2015年3月9日月曜日

ドイツZDFテレビ ”原子力エネルギーのカムバック” エコノミーマガジン「マクロ」 エコノミーマガジン「マクロ」へようこそ。 フクシマの事故が起きてからやっと4年が経ったばかりです。 しかし、原子力はこれまでにないほど、推進派が増えているようです。 ドイツでは脱原発を決定したものの、これから原発に参入しようという国もあります。 例えばポーランド、またはトルコなどは、原発第一号を計画中です。 今日の「マクロ」の特集は、原子力ロビーがどれほど力を持っているか。 そして、政治がどれほどその後ろ盾となっているかについてです。 まずは日本から始めましょう。 教訓から学んだ国...といえればいいのですが、現実はどうやら違うようです 2013年11月 日本の安倍総理大臣は、事故を起こした福島の原発を前に世界に助けを求めた。 しかし彼は外国を訪問しては、日本の原子力技術売り込みに熱心だ。 彼は日本の原子力産業の外交セールスマンである。 陰に潜むビッグプレーヤーは、東芝、日立、三菱だ。 そして、とうとう受注にも成功した。 三菱はトルコで国内最初の原発4基の建設に携わることになった。 フクシマから4年、日本は晴れて国際的な原子力の舞台に返り咲いたというわけだ。 日本の原子力産業はこうして安倍という強力な代理商をみつけたのである。 彼は2020年オリンピック東京での開催誘致で世界に向けて、日本の新しい信念を表明した。 フクシマについてお案じの向きには、私から保証をいたします。 状況は統御されています。 コントロールされている? いまだに事故の起きた原発では、深刻な突発事件が起きている。 そして地下水の汚染をどうすればいいのか、いまだに答えは出ていない。 日々400トンの地下水が原子炉建屋に、入り込んでは、高レベル汚染水となっている。 東電はこの水をできるだけ原発敷地内の巨大なタンクに溜めようとしているが、このタンクが漏れることがわかった。 そこで今度は、建屋周辺地下に凍土壁を作って水を止めようと計画したのだが、しかしまだ凍ってくれない。 フクシマはいまだに放射線に覆われている。 それでも政府は、避難していた住民たちを原発周辺の立ち入り禁止区域に戻そうとしている。 まず試しに30世帯が一時的に自宅に戻った。 もう線量はそんなに危険ではない、というのだ。 反対派は、東電がこれで避難した住民たちに生活費を払わないつもりなのだと批判する。 最悪事故から4年。住民たちの帰還は、当然のこととされようとしている。 それで日本政府は2014年、脱原発政策からの脱出を閣議決定した。 まもなく川内原発が、事故後第一基目として再稼動されることになっている。 原子力再稼動により政府は、貿易収支を改善したいと願っている。 安価な原子力がなくては、日本は高い石油やガスを買わなければいけないから、というのだ。 しかし原子力に戻るというのは何より権力ある日本の原子力ロビーの勝利といえよう。 そこには福島第一原発を操業していた東電も含まれている。 この大会社は、事実上国営となって、あらゆる手段で生きながらえている状態だ。 「主要な銀行が東電に事故後、巨額の金を東電に貸し出しました」 「ですから東電が破産ということになれば、これらの銀行がその金をすべて失うことになる」 「それでなにがなんでも、その事態は、避けなければと、経営者たちは思っているわけです」 「それ以上に、独占業者である東電は『原子力ムラ』と我々が呼んでいる」 「財界・政府・学界・官庁・報道を含む巨大ネットワークの第一線のグローバルプレーヤーなのです」 フクシマ事故後、菅直人はこのネットワークを粉砕しようとしたが、この原子力ムラの権力がいかに強いか政治と経済の結びつきがいかに絡み合っているか思い知らされることとなった。 彼は危機管理で大きなミスを犯したと罪をなすり付けられた。 その後の調査委員会で彼には罪がないことは明らかになったが、彼はそれでも首相の座を下りることを余儀なくされた。 