれども、それも事故当初の最初の数時間、最初の何日間の被曝線量はいくつであったかということを過去にさかのぼって測ろうとするわけであります。ですからたとえば事故当初あるいは事故後の数日間、あなたはどれだけ屋外にいましたか、何時間いましたか、何時間何分いましたかということを問うわけですけれども、それを個人個人が覚えているということ自体が不可能だと考えるべきであります。
またホットパーティクルと呼ばれる放射性の微細な物質でありますけれども、それがどこに落ちているかというのは、たとえば2mの距離が離れていれば、癌にその後なるような非常に強いものである場合もあるし、2m離れれば弱くなってしまうものであるかもしれない。そして地域全体の汚染度ということに関しましても、スポット的になっているので、たとえばこの会場ぐらいの面積のところが非常に汚染されてるという場合はありえます。
でもそこから何十メートルか離れてしまうと、あるいは100メートル離れると、人体に与える影響というものはないに等しいというほど影響が弱まるということも考えられるわけであります。
そしてそもそもシーベルトというものは、3種類か4種類の放射性核種だけを念頭に置いて測ったものでありますけれども、事故が起きますと、そして実際に事故が起きたわけですけれども、何十という種類の、もしかすると何百という種類の放射性核種が放出されて、そういったもの全体をまとめて考える、そしてデータを収集するということがそもそも不可能であります。
従ってその「平均的な線量」というもの、それは大きな病院の平均気温はいくらだから各病人に影響はない、あると言うのと全く同じで意味がないと私は考えます。
さて、個人ひとりひとりの放射線の負荷というのがどれだけあるかということを正確に測るということは可能であります。
まず歯のエナメル質というものを少しの量で測ることができます。これはレンガにしろタイルにしろ、その結晶構造を持っているというものは、放射線が通過すると変化をするということがありますので、このテストによって誤差が10~15%でどういう放射性物質が体を通過していったかということが自分の歴史、ヒストリーというものがわかります。また染色体でありますけれども、染色体、これは被曝をすると数時間で染色体というものが変化をします。そして安定した異常と不安定な異常というものが起きて、不安定な異常というものは数年間で消えますけれども、染色体の安定的な異常というものはずっと残ります。ですからこれも検査することによって、どれだけ個人に放射線で負荷がかかっているか測るということができます。
また目の水晶体の混濁ということもこれもどれだけ放射線で体に負担がかかっているかということを正確に図るということが可能にします。またホールボディカウンターというものがあるわけですけれども、これもとても有効であります。確かにホールボディカウンターというのはガンマ線のみしかチェックできないんですけれども、それでもガンマ線を基準にして、この個人の全般的な状況というものを理解することができます。そして子供に関しては体重1kgあたり20ベクレルであると、そして大人であれば成人であれば体重1kgあたり50ベクレルであれば、何らかの措置をとらなければいけないという基準であると私は思います。どういう措置を取るべきかというのは、さまざまな本、手引書が出ています。
さて、チェルノブイリの事故でありますけれども、この影響というものは7世代に及ぶというふうに言われています。福島に関しましても複数の世代に関して、この事故の影響というものが実感として感じられる、そういった影響があるだろうということを考えています。
さて、知識というものは力を与えてくれるといいます。確かに恐ろしい事態が起きたわけですけれども、いたずらに怖がる必要ないと私は考えます。正しく行動するということが必要であるわけです。つまりなんの危険もないと言っている人たちに踊らされては決していけないわけであります。恐ろしい事態が起きてしまったと、そして危険というものが現実にあり、なおかつ危険に対処する方法は具体的にあるのだという知識を身につけて行動していくということが大切であると思います。
さて、チェルノブイリの事故、福島の原子力発電所の事故この2つの事故の教訓でありますけれども、私はこれを言わないわけにはいきません。
これは原子力の平和利用と言われている原子力発電でありますけれども、核兵器が人類にもたらす危険と同等の危険を実際に人類にもたらしてしまっている、そのことを福島が完全に証明してみせたということであります。
さて、昨日そして今日の日本で出ている新聞などで、日本の政府が複数の原子力発電所の再稼働というものを計画しているということを読んでいます。これは正気の沙汰ではありません。狂気である、狂っているというふうに私は思います。
といいますのは、正常に運転されていると言われている原子力発電所に関しても周囲の人々、自然に対して異常な脅威を実際に生み出しているということを証明している事実というのが実にたくさんあるわけです。このテーマに関して私は独自のまた別個の講演をレクチャーをよめる、それだけの十分な資料が集まっているわけです。
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