2012年3月15日木曜日
【重要】仏IRSN「日本政府による被曝調査に大きな“手抜かり”が」
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/irsn1irsn228-b1.html
+http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/irsn2irsn228-04.html
フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)「日本政府の被ばく調査は福島事故の健康被害を計測せず」(1)/IRSN(2月28日)
福島原発事故の発生から1年を迎えた今月、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は『福島原発事故より1年』と題して、福島原発の現状、および事故が人の健康や周囲の環境に与えた影響を概観・分析する報告書を発表しました。今日は2月28日に開かれた概要説明の記者会見から、特に事故の健康への影響を扱った「2012年2月時点での福島原発事故による健康への影響」の要旨をご紹介します。
特に下記の3点が今回の要点です。
• 現在日本政府によって実施・計画されている4つの疫学調査では、低量被曝の影響に関する新しいデータは得られるが、福島原発事故と健康被害の因果関係を証明することはほぼ不可能。
• 放射性セシウムによる被ばく状況を今からでも調査することが事故の健康被害を知るために有用であるが、日本政府はこれを実施する用意が無い。
• 東京電力は事故処理に関わる関係者(消防士、警察官、自治体関係者を含む)の被ばく状況について必要かつ十分な情報を公表しておらず、現状を科学的に分析するための大きな障害となっている。
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1. IRSN計量モデルを用いた被曝量の概算
IRSNによる計量モデルを使用して福島原発事故による被曝量を推計したところ、福島原発の南部40キロ圏の住民は3月11日から26日までの間に10ミリシーベルトを超える被曝を受けたと考えられる(但し1歳児が24時間戸外で過ごした場合)。
避難区域の外では、食品による内部被曝を除いた外部被曝は100mSv未満と考えられる。
2.日本政府による4つの被曝調査
日本政府は福島原発事故による住民の被曝状況を把握するべく、780億円をかけ30年間で下記の4種類の疫学(統計)調査を実施する予定。
(1) 福島県「福島県民外部健康管理調査」(外部被ばく線量の推計、対象200万人)http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240220gaiyo.pdf
現在のところ、浪江町、飯舘村、川俣町の住民約1600人についてのデータが収集され、14.5mSvの1名を除く大多数の住民が1mSv以下の外部被曝量だったとの中間結果が発表されている。しかし、全体の調査対象数に比べて非常に少ないサンプルによるデータであり、現時点で結論を出すことはできない。
(2) 避難民についての健康追跡調査(対象21万人)
健康診断と心理状態の調査。喫煙や飲酒、食習慣について調べ、個々人がもともと持っていた癌、白血病、心理障害の要因を調べると共に、時間の経過とともに発生するこれらの疾患をモニターする。その一環として、福島、岩手、宮城の3県に住む3万人の精神疾患についても10年にわたり追跡調査する。
(3) 福島県・妊婦と12歳までの子どもについての被曝調査(対象2万人)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201112270534.html
2010年8月から2011年7月までに妊娠を届け出た母親に対する調査票による調査。日本産婦人科学会が実施。子どもが12歳になるまで追跡調査を実施する。
関連調査:環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査」(エコチル)
http://www.env.go.jp/chemi/ceh/about/index.html
(4) 原子力安全委員会「小児甲状腺被ばく調査」(対象36万人)
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan067/siryo1.pdf
子どもに対する甲状腺がんの調査。3月26日までの時点で、いわき市を含む福島原発南部60キロ圏に居た子どもたちは、50mSvを超える放射線量で被曝した可能性がある(但し、24時間戸外にいた場合の計算量)。
被曝して数日のうちに被曝量を計測しなければ現状は把握できないが、今回の事故の後、計測は実施されなかった。今日では放射性ヨウ素による被曝量を知るには遅すぎる。大人についても同様である。
(その2に続く)
●出典: ジャン-ルネ・ジュルデン放射線防護副局長による記者会見(パワーポイントによる解説、フランス語)
http://www.irsn.fr/FR/base_de_connaissances/Installations_nucleaires/La_surete_Nucleaire/Les-accidents-nucleaires/accident-fukushima-2011/fukushima-1-an/Pages/5-consequences-sanitaires.aspx?dId=c08bb96e-cf42-4798-a34b-f647bdd05dea&dwId=ff994e1f-9e94-41b6-ac38-4877daa3b796
3.福島原発事故の処理にあたる関係者の被曝
東京電力によれば、これまでに250mSvを超える被曝を受けたのは東京電力社員6名のみ(最大678mSv)。また、公式には6名が死亡している。
しかし東京電力が発表したデータには、消防士、警察官、(自衛官)、民間会社の警備員、自治体関係者等が全く含まれていない。これらの関係者の被ばく量については全く明らかになっていない。
また、死亡した6名については、85%がマスクを着用していなかったためにヨウ素131を吸い込んだことが原因とされているが、こうした事実を確かめることは不可能であり、データの計測方法についても明らかにされていない。
今日、「東電フィルター」(東京電力による情報隠し)のせいで事故処理に当たる関係者の被ばく量、および被ばくによる健康への影響を正確知ることは非常に難しい状況である。東京電力に問い合わせなければ情報を得られない上、同社は十分な情報を提供していない。特に、公表データの計測方法等が明らかになっておらず、データの信憑性を科学的に確かめることができない。
4. 結論
日本政府は今後、780億円という巨額な予算を投じ、30年という長期にわたって4つの調査を実施する予定である。
しかしこうした疫学(統計)手法による調査では、今回の事故で起きた100mSv未満の被ばくについて事故と健康被害の因果関係を明確にすることは不可能である。
但しこれらの調査は、住民に安心感を与え、かつ低線量被爆の影響についての新しいデータを得るためには有用であると考えられる。
事故発生直後に周辺地域の住民、特に子どもへの放射性ヨウ素による外部被ばく量が計測されておらず、子どもたちの被ばく量は計測が不可能となってしまった(被ばくの被害を知るために重要な情報であり、計測を行わなかったことは大きな損失であると考えられる)。放射性セシウムによる被ばく量の計測は現在でも実施可能だが、日本政府はこれを実施することを予定していない。「健康診断」による(後追いの)調査のみとなっている(不十分であり残念)。
「東電フィルター」によって事故処理に関わった関係者の被ばく量やその影響を知るために必要な情報を得ることができず、憂慮すべき事態が起きている。(こうした東電の対応に対し、今回の報告書の発表者として)「非常に気分を害している」。
●出典: ジャン・ルネ ジュルデン放射線防護副局長による記者会見(パワーポイントによる解説、フランス語)
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