そのあとを継いだ安倍の政治は、完全に原子力推進路線だ。 市民の意見とはしかし違う。 昨年夏の世論調査では55%の市民が、原子力への回帰を拒否している。 しかしフクシマから4年、もうそのことは問題にもされないようだ。 日本の原子力ムラは、これまでの路線を一切変えていない。 これまでの路線を変えないというのは、事故を隠蔽したり、安全確認議事録を改ざんしたりすることも含みます。 それだけに、日本の原発業界が核技術を輸出しようとしているのが不安になります。 というのも、日本の企業が外国に行って国内と違う態度をとるとは思えないからです。 それでは今度はドイツに移りましょう。 ここでは「原発? お断り」と言っているのはいいのですが、そう簡単に原発は消えてくれません。 ドイツの原発業界の計画によれば、ドイツの納税者はこれから何十年間とわずらわされることになる予定です。 2011年夏、フクシマ事故から数ヵ月後、脱原発が決まった。 2022年までにドイツは脱原発を実現し、それまでに全原発を止めるというものだ。 問題は、原発操業者たちが、いかに廃炉を実現するかである。 ことに、その資金をどう工面するかだ。 バーデン・ビュルテンブルク州のオーブリッヒハイムにある原発は、ドイツ最古の原発で、すでに操業停止されてから10年が経つ。 ここで行なわれていることがもうじきドイツのどこの原発でも行なわれるようになる。 廃炉が着々と進められている。 ここの電力会社EnBwでは、ここの廃炉だけで、5億ユーロはかかるだろうと計算している エコロジカル・ソーシャル市場経済フォーラムのスワンティエ・キュッヒラー氏は、脱原発にかかる具体的な費用がどれだけになるか突き止めようとしてきた。 彼女は、費用を具体的な数字で表すのがいかに難しいか、知っている。 (エコロジカル・ソーシャル市場経済フォーラム・スワンティエ・キュッヒラー氏) 「今のところ、廃炉費用がどれだけになるか誰にもわかっていません」 「数字はあとからしかわからないのです」 「ただ、今現在もっている情報から、費用がどれだけ高くなるか見積もると」 「およそ480億ユーロはかかるだろうということができます」 ドイツには原発を操業している。 電力会社は4社だ。 ヴァッテンファル社、エーオン社、EnBwにRWE。 彼らには、廃炉と放射性廃棄物廃棄のための費用の引当金積み立てが義務付けられている。 これまでに約360億ユーロを勘定に入れている。 この金額で足りるかどうかわからないという以外にもう一つ問題がある。 「廃炉など後始末の処理をするための引当金は、ドイツでは、それぞれの企業の手元にあります」 「ということは、他の国で行なわれているようにどこかの基金などに支払われるのではなく」 「つまり企業はこのお金を、好きなように管理していいわけです」 そうした企業が経済的に行き詰った場合、ましてや、破産した場合にはその引当金も危うくなるということだ。 そしてエーオンではこれが懸念されることになってしまった。 12月にこのドイツ最大の電力会社はある発表で、世間を騒がせたからだ。 原子力と石炭・ガスの火力発電事業を切り離し、別会社に移すというのだ。 これらは、エネルギー政策変換にあたり、ますます収益が低迷するというのが理由だ。 これからは再生可能エネルギーだけに絞ろう、というのである。 (ヨハネス・タイセン、エーオン社の役員会長) 「我々はどの業務も怠るつもりはありません。どの義務も責任をもって行います」 「我々は未来に対し責任をもつということです」 しかし、エーオンが7つの原発でバッドバンクを設立しようとしているのではないかと懸念する人もいる。 最終的に、税金で救わなければならないことになるのではないかと、切り離された原子力事業の会社には、高い廃炉の資金調達ができなくなるに違いないからだ。 割が合わなくなった原発を捨てたいと思う。 電力会社の思惑の背後には、去年の春からのアイディアがある。 それはこうだ。 原発すべてを、その引当金ともどもある基金に移す。 そしてその基金は国が面倒を見る、というものだ。 これにより原発解体は国の責任となり、電気会社の責任ではなくなるというものだ。 エネルギー問題専門家のキュッヒラー氏に、とっては、これは選択の余地に入らない。 「電気会社が心に描いているような基金では」 「社会や税金を払っている市民が、事後負担額を払わされる羽目になる危険性が高いのです」 ドイツ政府はこれまでは、電力会社の原発事業のすべてを引き受けて、事後処理をしていく気は一切なかった。 最後に残るのは、脱原発でかかる費用の何に対し誰が責任を持つか、ということの争いだ。 ちょうどコストの話になりましたが、原子力エネルギーは常々安いと言われてきました。 確かに、原発のたくさんあるフランスでは、ドイツよりも電気に支払う料金はずっと格安です。 でも、その計算には、肝心の費用が、含まれていないのです。 というのも、何かがあったときの責任は、どうなっているのでしょうか。 たとえば原発の事故があった場合は? または、長期的リスクはどうでしょう? 核の放射性廃棄物は何百万年も放射能を出し続けるのです。 これらの問題に対しては、信頼できる費用見積もりというものが存在しません。 これからご覧いただくレポートでは、これらのリスクに対して、いつの日か必ず高い勘定書を突きつけられることになると考えている人たちをご紹介します。 ゴアレーベン、原子力エネルギーへの抵抗の土地だ。 ヴォルフガング・エームケ氏は、反原発運動のベテランの闘志だ。 ゴアレーベンで反対運動が始まって以来、彼は闘ってきた。 現在、使用済み燃料の輸送容器は、中間貯蔵所に入れることは禁じられているが、ここの人たちはとても懐疑的だ。 これまでに幾度となく騙されてきたこともあり、最終処分場を見つけたいドイツで、やはりゴアレーベンに白羽の矢が立ってしまうのではないかという不安が大きい。 (ヴォルフガング・エームケ、リューホフ・ダネンベルク環境保護市民グループ代表) 「その危険はかなりあります、なにしろここで、もう16億ユーロをつぎ込んできてますし」 「核のインフラストラクチャーがすでにできあがっています」 「それよりもっと恐ろしいのは、もう何十年もゴアレーベンに関する資料が」 「出来上がってしまっていることです。それで私たちは必死で戦っているのです」 ここの岩塩岩株がどうなるべきかについて、リューホフ・ダネンベルクの市民グループは、具体的にイメージしている。 彼らは、ここにあるすべての設備の解体を要求している。 2013年に「最終処分場探索法」が可決されたが、これによれば、この岩塩鉱山は、ゴアレーベンが最終処分場の候補地である限りは、開いたままにしておくことになっている。 しかし世界のどこにもまだ、無事操業を開始した最終処分場はない。 (ヴォルフガング・ケーニッヒ、連邦放射線防護庁) 「60年代に原子力エネルギーの使用を開始してからずっと」 「最終処分場に関する議論を交わしてきましたが」 「これがどんなに大きい問題であるかということを始めから全体で過小評価してきたといえます」 「比較的簡単な技術でそれが対処できるように考えていたのです」 「廃棄物ももっと処分が簡単だと思っていて、始めは海洋投棄などをしたり」 「まったく不適な場所で貯蔵したりしていました」 例えば、アッセがその例の一つである。 アッセは、古く落ちぶれた鉱山だ。 ここに60年代70年代にかけて、低中度放射能廃棄物がシステマチックに貯蔵された。 岩塩の採掘坑がそもそも廃棄物の貯蔵に、適しているかなどということは問題にもされなかった。 そしてアッセに水が入り込んだときは、それがまず隠蔽された。 かなりあとになって、ここにそもそも放射性廃棄物など、貯蔵されるべきではなかったのだということが、公にわかった。 (シュテファン・ヴェンツェル、ニーダーザクセン州環境相) 「ここアッセで私たちが経験していることは、ドイツ連邦全体で必要となっていることの」 「象徴であると私は理解しています」 「それだけに私は、新しく最終処分場を探す上で、このアッセでの経験から十分に教訓を得て」 「合意形成をしっかりすることを望みます」 これから12万6000ものドラム缶を回収しなければならない。 この回収はしかしとてつもない大事業だ。 世界でも他に例を見ない。 原子力時代での歴史第一号だ。 世界に例を見ないといえば、ゴアレーベンの反対運動もそうだ。 ここでは30年以来反対運動が強まる一方だ。 ゴアレーベンは反原発運動の象徴となった。 何度となく催される集会に、ヴェントラント近郊から訪れる農家の人たちは、反対運動には欠かすことのできない要素だ。 1995年に、高放射性の使用済み燃料棒9本が、入った初のドライキャスクが返還された。 周辺の住民、そしてドイツ全体から、反対運動の闘士が集まって、それを入れさせまいと抵抗した。 ここにはヴォルフガング・エームケもいた。 「我々の大きな目標は、このキャスク輸送にかかる政治的かつ現実的なコストをできるだけ高く吊り上げ」 「こういうことはおかしい、と誰もが思うようになることです」 繰り返し、激しい衝突が繰り広げられるデモをやる市民と警察の間では、ほとんど内戦に近い状況が見られる。 「彼らはまったく逆上してますよ」 「僕たちはもう何千という提案をしてきているんです」 「状況が少しでも緩和できるように」 「でも彼らは、放水やこん棒を振り回すことしか知らない」 エームケ氏のモットーはこうだ。 『今日アクティブに抵抗する方が明日、ラジオアクティブ(放射線)まみれになるよりいい』 この意見を共有するのが北ドイツの大地主アンドレアス・グラフ・フォン・ベルンシュトルフ氏だ。 ゴアレーベンの岩塩岩株のある土地も、彼の所有だ。 彼はこの土地を譲るなど夢にも思っていない。 ましてそれが最終処分場に指定される。 かもしれないなどもってのほか。 それでもう何十年も家族全員で、市民の抵抗運動に加わっている。 (アンドレアス・グラフ・フォン・ベルンシュトルフ) 「ここゴアレーベンで、ドイツの原子力政策のどうしようもない姿がはっきり見えます」 「ここが最終処分場としてふさわしくないことはもう誰の目にもはっきりしているのに」 「それでもこの中間貯蔵施設を見せしめに使って貯蔵していっています」 「それでどんどん波が大きくなってもう止めることができなくなるのを私は恐れています」 それでベルンシュトルフ家は、その所有下の岩塩を売り渡すのを拒否しているゴアレーベンの地下に放射能のゴミがないのは、彼らのお陰だと、周辺の住民のほとんどが思っている。 しかし、いい方向に発展するとは、ヴェントランド地方の人たちは思っていない。 今度また、26の使用済み燃料ドライキャスクが、ドイツに返還されるという話だが、一体どこにもっていけばいいというのだろう? (ヴォルフガング・エームケ) 「このことがはっきりしないのなら私たちがすることはわかっています」 「バック・トゥ・ザ・ルーツ、つまり、またデモ運動をするということです」 ここにいると、抵抗運動は絶対に、なくならないだろうと確信できる。 原子力エネルギーはたくさんのリスクを抱えているわけですが、それでも政治的には今、勢いがよいようです。 数日前プーチンはハンガリーの、問題の多いオルバーン・ヴィクトル首相と対談しました。 プーチンの手土産は、ロシア製の原発建設を締結する契約書でした。 原発を新しく建設したいと思う国が、いくつもある中で、脱原発を決める国はわずかです。 私たちの「マクロスコープ」で、概観を見てみましょう。 ドイツの脱原発は進んでいる。 2022年までに、もともと17基あった原発のうち現在残っている9機も操業を停止する予定だ。 ベルギーとスイスも脱原発を決定している。 オーストリアは、建設を終了した。 ツベンテンドルフ原発を一度も稼動しなかった。 そしてイタリアは、ヨーロッパで唯一、完全な脱原発を実現した国だ。 その他のヨーロッパではしかし、様子がまったく違う。 また放射性物質を扱うビジネスを再開しようと、思っている国もある。 例えばイギリスでは、フクシマ事故後も、変わらず原子力を主力エネルギーにすえている。 2014年の暮れ、英国政府は、何十億ユーロという保証を新原発に約束した。 新設される原発は2024年に操業開始される。 イギリスの原発に与えられる補助金は、EUからも許可を得ている。 EUいわく、何から電力を得るかはEU加盟国が、それぞれ勝手に決めていい、ということだ。 そしてポーランドは2020年までに、原発第一基を建設する予定だ。 そしてこの政策をポーランド国民の3分の2が賛成している。 原発で、ロシアからのエネルギー供給への依存をなくしたいというのだ。 ほぼ同じ意見なのがフィンランドで、現在第3基目の原子炉を計画中だ。 そしてフランスのモットーは、『原発? ええ、どうぞ』だ。 19基の原発が約75%のフランス国内の電力需要を賄っている。 そしてそれを少なくとも維持していくつもりだ。 そのほか、原子力産業の成長を待っている。 ところが世界にはいくつもある。 世界には現在合計で、430基の原発が操業されており、さらに70基が建設中だ。 そして欧州委員会は原発の推進を推奨しています。 フクシマから4年経った今、原発がなぜこんなに奨励されるのかについて、ここで物理学者のロータ・ハーン氏と話してみたいと思います。 ハーンさん、よろしくお願いします。 ハーンさんはもう40年以上原子力エネルギーに、取り組んでこられました。 そしてその内8年間、原子炉施設・原子炉の安全のための協会の会長を務めてこられました。 そのハーンさんにぜひうかがいます。 どうして今、原子力はいまだに、これだけ支持されているのでしょうか? (ロター・ハーン、原子物理学者) 原子力が政治で得ている支持は確かにまるで、魔力のようですね、少なくともいくつかの政府では、ここには野心がありますが、エネルギー保障が、できなくなるかもしれない予想とは関係がないと私は思います、これはなかなか伝えにくい問題です。 それから同時に、原子力産業の持っている力が今でも甚大で、政治に対しても多大な影響力を及ぼしていることとも関係があります。 そしてそれが、たくさんの国でそうだとおっしゃるのですね? はい、日本についても先ほど、お聞きになったとおりですし、ドイツでもまったくそうでないわけではありません。 原子力産業は原発で過去数十年の間に、かなりの収益を上げてきましたから、もちろん、できればそれを、やめたくないのです。 でも、政治的に追い風を受けていてもなお原発にはもう未来がないとお考えですね。 それはどうしてですか? 原発をどんどん建設している国といえば、中国、インド、ロシアです。 そのほかにはあまり新しい建設や計画は、ありません。 同時に、これから15年の間に、100以上の原発が操業停止になる予定です。 ということは、事実上、原子力産業の力は先細りの運命にあるのです。 でも、どうしてそれが衰退といえるでしょう? 私たちは今すぐにも原子力エネルギーなしでも生きられるのでしょうか? 世界全体の電力供給問題などの不安も含めて、原発はまだ必要なのではないですか? 原発からすぐに撤退できない国は、もちろんいくつかあるでしょう フランスのように、ドイツではそんなに長くかかりません。 ベルギーも同じです。 東欧ではもちろん、ウクライナ危機で、とても憂慮に値する状況です。 彼らはもちろんエネルギーカルテルから、独立したいわけですよね。 それがレポートでも見てきたように、日本でも中心となる議論でした。 でも、この主張を簡単に、斥けるわけにはいかず。 原子力産業はこれを根拠に、増強していくのではないですか? いいえ、原子力エネルギーはエネルギーカルテルへの依存から解放してはくれません。 むしろその反対です。ドイツのエネルギー政策変換で計画しているように、独立の道は、エネルギー供給を地方分散の構造に作り変えていくことにあります。 原子力発電は実はそう安価ではない、ということを私たちは話しました。 そうは思ってない人がかなりいるわけですが、「マクロ・オンライン」のインタビューで、原子力は非経済的であるとおっしゃっていますね。 ということは、ただ安いだけでなく、もう一歩踏み込んで言ってらっしゃるのですが、原発の何がそんなに非経済的なのですか、まず新しく原発を新設する際の建設費用が、非常に莫大なので、その元を取るためには何十年と稼動しなければなりません。 しかしその間に何かずれがあれば、もう割が合わなくなります。 それを気がついた国もいくつかあります。 さらにインタビューで、一般市民の犠牲の上にしか成り立たない、とおっしゃっていますが、それをもう少し具体的な数字や例で、表していただけますか? イギリスがいい例です。 ヒンクレー・ポイント原発プロジェクトが、生まれた背景には、イギリス政府が、電力会社に対し、電力の固定買取価格を、保証するといった事実があります。35年間の間です。 この原発が2025年に稼動を開始して、それが2060年まで固定買取価格が、保証されるというのであれば、それは実に危ういものといえますし、負担を担うのは一般市民です。 疑わしいといえば、非経済的とも、おっしゃいましたが、今週、フランスの原子力企業アレヴァ社が、記録的な欠損を出したことが明るみに出ました。 これもハーンさんがおっしゃっていた。 不経済から来ているのでしょうか? もちろん、関係があります。 アレヴァはフィンランドに建設する原発で、固定価格をオファーしました。30億ユーロです。 しかし費用はいまや90億ユーロに、膨れ上がってしまいました。ということは3倍の費用です。 アレヴァでは何十億ユーロという金額を準備金として用意しておかなければならないのです。 それはもっともな論拠で、だからこそ、原子力エネルギーを続行するのは、不経済だというわけですが、それでも政治的な後ろ盾があるのは、最初に挙げてくださった理由だけですか? 政治に対し影響力が強いというほかに、なにか理由はあるのでしょうか? そうですね、原子力ロビーの影響力が、非常に強いことと政治家の中に、これを威信にかかわる問題と思っている人がいます。 トルコやハンガリーの例が、出ましたが、これらの政府は、現地では反対派も多いのです。 でも欧州議会ですら、原発建設を、推奨していますが、まだ原子力ロビーが、ブリュッセルやその他のヨーロッパの首都に強く働きかけているということです。 実際にはヨーロッパで、3つの原発が建設されていますが、建設費用と建設期間に関して言えば、悲劇的な結果が予想されています。 原子物理学者ロター・ハーン氏に、原子力エネルギーの未来について、語っていただきました。 実際は、原子力には未来はないと信じていられますよね。 今日はおいでくださって、ありがとうございました。 まだ質問があれば、この番組の後オンラインでマクロをごらんください。 ロター・ハーン氏がブログで視聴者の質問に答えてくださいます。 インターネットアドレスはご覧のとおりです。 世界は、フクシマからなにを学んだのでしょうか? どうやら何も学ばなかったようです。 不安定な地域に原発を建設しようとしているのを見ると、そう思わずにいられません。 そしてトルコも国内初の原発を、よりによって、地震の危険がある地域に建設する計画です。 メルスィン近くのトルコ南部沿岸、人の踏み入らぬ自然に、絵に描いたような入り江、観光はわずかで、農業を営む人たちがいる。 ここにロシアの国営原子力企業ロスアトムがトルコ初の原発を建設するという。 敷地に通じる自動車道路が今、整備されている。 このプロジェクトはしかし、住民たちには快く受け入れられていない。 環境評価の公聴会は、2013年、あまりに激しい抗議と反対運動のため実現されなかった。 子供たちや孫に毒を与えるなどまっぴらごめん。 原発など要らない。 生態系がすべて破壊されてしまう。 もうどこも立ち入り禁止にされちゃって、山羊が草を食べる場所すらない。 そして海にももう行かれない。 建物の中では建設会社が新しい技術の宣伝をするが、それも無駄だった。 チェルノブイリとフクシマがあった後には、誰もそんなことを聞く耳は持たない。 彼こそ原子力エネルギーの信奉者だ。 大統領のエルドアンは去年の12月に、ロシアの大統領プーチンをアンカラに迎えた。 この時点でアックユ原発建設の契約は、もうとっくに決まっていた。 プーチンのロスアトム・エージェントが、このプロジェクトの資金を全面的に出した。 費用は250億ドルと推測されている。 途方もない問題に懸念を抱く人たちに対し、エルドアンが見せたのは、嘲笑だけだった。 世界に原発は400基以上ある。 フクシマ事故のすぐ後、エルドアンは、このように言った。 原発は確かに爆発するが、そんなことを言えばガスボンベだって爆発する。 だからもうガスを使うなというのか? エルドアンは、石油とガス輸入への依存を少しでも少なくしていきたいのだ。 過去数年間の経済成長でロシアからの天然ガスの輸入だけでもなんと3倍にも増えた。 これは年間600億ドル以上になり、トルコのあまりよくない経常収支にとって厳しい数字だ 原発を作って、この依存度を少なくする、とトルコ政府は主張しているのだ。 しかし、アックユ原発はとりあえずロシアのものだ。 2019年からここで4800メガワットの発電されるが、それをトルコが保証価格で買い取ることになっているのだ。 エルドアンにはさらに計画がある。 日本の安倍総理大臣とエルドアンは、2013年にトルコ第二の原発を建設する契約を締結した。 これも同じく4800メガワット級の原発だ。 この日本とフランス共同の原子炉は、黒海沿岸のシノップ沿岸に建設される予定だ。 地震学者シェンガー氏を始めとする科学者は、地震等が起こる危険を説いて、警告している。 (シェンガール、イスタンブール技術大学地質学者) 主な断層はそこまでは至っていませんが、しかし活発な正断層があり、この正断層が、原発を脅かすことが考えられます。 でも、ほかにも問題があるのです。 東部地中海地域には、非常に高い津波の危険性があるのです。 これまでに地中海東部では何度か、巨大な津波で被害を受けた歴史があります。 アックユでは住民たちはこれまでどおりの反対運動を続けている。 彼らは、行政裁判所に対し、彼らの目には、許されない、原発の環境との不適合性を審査するように申し立てるつもりだ。 グリーンピースが撮影した画像によれば、許可が下りていないにもかかわらず。 すでに、立ち入り禁止にされた入江で、建設準備が始められたということだ。 原発を操業する電力会社は、住民たちに、雇用を約束した。 しかし、どれだけの雇用者数がそもそも、どれだけの期間にわたって仕事を得るのか? 懐疑は残る。 近郊のイェシロバチックの漁民も同じだ。 彼らは、原発建設予定地周辺の海域には、もう船を寄せることはできない。 原発がきたところでよくなりはしない、と皆確信している。 (Nazim Basbug,イェシロバチック村の漁師) このような何十億もかかるプロジェクトでは、どの企業も自分たちの従業員を連れてくるのが普通だ。 僕たちにどれだけ仕事をくれるというのか? 50人分? 100人分? でもここの失業率は70%から80%だ。 しかし彼らは現実的に見ている。 政府や外国企業の計画を、阻止することは、彼らにはできないだろうと。 原子力エネルギーのカムバックが、今回の「マクロ」のテーマでした。 今のところ原子力発電は、政治的な追い風をふんだんに受けています。 このテーマについてさらに興味のある方は、ぜひインターネットでオンライン・マクロをご覧ください。 ここでは、例えば原発と恐竜の驚くべき共通点がおわかりいただけます。 そこからブログに入って、今日のスタジオのゲストが質問に答えてくださいます。 3Satのエコノミーマガジン『マクロ』でした。 次回もお楽しみに 字幕翻訳:無限遠点

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